では最後に熟成ワインについての今回のワインを通して考えたことなどでまとめます。
今回のワインのほぼ全てにいえたのは印象がクリーンできれい、ということでした。
若いワインではそういうものは多いのですがそういうものも熟成したら複雑になってきたりへたっていてどんよりとするもの(どんよりしているけれど酸っぱいワインも含む)も多いのですが今回はそういうものがなかったのです。醸造所のキャラクターも要因ではありますが良質な造り手の良い葡萄だからと言ってしまってもよいと思います。州立のものは特に個性的な味わいよりもきれいな味わいの方向に向かっているということも言えると思いました。州立のものに関しては技術の質というよりはそういった意向の部分が大きいと思います。
また、クリーンなのは土壌の性質によって複雑な味わい(特にモーゼル、ザール、ルーヴァーのシーファー土壌)のものが時を経て雑味が消えていったからということもあります。
今回では最後のヴェーレンのがそういったものです。JJプリュムなどしっかりと造っている造り手の同じ畑の数年以内のを飲めば土壌の強烈な個性を感じるミネラルがわかるかと思います。そういったものが時を経て大人しくなって他の要素とひとつになっていくのです。
また、こういう土壌のものは葡萄は力強くて長熟なワインになる、という言い方もできると思います。
もうひとつ面白かったのはまったく意図していなかったのですが、9の2003のほうがどっしりとしていて熟成感を感じ、10のアウスレーゼは27年経っているのに老いを感じさせないということでした。これはあまり経験していない人ほど興味深いのではと思います。
酸や土壌が熟成の期間や変化に大きな影響をおよぼすというのが良く分かった例となりました。
とはいえ、今回飲んだ10のワインはオークションワインということで糖度も高めの最良の葡萄だからこそ30年経ってもおいしく飲めるのですが、同じアウスレーゼでもノーマルのだともっと糖度が低いのもあって20年くらいするとほとんど甘みが抜けていたりもするので一概にどれだけ保存できるかと断言するのは難しいということは付け加えておきます。
ラインガウでもシュロスヨハニスベルクなどは70年、80年代の全盛期のは今でもおいしく飲めるワインが存在すると思いますし本当に難しいのです。
飲み頃を見極めるための明確な指針というのはなくいろいろな要素からの考慮と今までの経験で予想するしかないから難しく、しかしだからこそ奥深き面白い世界なのです。
僕が今回書いた酸と土壌というのは大きなヒントではあるので少しは参考にはなるかと思います。