吹奏楽団「夢」の第20回定期演奏会
開催日:2025.5.3(土) 13:30開演場所 :ホクト文化ホール 大ホール(1,971名収容)吹奏楽団「夢」の第20回定期演奏会に行ってきました。プログラム第1部1.行進曲「可愛い英国娘」2.過ぎ去りし日々3.高き山へ、遠き川へ4.旅立ちの日に5.「こうもり」のポルカ6.円舞曲「美しき青きドナウ」第2部1.オーメンズ・オブ・ラブ2.津軽海峡・冬景色3.高校三年生4.「トトロ」フアンタジー5.組曲「宇宙戦艦ヤマト」6.東京ブギウギ7.いのちの歌アンコール8.追憶のテーマ9.夢メドレー20番10.信濃の国11.ふるさと12.蛍の光レポート行進曲「可愛い英国娘」オープニングは、初めて聴くシンフォニックマーチですが、曲目解説によれば1897年に作曲された楽曲ということで、古風さとともに雰囲気としてどこかウィーン風の香りを感じました。過ぎ去りし日々続いて演奏されたのは、2017年に作曲された楽曲ということで、1曲目の可愛い英国娘の1897年から120年の間にずいぶんと音楽も変わるものだなという印象ですが、今回は夢バンドのアルトサックス奏者としてごきげんなジャズ演奏を聴かせてくれていた故・村田昭六氏に捧げる曲ということで、演奏後の拍手なしでお願いしますということで、レクイエム的な雰囲気での追悼演奏となりました。高き山へ、遠き川へ長野県吹奏楽連盟創立50周年記念委嘱作品ということで、これまでたくさんのバンドで演奏されてきましたが、2010年の作品披露から15年が経過し、長野県の吹奏楽を象徴する曲の1つとして定着してきた感がありました。曲には、長野県、そして日本の吹奏楽活動がより高いレベルで発展し、多くの人々により広く親しまれて欲しいという願いが込められているということで、そんなことに想いを馳せつつ聴かせていただきました。旅立ちの日に卒業式の歌として広く知られる楽曲ですが、楽曲解説によれば、1991年に秩父市立影森中学校の教員によって作られた楽曲で、歌によって荒れていた中学校を明るく変えたということで、このあたり、つい先日聴いたガブリエルのオーボエにも共通するところがあるのかなと感じ、改めて音楽には人の心を変える力があると感じた次第です。私自身、この曲はアンサンブルでやったことがあるので、その時の印象もあって親しみを感じつつ楽しませていただきました。「こうもり」ポルカ私事ながらここ数年来、こうもりは序曲、おいしいところどりのセレクションなどを演奏してきたので、その楽曲群にとても親しみを持っていましたが、こうもりポルカは初めて聴いた形となり、なるほど、この曲もこうもりを構成する1つなのだなということで、新しい発見となりました。円舞曲「美しき青きドナウ」ワルツ王ヨハン・シュトラウス2世の代表的作品で、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは必ず演奏されていることから、私自身はこの曲を聴くと新年・正月を連想するものですが、何かの音楽番組でプロの奏者としては、できれば演奏したくない曲の1つであると語っていたことから、聴く側が感じる優雅さとは裏腹に演奏側としては、アンサンブルの難しさがある曲なのだろうと感じるところです。曲目解説には、お客様がよく御存知の曲だけにプレッシャーも大きく、練習をたくさん重ねたはずです。どうか寛大な気持ちでお聴きくださいと結ばれており、そんな演奏側の事情も理解した上でこの優雅な名曲を楽しませていただきました。オーメンズ・オブ・ラブ吹奏楽の人気曲として、宝島と人気を二分する印象があるところですが、曲目解説によれば、この曲はもともとEWIで吹く曲としてヒットした経緯があったとのことで、なるほど、確かにEWIならば高音域も自由自在…。それをアナログ楽器である管楽器で再現するとなると簡単ではないことは想像に難くないところであり、さらに編曲が真島俊夫氏ということで、聴き映えは豪華だが金管群の音は高く、木管群の音符は細かく難易度は高い…。聴くは楽しく、演奏は難し。そんなことを感じつつ楽しませていただきました。津軽海峡・冬景色~高校三年生夢バンドが得意とする演歌2曲が続けて演奏されましたが、津軽海峡冬景色は1977年、高校三年生は1963年と、ともに昭和歌謡真っただ中の名曲だけに染み入るものがありました。余談ながら昨今、こういった昭和歌謡をテレビで見る機会がけっこうありますが、当時歌っていた歌手が既に亡くなったり、引退している場合は代役が歌う訳ですが、かなりお年を召してもその当時歌っていた歌手が歌うことがあり、そういった時、ずいぶんと長いこと活躍しているのだな…と感嘆を禁じ得ないところです。「トトロ」ファンタジートトロにまつわる吹奏楽の編曲版はたくさん出ていますが、その中でもこのトトロファンタジーは、かなり昔からある草分け的存在という印象があります。出版社はミュージックエイトですが、ひねりのきいた難易度高めの小島里美氏による編曲版。私自身も過去何度かやったことがあり、当時の楽譜を想い出しながら懐かしく聴かせていただきました。組曲「宇宙戦艦ヤマト」宮川泰作曲、宮川彬良編曲の親子合作とも言うべき名曲ですが、こちらの楽曲は何年か前に宮川彬良氏自身の指揮による演奏を聴いたことがあり、そういった意味では私にとって縁の深い曲の1つという感があります。またこちらの曲は、過去演奏したこともあり、演奏を聴きながら、あの部分は大変だったよな…とか、誰々がソロ吹いていたな…とか懐かしく想い出しながら楽しませていただきました。東京ブギウギ少し前の朝ドラで話題となった曲ですが、曲目解説によれば1947年発売の日本で最初のポピュラー音楽(歌謡曲)とあり、戦後復興を象徴する流行歌とのことで、その当時の様子を想像しながら楽しませていただきました。いのちの歌2008年の朝ドラ「だんだん」の劇中歌で、茉奈・佳奈が歌ったことが印象的でしたが、当時、朝ドラを見ていた私にとっても懐かしくもあり、改めて振り返るとその歌詞のメッセージ性には心を動かされるところです。また、演奏前に歌詞の一部分の朗読も行われ、曲を聴き進めるとしみじみとした感情が広がってきて、感動的なひとときになりました。追憶のテーマプログラム上、ここからはアンコールになりますが、指揮者からは「第3部」というお話もあり、まずはホクト文化ホールの館長さんのトロンボーンソロによるこちらのフィーチャー曲の披露となりました。これだけの大編成バンドでソロを奏でるというのは、ソリスト冥利に尽きるのではという印象がありましたが、とても味のあるステキな演奏と感じました。夢メドレー20番続いて歌を中心とした楽曲へと移りましたが、その皮切りにみかんの花が咲いているなどの懐かしい曲を集めた夢メドレー20番の演奏となりました。こちらは、夢の歌姫がガイドする形で、全員歌唱となり、古き良き時代の楽曲をたっぷりと堪能させていただきました。信濃の国北信地域で特に好んで演奏される信濃の国ですが、今回はフルバージョンの全6番を、歌唱と歌が交互に入る形での演奏で、革新的というイメージを受けました。余談ながら、この信濃の国には藤森章氏による新編曲版と従来からある編曲版の2つが存在していますが、今回は従来版での演奏となりました。ふるさとこちらは、さざなみ音楽祭や坂城町音楽愛好会納涼音楽会などでも締めの歌として使われている嵐でない方のふるさとですが、歌唱と演奏の融合が素晴らしいと感じるひとときになりました。蛍の光曲のスタートは何かのマーチか?と思いきや、いつのまにか蛍の光マーチになるという構成で、これでもかと演奏された第3部の5曲の締めにふさわしい幕引きとなりました。まとめ吹奏楽団「夢」の演奏会を初めて拝聴させていただきましたが、そのバンドの規模に度肝を抜かれました。昨今、賛助の存在なくして演奏会の開催が難しいバンドが多い中で、メンバーの総勢が110人。最も多いB♭クラリネットが19名という人数は、過去に理想的な吹奏楽の編成として捉えた桐朋学園大学 Symphonic Windsの13名よりも6名多いという充実ぶりで、これは吹奏楽の夕べの合同バンドにも匹敵するのでは?と感じた次第です。また集客力も収容人数1,971名のホールに1Fはほぼ満席、2Fも後方に少し空きがあるくらいと、1,500名を超えるのではないかという人気ぶりに感嘆しました。また過去に同じステージで演奏した仲間が元気に演奏している姿も拝見し、大変懐かしく、同時にうれしい気持ちになりました。