すっかり更新が滞ってしまいましたが、
フラメンコに関することで、ずっと書きたかったことがあります。
旅のチカラ
「人生を弾き 魂を響かせろ～沖仁 スペイン・アンダルシア～」
というNHKBSの番組を見た感想です。
スペインの国際コンクールで優勝しながらも、
カンテの大御所、アグヘータ一族の伴奏で挫折感を
味わった、フラメンコギター奏者、沖仁さんの挑戦・・・
なぜ、そこまでカンテ（歌）の伴奏にこだわる・・・？
それはフラメンコが魂の叫びそのもの…
その歴史は、虐げられた民族のロマ族から生まれたもの、
そして歌とギターと踊りが三者一体となるのが
フラメンコなのです。
その中心は歌…ではないかと、最近思ってきました。
とかく踊りに目がいってしまうフラメンコですが、
実はカンタオール（歌手）によって、踊りが生きてくるし、
観客の心をつかむことは、いろんな発表会を見て思います。
この番組では沖仁さんが若い頃暮らし、交友関係を持った
ヘレスのヒターナたちに会ったり、
アグヘータの一族のひとりと共演したりします。
そして、マヌエル・アグヘータの伴奏をするという目的を伝えると、
皆、口をそろえて、マヌエル・アグヘータが宇宙人とか
人間じゃないとか、言います。
そして沖さんのギター伴奏を完璧とほめるのです。
でも、私はやっぱりなんとなくヒターナの人たちに
囲まれた沖さんに、どうしても少し違和感を覚えてしまいました。
生意気なんですが、沖さんが行儀がよくて、
日本人特有の笑顔で…なにか・・・
頭で考えているような気がしてならなかったから…
「伴奏する」っていうより、まず心と心でぶつかってみたら？
もっと激しく・・・
なんて思いながら観ていました。
しかしギターさんて大体、神経質というか
繊細で、カンタオールとは全く性格が違うような気が
ずっとしてます。先生もそんなことおっしゃってたっけ。
ヒターナのおばちゃんカンタオールが沖さんに、
「よく聞いて！いっぱい弾いちゃダメ！待って…」って
言ってたけど、それって呼吸よね。
スポーツでも、音楽でも、踊りでも、やっぱり「呼吸」
なんじゃないかな？
相手の呼吸とうまく合ったとき、すごいものが生まれるって
気がする。
それは、感じること、頭で考えることじゃないよね？
あ～沖さんもまだ若いんですよね、
…なんていろいろ失礼なこと言ってごめんなさい！
ギターテクに溺れることなく、真摯なところはほんとに
好感が持てて、応援したくなりました。
さて、ついにマヌエル・アグヘータに会った沖さん。
「２曲だけだぞ」
と言われて緊張の面持ちで伴奏を始めた。
マヌエルさんは鬼瓦のような顔してて
俳優の蟹江敬三さんにそっくり！（じゃないですか～？）
しかし、その歌声を聴いて
私はぶっ飛んだ
あれ～この声・・・すごいかいか～ん！
もっとしわがれた声かと思ったらそうじゃない。
裏声にふっと替わるところが心地よい・・・
これって美空ひばりとか、ホーミーの人の声とかと同じで
人に快感を与える周波数（？）じゃないのかな？？
もちろん声だけじゃないよ。
その搾り出すような魂の叫び！！
スペイン語はわからなくても、しっかりと胸に迫ってくる。
これか～～カンテの神様とか巨匠とか言われるゆえんは…
…しかし、すぐに彼は歌うのをやめ、席を立った。
呆然とする沖さん・・・・
スタッフがあわててマヌエル・アグヘータに聞く
「あなたの人生とは？」
すると彼は答える
「だめだ、人生については話さない…
土に戻すだけだ…」
この言葉、鳥肌立った！
かっこよすぎるぜ、おっさん
これだよ、まさにフラメンコじゃありませんか…
いずれは土に返る人間の魂の、血の叫びだ～～！！
あたしはなんで小学生の頃にフラメンコに魅せられたんだろう。
当時のあたしなりに家庭の中で苦労してたのかな～
おっと人生は語らない・・・さ…笑
理屈じゃない、感じることなんだ。
でね、沖さんはどうしても納得できなかったんです。
自分はそんなにヘマをしたとは思えない、
なぜアグヘータは途中で去ってしまったのか…
ホテルに帰って、意を決して電話をしてみる。
するとアグヘータは意外にも
「お前はよくやった、妻（東洋人）と今も話してたんだ、
よかったって・・・
日本に行ったら、おまえが伴奏してくれ」
と答えた。
どうも彼は極度のカメラ嫌いだったらしい…
沖さん良かったね！
マヌエル・アグヘータの
シギリージャ
これは私の大好きなマノロ ・サンルーカルとの共演です。
