-欲を離れる-相場に「~たら」「~れば」はつきものですが、そればかりを言ってぼやい ているばかりでは駄目ということです。「~たら」「~れば」を言わないため には欲張らないことが一番ではないかと思います。 後悔に二つあり、是を心得べし。高下の節、今五六日待つときは、十分取る べき利を、勝を急ぎニ三取り逃がし候後悔、是は笑うて仕舞う後悔なり。又、 七八分利運の米、欲に迷い仕舞いかね候内引き下げ損出る後悔、是苦労致し候 上の後悔なり。慎み心得べきことなり。 「相場での後悔には二種類の後悔があります。これをよく心に留めておくべ きです。一つは上げ下げしている中で、あと5~6日まてば十分に儲かったもの を早めに利益確定売りをしたことで取り逃がしてしまったという後悔、是は笑 って済まされる後悔です。また、逆に十分利が乗っているときに欲に駆られ、 手仕舞いが遅れて損となってしまったという後悔です。是は苦労し我慢した上 での後悔なのでこういった後悔はしないように心がけたいものです。」 天井・底を百発百中であてることはほとんど不可能に近く、「天井を売って やろう」とか「底値で買ってやろう」ということを考えているうちに利が乗っ ていたものが損になったりするものです。「腹八分目」とか「頭と尻尾はくれ てやれ」という言葉があるように、また、「利食い千人力」という言葉がある ように、当初の目標通りの利益が確保できたならばしっかりとそこで利益を出 しておいて、その後大きく上がっても笑ってごまかせるようになりたいもので す。 商い利運に向かうとき、勝ちに乗るべからず。百俵上げ近き時は、唯無難に 取り留むることを工夫すべし。必ず強欲を思わず、無難に手取りして、商い仕 舞い、休むこと第一なり。 売買がうまく行っているときに調子に乗って買い乗せをしてはいけません。 百俵くらい上げているようなときは、ただ、無難に売り抜けることを考えてお いた方がいいのです。必ず欲張らないで、無難に利益を確定し、手仕舞い、休 むことが一番なのです。 これは調子に乗ることを戒めた話しで、利乗せを否定したものではないと思 います。例えば当初の予定通りの上昇を見せたときに調子に乗って買い乗せる ようなことはしない方がいいということで、当初の予定通り、「○○円を付け たから、今度は△△円までいくだろう、だから、ここで買い乗せる」というこ とを否定するものではないと思います。当初の予定値段まで来た時に周りが騒 ぎ始め「それ買いだ、次の目標はいくらだ」と大騒ぎしたようなときはいった ん利益を確定して休んだ方が正解となることが多いものです。 米の高下につれ、立羽もなく、上ぐべし下ぐべしと商い致し、五六日も過ぎ、 米の動きにつれ、弱気になり、その節売り過ぎ致し、十四、五日も過ぎ、又々 買い気になり、その度毎に損出るなり。是は商いを急ぎ、是非共取る心にて致 す故違うなり。欲を離れ、天底を見定め、上げならば上げ、下げなら下げと、 立羽を極め、三位の伝に引き合わせ、売りなり、買いなりと立て抜くべし。 「目先の相場の上下に、思惑もなく、ただ、上がるだろう、下がるだろうと 売買し、5、6日たったところで相場が軟調な動きとなって、相場の動きにつ られるように弱気になって、調子に乗って売り過ぎ、14、15日もたったころに は今度は相場が高くなったからと買いに出て、その度に損が出るのです。これ は売買を急いで相場に付くことで、了見もなしに儲けようと思うから間違える のです。目先の欲に捉われずにしっかりと天井や底を見極め、これは上がる相 場だと考えるなら買い、下がる相場と考えるから売り、というようにしっかり と自分のスタンスを定めて、「三位の伝」を良く考えて売り、買いの方針を立 てることが必要です。」 相場に対し何の見通しもなく、売り買いの方針も立てずに相場成りに上がれ ば強気、下がれば弱き、と言う投資が往々にして行われます。「この水準なら 売り」とか「この水準を割り込んだから○○円まで買い下がる」といったよう な方針をたてずに闇雲に売買をしても儲かることは少ないのです。みなが買っ ているから買わなければならない、とかみな弱気になったから売らなければな らない、ということはなく、よく相場の上げ下げを冷静に分析すれば売買もう まく行くものなのです。特に仕掛けの時は仕掛けなかったからといって儲け損 なうことはあっても損をすることはないのですから、慎重によく相場の動向を 分析しながら冷静に判断をして、仕掛けるように心がけることが大切なのです。 相場が今日限りなくなってしまうわけでもなく、明日でも明後日でもいつでも 儲けることはできるのですから・・・。 といってもなかなか欲からは離れられないものです。欲があるから株式投資 をするんだ、といってしまえばそれまですし、欲がない人は株なんか買わない というのももっともです。ただ、欲張らず相場の動きを良く見ることが儲ける 早道だということです。 |