VDPがドイツワイン業界の中心ではないのかも 今回訪れた醸造所で感じたこと
9月のドイツでは今まで同様いくつものワイン醸造所を訪れました。ただし今回は今までと訪れる醸造所を選ぶ基準が違いました。今までは、著名な造り手でしっかりとそこのワインを知りたい、その醸造所を知りたいというところ、コストパフォーマンスが良そうなので気になっているところ、それらの理由で一度訪れて気にいったので最新ヴィンテージも飲んでみたく、そしてワインを購入したいところ、というのが基準でした。しかし今回は日本で商売として成り立つワインというのが前提のため、20ユーロだけどそれ以上の価値を感じるお買い得なワインというようなコストパフォーマンスのよさではなく、7から12ユーロの価格帯でのコストパフォーマンスがよいものがある醸造所を訪れることとなりました。有名なところはほとんどはすでに輸入されていて僕が輸入する意味がないので好きな醸造所であってもそういうところも除外しました(試飲会ではそういう造り手のワインもたくさん飲みましたが)。そして結果的に、僕が取り引きをしたいと思ったところは意図していなかったのですが全てがVDP( ドイツ高品質ワイン醸造家協会)に加盟していない醸造所だったのです。質的には加盟している醸造所にも勝っているというところばかりなのですが、そういう質の面ではなくVDP加盟醸造所との違いを感じたことがあったのでその部分について書いていきます。VDPではブルゴーニュなどのように畑の価値がわかりやすくなるような売り方をしようとしています。指定された特級畑はErste Lageとなります。しかし今回訪れた醸造所では畑名を強調していませんでした。それには大きく2つ理由があります。一つ目は畑名が読みにくかったり長かったりと商品名としてはわかりづらいからということです。二つ目はその造り手の最良の畑がVDPの特級畑に指定されていないから強調する必要がないということです。そういうことから自分の名前や息子などの名前を商品名にしたり、土壌の特色を商品名にしたりしていました。プレディカーツヴァインに関しては法律で定められているのでラベルに畑名は記載されているのですが小さく書かれたりしていて畑による差別化というのに重きは置いていません。このながれが、たとえ特級畑に指定されているとしても超有名畑を所有していない限りは畑名を全面に出すことのメリットが少ないということの証明になっていると思いました。畑名がメリットにならないのであればわかりやすい商品名をつける、ということです。これらのことは畑による違いを重要視していないということではなく、畑名を強調する売り方はしていないということについて書いたと理解していただきたいです。次のことも上記のことにつながることではあります。VDPでは2012年産のワインから、Gutswein、村名ワインOrtswein、畑名ワインErste lage、その中でさらに上質なワイン(シュペートレーゼに相当)Grosse Lage(辛口だとGrosses Gewaechs)にするという新たな格付け制度を作りました(VDPのサイトでの説明)。Erste Lageに指定されていない畑も所有していたりといった理由で全てをこの格付けで表しているのではなく従来の表記も並列している場合もありますが、村名のワインよりも畑名ワインのほうがレベル、価格が上という感覚でとらえればよいかと思います。(グローセスゲヴェックスなどの今までの等級表示とは違う表記については過去に解説しましたのでよくわからない方はこちらの記事をごらんください)。しかし今回訪れた醸造所はどこも村、畑を商品名として強調することなく従来通りのシュペレーぜ・トロッケンSpätlese trockenの表記としていたのです。辛口(トロッケン)ワインの場合この等級の表記の仕方が甘口と勘違いされてわかりにくいので等級の表記をしないでクヴァリテーツヴァインとしてリリースするというながれがあったので、上記のようなGutswein、Ortsweinといった格付け制度が作られたと想像できます。しかしそういうながれを気にしない造り手ばかりだったので驚いたのです。もちろんVDP加盟ではないのでそういう格付け制度にのった名づけ方をする義務はないのです。それでもあまりにもどこも従来の格付けのままだということにびっくりしたのです。結局はこの従来の格付けのほうがわかりやすいからということなのだろうと思います。直接造り手にその理由の質問はしなかったのですが僕はそう思います。というように畑重視のVDPの方針とは無縁な造り手が多く存在していることに気がついたのです。自分たちのワインの品質をよりわかりやすく表すためにはVDPが目指す流れに沿う必要はないと判断して独自のアイディアで表現している醸造所が多々あるのです。格付けや等級といったものは分類するときにわかりやすく理解できるための統一ルールを定めているだけであって表記の仕方の違いが味わいに影響するということはほとんどありません。今回はマーケティングについてのことを書いたのです。もうひとつVDPとの違いということで気がついたことがあるのですがそれはそのことに関する記事の時に書きたいと思っています。僕は今まではVDPが中心でそれが基準だと思って捉えていたのですが、今回訪れた醸造所によって一気に視野が広がったのは間違いないです。