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テーマ:吹奏楽(3463)
カテゴリ:吹奏楽
開催日:2025.3.9(日) 13:30開演
![]() 場所 :信州の幸あんずホール(千曲市更埴文化会館)(760名収容) 新しい吹奏楽の風が吹くのコンセプトのもと、独自の音楽色で活動を続けるウィローウインドオーケストラの定期演奏会ですが、引き続き粟生田音楽監督のもとでの定期演奏会となりました。なお、今回は演奏者視点によるレポートとしたいと思います。 ![]() プログラム 第1部 1.ザンパ序曲(約9分) 2.ショートカットホーム(約3分) 3.吹奏楽のための民謡「うちなーのてぃだ」(約4分) 4.コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象(約5分) 5.4つのノーフォーク舞曲(約14分) 第2部 6.第5交響曲(さくら)(約22分) 7.ストレンジ・ユーモア(約6分) 8.ジャパニーズ・グラフィティー10「時代劇絵巻」(約8分) アンコール 9.3月9日(約4分半) 10.愛するデューク(約4分半) レポート ザンパ序曲 第16回定期演奏会のオープニング曲は、海賊ザンパを主人公とするオペラの序曲ですが、演奏後のコンサートマスターのMCにおいて序曲は演奏会のオープニング曲の定石というお話もあり、振り返るとウィローの定期演奏会では第1回「キャンディード序曲」、第8回「軽騎兵序曲」、第9回「アパラチアン序曲」、第11回「交響的序曲」、第13回「ピータールー序曲」、第14回「ジュビリー序曲」、第15回「セビリアの理髪師序曲」と多くの序曲を演奏してきており、そんなことにも想いを馳せつつ、今回のザンパ序曲はどんな曲だったかなと楽譜を見ながら振り返ると、喜びの場面を表現した華やかな幕開け。続くAndanteでは何が起こっているかわからないような不穏な空気感が特徴的。次のAndanteでは穏やかなお祝いの儀式の場面。中盤からのLentoでは有名なクラリネットのソロがあり、続くPoco animatoから終幕へ向かって盛り上がってゆくという作りで、ドラマチックなストーリーを感じながらの演奏となりました。 ![]() ショートカットホーム とてもクールで無機質感の強い楽曲で、イメージとすれば人間的ではないところがあり、合奏時の粟生田先生の指導でも「どのロボットも同じことを言っているような感覚で」といった表現をされており、そんなことから演奏している時に各セクションの演奏がロボットの会話のように聞こえてきて、これまで感じたことのない不思議な感覚がありました。ある意味つかみどころのない曲ではありますが、滝のように流れる音楽がエキサイティングであり、締めくくりの最終音はハ長調ですっきり解決というのがよく考えられていると感じました。 ![]() 吹奏楽のための民謡「うちなーのてぃだ」 うちなーのてぃだとは標準語で「沖縄の太陽」という意味があるとのことで、そんな沖縄の晴れた海を想像しつつの演奏となりましたが、粟生田先生より関連した話としてMCで「沖縄に何度か行ったけど、晴れた沖縄を見たことが無い…。」というエピソードが披露されました。でもそんな悔しい想い出を音楽で晴らそうということで底抜けに明るい沖縄の太陽を想像させるキラキラとした演奏になったのではというところです。 ![]() コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象 MCで粟生田先生から沖縄民謡について音楽的な話があり、ハ調(in C)の基音ドから数えて第二音“レ”と第六音“ラ”がないのが沖縄民謡の特徴であるとのことでした。演奏後に興味が湧いてAIに聞いてみたところ「アジアに広く分布する音階で、インドネシアのガムランや中国の雲南省、ブータンなどでも使われています。」とのことで、その歴史の深さを知ることができました。そしてコーラル・ブルーは、作曲者の真島俊夫氏が沖縄を旅したイメージを持って曲を構成したとのことで、冒頭のAndanteは飛行機の中で沖縄を感じてわくわくしているところ。Allegro Vivaceは空港に着いて、車に乗り込んで旅の始まり!といったストーリーで進む訳ですが、改めて感じることは、音楽は極めて自由度の高い芸術だなというところで、演奏する側も聴く側も自分の好きな世界を展開して楽しむことができるものなのかなというところです。 ![]() 4つのノーフォーク舞曲 ウィローで取り上げることが多いスパークの作品ですが、その理由についてコンサートマスターよりMCでお話があり、それは粟生田先生が東京吹奏楽団でスパークさんの指揮で演奏したことがあり、話をたくさん持っているからとのことでした。振り返ると、第10回「ファンファーレ・フォー・トウキョウ」、第11回「リフレクションズ ~ある古い日本俗謡による~」、第12回「陽はまた昇る」、第13回「フィエスタ!」「ウィークエンド・イン・ニューヨーク」、第14回「ジュビリー序曲」「マーチッシモ」と確かに頻度が高いと感じました。そして今回演奏した「4つのノーフォーク舞曲」は、4つの曲がそれぞれカラーが違っており、イギリスの風景を想像しながら楽しませていただきました。また演奏面においては、バスーンにおいしいところが回ってくることと、ピッコロとバスクラのコラボがあるという点において、スパークらしさという作風の妙を感じたところです。 ![]() 第5交響曲(さくら) 第2部の始まりは、今回の定期演奏会で最長にして最難関。練習でかけた時間も一番長かったアルフレッド・リードの最後の交響曲である第5交響曲(さくら)の演奏となりました。私自身は、最初に参考演奏を聴いた感覚として「きれいな曲だな。」という印象を持ちましたが、練習を進めていくにつれ、確かにきれいなところもあるけれど、じつはとても攻撃的で爆発力のある曲と感じるようになりました。さくらは日本人の心の花と言われますが、アルフレッド・リードから見た日本のさくらのイメージはこんなにも荒々しいものなのか…ということにもなりますが、もしかするとさくらが開花して人々を癒した後、やがて役割を終えた花が一斉に散る桜吹雪を表現したかったのではないかと感じたところです。 ![]() ストレンジ・ユーモア 曲目解説によれば、中東地域独特の音階による旋律とシンコペーションを用いたリズム、アフリカの太鼓の打撃音を生かした伴奏。そんな2つの音楽文化の融合がこの曲の聴きどころということですが、まず冒頭からアルトサクソフォーンのソロが20小節近くあり、その妖艶な響きを堪能した後、同じメロディーをいくつかのパートが交代しながらリレーしてゆく形になっており、伴奏となる低音の細かい動きもまた聴きどころと感じるところがありました。また音階にあてはまらない音やフラッターといった特殊奏法も登場しており、そのあたりもこの曲の魅力の1つと感じるところです。 ![]() ジャパニーズ・グラフィティー10「時代劇絵巻」 歴代ジャパグラシリーズの中では、12の次くらいに演奏頻度が高いと感じる楽曲ですが、私自身この曲は2005年の出版当時から幾度となく演奏機会があり、直近は昨年の2月。そして他団体が演奏しているのを聴いたのは先月ということで、そんな記憶もある中で演奏を楽しませていただました。またこちらの曲はなんといっても大岡越前でテナーサクソフォーンのかっこいいソロがある訳ですが、その名演ぶりに聞き惚れて自分の出番を忘れそうになるところでした。 ![]() 3月9日 アンコール1曲目は、ちょうど定期演奏会の日取りが3月9日なので同名の曲を!ということでのチョイスになりましたが、この曲が初めて世に出たのが2004年。もともとはレミオロメンが3月9日に結婚式を挙げた友人のために作った曲とのことですが、私の中ではドラマ「1リットルの涙」の劇中歌として使われたことが記憶として残っていて、当時のドラマのシーンを回想しながらの演奏となりました。そして終わりの8小節を楽器を使わず歌で締めくくるサプライズも行われ、この歌唱というのは、まさに1リットルの涙の劇中歌で使われた時と同じになるので感慨深いものがありました。 ![]() 愛するデューク アンコール2曲目は、スティーヴィー・ワンダーのディスコミュージックとなりました。こちらは格好良いドラムスのリズムのもと、トランペットのソリといった見せ場があったり、明るく元気に締めくくりとなりました。 ![]() まとめ 今回の定期演奏会のプログラムは、演奏会の幕開けの大定番である序曲。そして現代曲的で独特な毛色を持つショートカットホーム。つづいて沖縄音階を用いた過去の吹奏楽コンクール課題曲から2曲。そしてウィローの定番スパーク作品。後半では、メインの第5交響曲(さくら)。そしてソロやソリが映えるストレンジ・ユーモア。締めくくりは日本で幅広く知られる時代劇の曲ということで、演奏者にとっては挑戦であったり、聴き手にとっても楽しめる要素があったのかなと感じました。またアンコールの2曲目の演奏中に自然と聴衆からの手拍子が沸き起こるという一体感も出て、これは演奏者冥利に尽きるところでした。 ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 15, 2025 11:00:56 PM
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