人を引き付ける9つの法則
この世の大事なことの大半は明文化されていないといわれています。デール・カーネギーも教育指導するにあたり、適当な参考書の必要を感じて手を尽くして探したのだそうです。しかし、人間関係について実際に役立つ書物は冊も見つからず、自分で書くことを決心して出版したものが「人を動かす」です。人間関係がスムーズになる9つの金言をピックアップしてみました。1.議論をさけるよく過去と他人は変えられないといいます。変えられるのは未来と自分だけです。欧米人は自分の意見をはっきりと示し議論を積み重ねながら新しい方向性を見出していくことができると思っていましたが、実はそうでもないようです。確かに裁判に負けて「はい、そうですか」と思う人は少ないはずです。議論をしても遺恨が残るだけなので避けた方がよいという教えです。議論は、ほとんど例外なく、双方に、自説をますます正しいと確信させて終わるものだ。議論に勝つことは不可能だ。仮に相手を徹底的にやっつけたとしてその結果はどうなる?大いに気を良くするだろうか?劣等感を持ち自尊心を傷つつけられ、憤慨するだろう。 ---------------- 「議論に負けても、その人意見は変わらない」 「敵をつくりたければ、友に勝つがいい。味方をつくりたければ、友に勝たせるがいい」 2.自分の意見を相手に言わせる 誰しもやろうと思っていたことを先に言われてしまうとモチベーションが下がってしまいます。相手の口から言わせることが人間関係をスムースに運ぶ秘訣のようです。何かすばらしいアイディアが浮かんだ場合、そのアイディアを相手に思いつかせるように仕向けそれを自由に料理させてみてはどうか。相手はそれを自分のものと思い込み、二皿分平らげるだろう。 私の会社では最近数チームがチームディスカッションをしてアイディアを出し合うことが多いのですが、あえて自分では意見を出さずにヒントになるようなキーワードをちりばめると次々に意見が出てくるのですから面白いものです。過去の偉人も同じようなことに気づいていたようです。「教えないふりをして相手を教え、相手が知らないことは、忘れているのだといってやる。」 ------------- アレクサンダー・ホープ「人にものを教えることはできない。自ら気づく手助けができるだけだ」 ------------ ガリレオ・ガリレイ 「できれば、人より賢くなりなさい。しかしそれを、人に知らせてはいけない」 ------------ チェスターフィールド卿「私の知っていることはひとつだけだ。 自分が何も知っていないということ」 ----------- ソクラテス相手が間違ったことを主張しても、それをすぐに反対し、相手の誤りを指摘することはやめた。今までのやり方を変えてみると、ずいぶん利益があった。人との話し合いがそれまでよりもよほど楽しく進む。わたし自身の誤りを認めるのが大して苦にならなくなり、また相手の誤りもたやすく認めさせることができるようになった。 ------------ ベンジャミン・フランクリン 3.笑顔は大事 愛想の悪かったいニューヨーク株式場外仲買人ウィリアム・スタインハートはこんな手記を残しています。私は結婚して18年以上になるが、朝起きてから勤めに出かけるまでの間に、笑顔を妻に見せたこともなくまた20語としゃべったことがない世間にも珍しいほどの気むずかし屋でした。笑顔について経験を発表せよといわれたので試みに1週間だけやってみる気になりました。 私が態度を変えてからこの2ヶ月かつて味わったこともない大きな幸福が私たちの家庭におとづれています。相手の言い分に耳を傾けながら笑顔を忘れないようにすると、問題解決もずっと容易になります。笑顔のおかげで収入はうんと増えてきました。 またエルバート・ハバートは笑顔によって幸運をつかみ取りました。家から出るときは、いつでも顎を引いて頭をまっすぐに立て、できる限り大きく深呼吸すること。日光を吸い込むのだ。友人には笑顔をもって接し、握手には心を込める。誤解される心配などはせず、敵のことに心をわずらわせない。やりたいことをしっかりと心の中で決める。そしてまっしぐらに目標に向かって突進する。大きなすばらしいことをやり遂げたいと考え絶えず念頭に置く。すると月日のたつに従って、いつのまにか、念願を達成するに必要な機会が自分の手の中に握られていることに気づくだろう。 4.名前を覚えるいくら忙しいといっても米大統領より忙しいという人はそんなに多くないでしょう。フランクリン・ルーズベルトはたまたま出会った一介の機械工の名を覚えるのに時間を割いていたそうです。自分の名前を覚えていて、それを呼んでくれるということはまことに気分のいいもので、つまらぬお世辞よりもよほど効果がある。フランクリン・ルーズベルトは、人に好かれるいちばん簡単で、わかりきった、しかもいちばん大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだということを知っていたのである。ところでそれを知っている人が、世の中に幾人いるだろうか? 5.聞き手にまわる精神分析で有名なフロイトは実は聴き上手でした。フロイトのことは生涯忘れられない。彼には、私がこれまでに会った誰にもない資質が見受けられた。彼の目は穏やかでやさしかった。私の言葉に注意を集中し、下手ないい回しにも耳を傾け、それなりの評価を与えてくれた。このような聞き方をしてもらえたことが、わたしにとってどんなにすばらしい経験だったかご想像にお任せする。 また、人の話に耳を傾けないということは人から疎まれる原因の一つです。しかし、誰しもついついやってしまいます。人に嫌われたり、陰で笑われたり、軽蔑されたりしたかったら、次の条項を守るのに限る---------- ・相手の話を、決して長くは聞かない ・終始自分のことをしゃべる ・相手が話している間に、何か意見があれば、すぐに相手の話をさえぎる ・相手はこちらよりも頭の回転が鈍い。 そんなくだらんおしゃべりをいつまでも聞いている必要はない。 話の途中で遠慮なく口をはさむ。 話している相手は、話し手のあなたより自分のことに対して何百倍も興味を持っているものなのです。人は中国の大地震で何万人が死のうとも、自分の歯痛のほうがはるかに重大な事件だと感じるものなのです。6.穏やかに話す相手が反抗と憎悪に満ちているときは、いかに利を尽くしても説得することはできない。子供を叱る親、権力を振りまわす雇い主や夫、口やかましい妻。こういった人たちは、人間は自分の心を変えたがらないということを良く心得ておくべきだ。人を無理に自分の意見に従わせることはできない。しかし、やさしい打ち解けた態度で話し合えば相手の心を変えることもできます。7.しゃべらせる 自分のことをしゃべるのはなるべく少なくして、同僚の言葉に耳を傾けることにしました。同僚たちも自慢したい話が山ほどあり、それを話すほうが、私の自慢話を聞かされるより、はるかに面白いのです。8.思いつかせるスタジオに下絵を売り込むことを商売としているユージン・ウェッソンが、なかなか絵を買ってくれないニューヨークのとある一流デザイナーを落としたテクニックとは彼はいつも会ってくれたが、決して買ってはくれない。私のスケッチを入念に見て、必ず「だめですねウェッソン君。今日はどうも気に入りません。」という。150回失敗を重ねたすえ、ウェッソンは頭を切り替える必要があると思った。未完成の絵を数枚持って買い手の事務所へ駆けつけた。「これをどういう風に仕上げたら、あなたのお役に立つでしょうか?差し支えなければ、教えていただきたいと思います。」そういっていろいろと意見を聞いた上、スケッチを持ち帰り注文どおりに仕上げた。その結果はもちろん全部お買い上げということになった。 意見を言わせることによって相手は自分のデザインを創作しているつもりになっているのです。だからこちらが売りつける必要はなく相手が勝手に買ってくれたのです。自分専用に仕立ててくれるカスタムロッドやリールはここら辺の心理を応用しているのでしょうね。 9.同情を持つ自分の商売や会社でクレーム対応、友人や恋人とけんかした時にはやはり相手の立場で考えることが関係改善の第一歩です。口論や悪感情を消滅させ、相手に善意を持たせて、あなたのいうことを、おとなしく聞かせる魔法の文句を披露しよう。「あなたがそう思うのはもっともです。もしわたしがあなただったら、やはり、そう思うでしょう。」こういって話を始めるのだ。 だれしもかわいそうで不幸な自分に同情して欲しいものなのです。人間は一般に、同情を欲しがる。子供は傷口を見せたがる。大人も同様だ。----- 傷口を見せ、厄災や病気の話をする。不幸な自分に対して自己憐憫を感じたい気持ちは程度の差こそあれ、誰にでもあるものだ 。 今回紹介した金言はこの本のわずか一部です。この1冊は一朝一夕に生まれたものではなく、15年にわたるカーネギーの指導の現場から少しずつ書き溜められてきた名著です。私自身もすぐに実践してみてよい人間関係を作る努力をしてみたいと思います。