鍵
島根は温泉が多いので、家族でよく日帰り温泉に行っております。今日も山あいの静かな温泉に行っていたのですが。「あれ?貴重品ロッカーの鍵、落としたんかな?」湯浴みの休憩所で夫がごそごそ。「ちょっと脱衣所、見てくるわ」なかなか帰ってこない。やっと帰ってきたけど浮かぬ顔。「ないの?」「うん…」「ロッカーとか、かごの中とかじゃないの?」「多分、そうやねんけどな…」と歯切れ悪し。「それ、どういうこと?」しかし私の問いには答えず、フロントのおじさんに相談に行ってしまいました。そして、おじさんと一緒に再び脱衣所に向かう夫。かなり時間が経ち、娘がグズりだしてきた頃ようやく、二人が脱衣所から帰還。夫、何度も頭を下げている。どうやら鍵はあったらしい。どういうことなのかと問いただしたところ、自分が使っていた脱衣かごに、既に誰かの荷物が入れてあったのだそうだ。1グループしかお客さんはいなかったので、聞いてみようかと思ったのだが、中をのぞくと、そこにいた数人のおじさん達の背中にはビッシリと絵が描かれていたそうで。で、フロントの人と一緒に、「あれー、鍵、どこへ行ったのかなあ」と叫びながら、風呂場をうろうろしながら、しらじらしく探してみせて、気づいてもらうのを待っていたらしい。ようやく気づいてくれたアニキが「おぅ、どうした、にいちゃん」と声をかけてきて実は…と打ち明けると、「その鍵、みたわ」とアッサリ。脱衣所まで出てきて渡してくれたという。「よかったーー、案外いい人で!」って夫はほっとしていたけど、あわよくば、って思ってたに違いないやん!「そんなん、そのかごをそーっと見てみるわけにはいかんかったん?」と聞くと「この静かな山あいに全く似合わない、ヴィトンのアタッシュケースとかがドカッて入れてあるねんで。そりゃ警戒するやろ」……たしかに。