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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2019.04.06
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GAPには特別な思いがあります。

1977年渡米して最初に買った服はGAPのストライプ柄ポロシャツ2枚とコードレーンのパンツ、3点合わせて100ドルもしませんでした。場所はマンハッタン西34丁目、エンパイヤステートビルディングの隣にある小型ショップ。現在のように大型店舗はまだマンハッタンにはなく、品揃えはリーバイスが約半分、4分の1がリーなど他のジーンズブランド、残りがGAPオリジナル商品、当時GAPはごくありふれた普通のジーンズショップでした。

その後GAPはリーバイス以外のジーンズブランドの販売を打ち切り、リーバイスとGAPがおよそ半々の品揃えになり、徐々にリーバイスの商品比率を下げていきました。そして、GAP中興の祖ミラード・ドレクスラー氏(GAPを再建した後に競合の J・CREWの経営者に)の下で完全な製造小売業に業態変更、世界最大のアパレルメーカーだったリーバイスは最大の取引先を失ったことで工場閉鎖や従業員解雇に追い込まれました。

あれは1989年のこと。1985年に帰国以来なかなか行くチャンスがなかったニューヨークに出かけたとき、私はGAPの変貌ぶりに驚きました。マンハッタンの店舗数は増え、しかも多半は大型店、デニムなどオリジナル商品は魅力的、VMDも素晴らしい、特にニットの企画は理にかなっていました。日本に戻って三越ニューヨーク駐在員第1号だった友人の山懸憲一さん(のちにロロピアナジャパン社長)に「GAPが素晴らしいんだよ」と言ったら、彼は「ウソだろ」。80年代初頭までの日系駐在員にはGAPの変貌は想像つかなかったと思います。

1995年に松屋に移籍した私は若手社員らを連れて毎年ニューヨーク研修、GAPやオールドネイビー、バナナリパブリックの店を頻繁に視察、ときにはGAP本社にお願いして早朝お店を開けてもらって店長レクチャーを受けたことがあります。また、2001年松屋の大改装のときは社長ら幹部と共に、現地百貨店以上にGAPグループの什器、承りカウンター、試着室、商品陳列方法、ディスプレイなどを徹底的に調べました。リニューアルの参考にしたいことがいっぱい、当時のGAPやバナリパは本当に刺激的な小売店でした。

GAPが数寄屋橋阪急百貨店(現 東急プラザ)に日本1号店をオープンした直後、既にGAPの商標登録をしていた日本企業との間で裁判になり、私は米国側の証人となってGAPを応援しました。そのお礼で創業者の息子ロバート・フィッシャー氏(当時国際部門の責任者)にご馳走になりました。松屋のニューヨーク研修時に立ち会ってくれた西57丁目GAPの女性店長の解説が素晴らしかったので本社幹部に感謝メールを送ったら、店長はすぐにサンフランシスコに異動なんてこともありました。

GAPの日本進出に危機感を抱いた大手アパレルメーカー幹部から、「GAPに対抗するためにデザイナーと組んでカジュアルブランドを立ち上げたい。仲介してくれませんか」と頼まれデザイナー関係者を説得したこともあれば、GAPの急成長の前になかなか打開策を打てないリーバイス本社に乗り込んで「一緒にタグを組んで日本で新しい仕組みを作りませんか」と口説いたこともあります。



いろんなことがあったので、私にとってGAPは特別なブランドなのです。しかし近年、そのGAPが毎シーズン店舗を閉鎖、ニューヨーク五番街の旗艦店も日本路面第1号の渋谷公演通り店もバナリパ六本木ヒルズ店も撤退、今度はGAP原宿店の閉鎖を発表しました。米国市場では低価格のオールドネイビー中心に事業展開するそうですが、日本市場からオールドネイビーは既に撤退、GAPグループの日本でのビジネス展望が全く見えません。

大震災から1年経過した2012年3月、私たちは銀座の歩行者天国で「ジャパンデニム」をテーマに青空ファッションショーを開催しました。日本のデニムの素晴らしさを一般消費者に訴えようと近隣ショップにも参加を呼びかけ、GAP銀座店もお誘いしました。ところが回答は「参加できません」。なぜならドレクスラーCEOが去ったあとGAPの経営方針が変わり、高品質の日本製デニムを使用しなくなったから。

GAPが日本製デニムを使っていない、この回答には驚きました。「自分たちが買いたくなるようないい商品を作ろう」と社員に呼びかけ企業改革をはじめたドレクスラーCEOが退任すると、商品価値よりもコストパフォーマンス優先の経営になったのでしょう。ここにGAP失速の根本原因があるように私は感じます。このまま行けば、家賃の高い銀座晴海通りのお店もどうなることやら。ちょっと寂しいです。






Last updated  2019.04.07 00:05:53
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