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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2019.09.14
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パリコレを四半世紀以上にわたって牽引してきたフランスモード界の寵児ジャンポール・ゴルティエさんが久しぶりに来日、ゴルティエ展覧会のオープニングレセプションが昨日開かれました。冒頭の挨拶で、「オンワード樫山に採用されなかったら、今日の私はなかった。当時、服をつくるにもお金が全くなかったから」、と。どんなに有名になろうが恩を忘れない、だからゴルティエさんはみんなから愛されるスーパースターなんですね。



1970年代中頃、オンワード樫山は国内アパレル有数の企業に成長、パリの高級紳士服合同展示会SEHMに参加することになりました。せめて会社の名前くらいは来場バイヤーに覚えてもらおうと、SEHMのブースでシャンペンをふるまったそうです。結果は受注ゼロ。パリ駐在所長の中本佳男さんは創業者の樫山純三さんに報告したら、「紳士服がダメなら婦人服でやってはどうか」と自社婦人服ブランドの海外販売を命じたそうです。

このとき中本さんは(紳士服メーカーとして成長したから)婦人服はもっと厳しいでしょうと答えたら、樫山さんは「どうすれば売れるようになるんだね」。パリのことを知っている優秀なデザイナーを採用する以外に方法はありませんと答え、パリに戻ってさっそく若いフランスのデザイナー30人ほどを面接、ほぼ候補者を絞り込んだところに面白い若者がやってきました。まだ無名のゴルティエ青年でした。あの頃のパリは超人気だったケンゾー風、クロード・モンタナ風やティエリー・ミュグレー風を描く若いデザイナーばかり、でもゴルティエは◯◯風ではなく独特のデザインだった、と中本さんから伺いました。



無名の若者、ギャラはかなり安かったそうです。工場に職だしするとき、従業員がほとんどいなかったのでゴルティエ青年と中本さんは二人でボタンの数を数えて袋詰め。大きなショーをやるにも本社から与えられる予算は限られている。そこで、中本さんは知り合いのデザイナーたちに「みんなで仮設テントを建てて施工費を割り勘にしないか」と説得して歩き、大型テントでのショーが始まりました。

シーズンを重ねるごとにゴルティエの評価はうなぎ登り、気がついたら人気ナンバーワンの地位に。当時のオンワード樫山婦人服担当役員のTさんから「経費の追加を何度も要求され、中本は全部ゴルティエにつぎ込んだ」と伺ったことがあります。その甲斐あってパリコレの代表的ブランドに成長しました。

本社からの送金で最大のつかい道は、ギャラリー・ヴィヴィエンヌに建てたジャンポール・ゴルティエ直営店の施工費、そしてその盛大なオープニングパーティーだったでしょう。開店日は周辺の道路を封鎖(よく警察が許してくれましたね)、会場にはメリーゴーランドが設置され、道路のあちこちで大道芸人がパフォーマンス、私がこれまで見たどのストアオープニングよりも規模は大きく楽しかった。

昨日、ゴルティエさんに、「あのオープニングのとき、あなたはスカートをはき、中本さんは紋付袴だったことをはっきり覚えています」と話しかけました。あのときの紋付袴の中本さん、滅茶苦茶カッコ良かったなあ。それから数年後に中本さんはオンワード樫山を離れ、リボンのMOKUBAのフランス進出などを支援、短期帰国中の健康診断で癌が見つかり、その3ヵ月後日本で亡くなりました。パリに行くたびいろんなことを教えてもらい、私は日本の業界リーダーを彼に紹介した関係だったのでとてもショックでした。



東京都とパリ市は姉妹都市、毎年交互に文化交流イベントを開催しています。歌舞伎、大相撲や日本の花火などがパリで行われたりしますが、1988年にパリ・オートクチュール協会から大きなファッションイベントを東京で開催して欲しいと頼まれ、1989年日本武道館で大規模なイベントFIMAT(東京都、東京商工会議所、東京ファッション協会、東京ファッションデザイナー協議会の4団体共催)をやりました。私は現場責任のプロデューサー、このときフランスのデザイナーではゴルティエさんただ一人FIMATに来てくれました。なので昨日は30年ぶりの再会でした。

FIMAT当日、日本武道館にはゴルティエファンが殺到、警備員が彼をガードできずパイプ椅子が数脚倒れるなど大混乱、武道館側から私は厳重注意を受けました。なんと言っても当時ジャンポール・ゴルティエはパリコレ人気ランキングで第一位をずっとキープしているトップブランドでしたから。また、あの頃、服飾専門学校の学生たちはゴルティエのプロジェクトに関わりたくて多数オンワード樫山の新卒採用に応募したそうです。



昨日も展覧会会場に熱烈なゴルティエファンが駆け付け、ゴルティエさんは彼らに手を振ったり、握手したり、一緒に記念撮影したり、終始ニコニコ顔で応対していました。人柄ですね。このイベントに合わせてゴルティエさんが過去のコレクションから選んだ数点(下の写真はそのスケッチ)を再現した商品には特別な織ネームがついています。ゴルティエファンにはたまらないでしょうね。



EXPANDING FASHION by JEAN PAUL GAULTIERの詳細は以下のサイトでご覧ください。
https://www.kashiyamadaikanyama.com/

会場:KASHIYAMA DAIKANYAMA(渋谷区代官山町14-18)
本日夕刻、トークイベントにゴルティエさんは登場です。






Last updated  2019.09.15 00:16:05
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