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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2019.11.25
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(ミナペルホネン「つづく」展@東京都現代美術館)

ボランティアの私塾「月曜会」を開いていたとき、文化服装学院に通う男子学生Uくんがあるファッションコンテストに応募、一般消費者が投票する部門ではトップだったのに審査員の選考では「佳作」のような賞で終わったことがあります。たまたま私も審査員の一人、コンテスト直後の月曜会で彼は私に「どうして自分の作品は選ばれなかったのでしょう?」と質問しました。

Uくん応募作品のワンピースは色(空色と呼びたくなるブルーの無地)は美しく、シンプルなフォルムも美しく、審査会でもうちょっと立体的ボディのモデルさんが着用していたら恐らく評価は変わっていたでしょう。が、不運にも当日彼の服を着てステージに現れたモデルさんはかなり細く、フォルムの美しさをうまく表現できませんでした。審査員全員がそのことに気づき、作品だけを見て評価していたら最優秀賞ではなくてもそれなりの違った結果だったかもしれなかった、とUくんには説明しました。

そのUくんが卒業してデビュー、お披露目は都心から離れた八王子での新人合同展示会(テキスタイルメーカーのみやしん宮本社長が主宰)というので、私は教え子のコレクションを見に行きました。CFD議長を退任する直前の1995年春だったでしょうか。そのとき、Uくんと一緒に服を並べていた新人デザイナーのハンガーラックから服を取り出し、「随分重たい服だねえ」と率直に意見を述べました。それがデザイナー皆川明さんとの最初の出会いでした。

あれからおよそ4半世紀、皆川さんのミナペルホネンの展示会に何度お邪魔したことか。これまで内外のデザイナー展示会で私が最も多く足を運んだブランドです。いつお邪魔しても展示会場に流れるなんとも言えぬほんわかムード、他では決して味わえるものではありません。ラグジュアリーブランドの展示会で感じる冷たい緊張感もなければ、眉間にシワを寄せた怖そうなバイヤーの姿もありません。窓からそよ風が流れているかのような爽やかな空気、発注を入れるバイヤーたちの穏やかな表情、そしてデザイナーの布への、職人さんたちへの優しい眼差しをたっぷり感じる、他のブランド展示会とはちょっと違うんです。

皆川さんのミナペルホネンは比較的集客が簡単な百貨店や都心ファッションビル、駅ビルでショップを増やすことなく、コツコツ直営店を増やしつつジワジワとファンを増やしてきました。直営店ではナチュラルなリビング雑貨や家具を扱ったり、服に使用した布そのものを販売したり、店によってはオーガニック食品を置き、老齢年金対象者の大ベテラン(中には80歳超えの方も)を販売員に雇ったり、他のファッションブランドとはショップの景色が明らかに違います。だからか、訪れるお客様の心を揺さ振るんでしょうね。

これまでずっと独自の世界観を見せてきたミナペルホネンの展覧会「つづく」が、11月16日から江東区の東京都現代美術館で始まりました。会期は来年2月16日まで。ブランドの世界観、ものづくりの発想からプロセスまで、そしてデザイナー自身の人間的魅力をたっぷり体感できる空間に仕上がっています。ミナペルホネンの常連客でなくとも、撮影禁止のマークがなければ誰もがたくさん写真を撮りたくなるような展示でした。
(どうして日本の美術館は撮影禁止のところが多いんでしょうか)



今日11月25日は美術館の休館日、こちらでミナペルホネンの集大成のようなファッションショーがありました。ミナペルホネンの世界に惹きこまれ、ほんわか気分を味わってきました。これまでのコレクションのアーカイブ作品群、時代を超えた美しさ、職人さんたちが精魂込めて織った布が本当に素晴らしかった。最近の東京でのショーは概してフィナーレの拍手が短く小さいんですが、今日のフィナーレの拍手はかなり長く大きかった。

案内された座席のプレスキットの中に、私に宛てた皆川さん直筆の手紙が入っていました。初めて会ったときのアドバイスを真摯に受け止め、ものづくりをしてきましたとありました。思わず会場でちょっとウルっとしました。こういうちょっとした気遣い、ミナペルホネンがここまで伸びた根本要因はデザイナーご本人の人柄なんだなあ....。

(2013年12月、私の社長壮行会に来てくれた皆川さん)

松屋勤務時代も皆川さんにはいろんなお願いをしました。バレエシューズで有名なパリのレペットを新規導入するときはレペットとのコラボをお願いし、開店初日皆川ファンで通路に行列ができ、あっという間に完売でした。ある大銀行のユニフォームコンペでは特別デザインでプレゼン用サンプルを、三越銀座店との共同イベント「銀座ファッションウイーク」ではトークショーやフロアショーも引き受けてもらうなど、様々な場面で力を貸していただきました。皆川さん、ありがとう。






Last updated  2019.11.26 10:17:26
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