演 奏 会 の 旅

2023/01/28(土)23:51

新進演奏家 小林公哉・小林純菜ジョイント・リサイタル

開催日:2023.1.22(日) 14:00開演 場所 :上田市交流文化芸術センター サントミューゼ小ホール(320名収容) 第1回サントミューゼ 新進演奏家リサイタル ジョイント・リサイタル 小林公哉(打楽器)・小林公哉(サクソフォン)へ行ってきました。 プログラム 前半 小林純菜ステージ 1.武満徹:ギターのための12の歌より   イエスタディ(レノン&マッカートニー)   ヘイ・ジュード(レノン&マッカートニー) ​  (ヴィブラフォン&サクソフォン)​ 2.Jules Demersseman:Fantaisie ​  (サクソフォン&ピアノ)​ 3.Gordon Tudor:Quarter Tone Waltz ​  (サクソフォン)​ 4.石川亮太:日本民謡による狂詩曲 ​  (サクソフォン&ピアノ)​ 後半 小林公哉ステージ 5.Andew Staniland:Orion Constellation Theory for snare drum and digital soundfiles   (スネアドラム) 6.中瀬絢音:TELEIDOSCOPE02 for Vibraphone   (ヴィブラフォン) 7.Eric Samut:Cameleon   (マリンバ) 8.北爪道夫:《サイド・バイ・サイド》打楽器のための   (ボンゴ、3コンガ、トム、バス・ドラム) ​​9.​湯山昭:マリンバとアルト・サクソフォーンのためのディヴェルティメント​​​   (マリンバ&サクソフォン) アンコール 10.武満徹:ギターのための12の歌より 星の世界   (マリンバ&サクソフォン) レポート ギターのための12の歌より オープニングは誰もが知るビートルズの2大名曲であるイエスタデイとヘイ・ジュードで始まりました。曲目解説によれば、この楽曲は武満徹が当時親しまれていたポピュラーソングを技巧的かつ叙情的にアレンジしたもの・・・とのことで、あの有名な旋律は確かに使われているが、どこか間接的に聴こえてくるような不思議な雰囲気がありました。そしてソプラノサクソフォンとヴィブラフォンとのコラボは本当に素晴らしく耳に優しく入ってくる感じが素晴らしいと感じました。またこの曲は本来ギター1本で演奏する曲とのことでしたが、2人にパートを分けることで生まれた余裕がよりよい効果を生んでいるという印象も受けました。 Fantaisie 前半は、サクソフォンの小林純菜氏のステージということでその1曲目はサクソフォーンとピアノによる演奏となりました。曲目解説によれば、サクソフォーンのための曲の中では古典の作品であり、重要なレパートリーの1つであるとのことで、サクソフォーンの最大の特徴である艶のある音色と自由度の高い表現力を存分に発揮する曲という印象があり、サクソフォンの小林純菜氏とピアノの大嶋千暁氏の息のあった演奏が光るところでした。 Quarter Tone Waltz いわゆる無伴奏曲ということで、サクソフォンオンリーでの演奏となりました。曲目解説によれば、クォータートーン(4分音→半音の2分の1)を有効的に使った楽曲とのことで、素人目からするとそもそも半音階までしか出ないようにキーが設定されている楽器で4分音を出すのってえらく難解では?と感じるところですが、それが比較的やりやすいのがトロンボーンだよな・・・とは閃いたもののサクソフォーンでそれをするというのはやはり難解だなという印象でした。楽曲とすれば、この4分音があることでどこかコケティッシュなイメージが出て、どこか親しみやすいところがありました。 日本民謡による狂詩曲 曲目紹介によれば青森県民謡「津軽じょんがら節」、福島県民謡「会津磐梯山」、「阿波踊り」、「ソーラン節」などが入っている曲ということで、日本のサクソフォンの第一人者である須川展也氏が石川亮太氏に依頼して生まれた曲で、小林純菜氏の一番のお気に入り曲とのことでした。楽曲とすれば、故・真島俊夫氏が世に送り出した鳳凰が舞うのような、なんだかとってもシックでカッコイイのだけれど、しっかりと日本人の琴線に触れるものがあって、世界に誇る日本の文化の一旦を感じるひとときになりました。 Orion Constellation Theory for snare drum and digital soundfiles 後半は、パーカッションの小林公哉氏のステージということで、休憩中にスピーカーの設置など大掛かりなセッティングが行われたこともあり、大いに期待しての演奏開始となりました。曲目解説によれば、この曲はスネアドラム独奏と音声ファイルのために作られたものであり、ブラシを置く音やスネアドラムの響き線を上げる音なども楽譜上に音符として書かれているとのことで、演奏後に「この楽譜を買うと、作曲家から音声ファイルが送られてきて、その音声ファイルを流しながらスネアドラムを叩くという訳です。」とのお話があり、世の中には本当にいろいろな曲があるのだなと感じた次第です。 TELEIDOSCOPE02 for Vibraphone 小林公哉氏が世の中にあふれる様々な現代音楽に対するアンチテーゼのような意味を込めて、共に東京藝術大学で学んだ作曲家の中瀬絢音氏に依頼してきれいに響く調性を持つ現代音楽として作曲されたということで、聴いていてとても心地よいものがありました。現代音楽は奇抜である・・・といえば昨年8月に聴いた泉真由フルート・コンサートでの武満徹の声(ヴォイス)などは泉氏が「気がふれた訳ではなく、こういう曲なのです。」と前置きをして聴衆に心の準備をさせたくらいなので、小林公哉氏もそういった現代音楽に触れる中で、こういった美しい曲を現代音楽として世に出したいと感じたのかもしれません。 ​Cameleon​ 小林公哉氏の2曲目は、マリンバでの演奏となりました。演奏に先だって5オクターブマリンバについて、軽自動車に載せて運べてしまうくらいコンパクトになるんです!とのお話があり、改めてこの巨大な楽器がそんなにコンパクトになるのかと驚きを禁じえないところでした。またマリンバについては、昨年2022年の演奏会の旅の始まり1月15日が塚越慎子氏のマリンバ・リサイタル、終わりが12月27日の名倉誠人氏のマリンバ・リサイタルということで、マリンバの魅力を感じる機会に恵まれたこともあり、改めて木の温もりを感じる打音の響きに癒されたひとときになりました。 《サイド・バイ・サイド》打楽器のための 解説によれば、マルチパーカッションの代表的な作品で6つの膜鳴楽器と足で演奏するバスドラムを使用し、要素や楽節のリピートによるカタルシスが生まれるとあり、ボンゴ、3つのコンガ、トム、バス・ドラムを縦横無人に叩き上げる小林公哉氏の技が光った1曲となりました。また小林公哉氏によれば、この曲は奏者に委ねられる部分も多く、演奏者によって同じ曲でもだいぶ印象が変わるということで、そういった意味ではクラシックの世界で写譜屋の忖度によってベートーヴェンが書いた1つの音が変えられていたことが21世紀になって発覚して大騒ぎになるのとは随分違う世界の音楽なのだなと感じるものがありました。 マリンバとアルト・サクソフォーンのためのディヴェルティメント リサイタルの本プロの最後は、再びお二人での演奏となりました。そしてお二人が選んだ楽曲は、数少ないサクソフォンとマリンバのための作品で最もポピュラーなものということで、曲目紹介によれば、ディヴェルティメントとは「嬉遊曲」という意味であり、その名の通り各所に遊び心が見られるとのことで、意表をつくところがありました。またマリンバは世に出てからまだ100年が経過していない新しい楽器ということもあり、それより歴史はあるが弦楽器やクラリネットよりは新しいサクソフォーンとの相性が良いと感じる場面が多々あるように感じました。 ギターのための12の歌より 星の世界 星の世界は、賛美歌の「慈しみ深き友なるイエスは」が原曲であり、あ~挙式の時に教会で歌う曲だ!という印象が強かったです。ということで演奏を聴きながら頭に浮かぶのは星の世界の歌詞ではなく、賛美歌の方で、なんだかとても神聖かつ温かな気持ちで演奏会を締めくくることができました。 まとめ 今回の演奏会は、2021年に開催された第1回サントミューゼ新進演奏家リサイタル選考会で優秀賞を受賞した小林公哉氏と小林純菜氏のジョイント・リサイタルということで、「夢に向かう若きアーティストたちの旋律」というキャッチフレーズのもと企画開催されたものとのことでした。お二人とも東信地域ゆかりの若きアーティストであり、将来がとても楽しみと感じました。終演時にお二人から「これからも地元でたくさんリサイタルをしてゆきたい。」というお話もあり、故郷に錦を飾る記念すべき第1歩としての今日の素晴らしいリサイタルが本当に心に残るものとなりました。

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