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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2019.11.28
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これまで何度も書いてきましたが、企業にとって重要なのは「ヒト・モノ・カネ」、その中でも真っ先に取り組まなければならないのは「ヒト」つまり人材育成だと思います。でも、近年企業買収などが盛んになると順番は「カネ・モノ・ヒト」になりがち、経営者の人材育成に注ぐ熱意は薄れ、育てる時間も資金もカットされる傾向にあります。

松屋にスカウトされた1995年、会社の改革には戦力となる人材が必要、まずは人材育成から着手させてくださいと社長にお願いし、毎週バイヤーゼミときには併行してアシスタントバイヤーゼミを開講。一連の講義が終盤に差し掛かる10月中旬には若手社員を連れてニューヨーク研修を行いました。バイヤーゼミの一期生がいま常務取締役ですから社員の多くは過去にゼミで学び、ニューヨーク研修でクタクタになるまで現地市場調査を経験しています。

政府の要請で松屋を離れなければならなくなったとき、現在の秋田正紀社長は交渉に来た役所の幹部に私のゼミだけは続けさせて欲しいと条件を提示、それを認めてもらっての転籍でした。だから私はずっと松屋でMDゼミを開き、若手社員を指導してきました。先月も私の出張にタイミングを合わせてニューヨーク研修を行い、現地で参加者に視察のポイントや激変する米国市場の動向を話しました。

イッセイミヤケでも在任10年間社内でマーチャンダイジングスクールを開講、自ら社員を育てました。私はマーチャンダイジングのスキルと同時にファッション商品をお客様に買っていただくための心構えを教えてきたつもりです。そして、自分が退任しても人材育成がずっと継承されるよう指導員を7年かけて育てました。

松屋に復帰した2011年、お取引先のインショップの店長さんたちを公募して別の研修会を行いました。対象者は外資と国内ファッション系ブランド、化粧品メーカー。この研修会で顧客分類や販売計画、定数定量管理に関して宿題を出すと、やはりイッセイミヤケの受講者だけは及第点でした。日頃から本社のプログラムで学んでいるだけあって、宿題の回答はほぼ完璧。このとき受講者のあるファッションブランド店長が私に「どうしてイッセイミヤケのショップが他と違って見えるのか、その理由がわかりました」と言ってくれたのがとても嬉しかった。

このところのファッション流通業界、地方百貨店がどんどん閉鎖、全国で年間にするとものすごい数のインショップが消滅、たくさんの販売スタッフが職を失っています。オンラインショッピングの急進によって百貨店は受難の時代、商品供給してきたファッション企業の業績もかなり厳しくなりました。大手アパレル企業が年間数百店舗閉めるというニュースが続きますが、地方店であっても1つ百貨店が閉鎖になれば大手取引先の場合1社あたり一挙に10ショップ以上消滅、1年間に全国で数百店舗消えるのは仕方のないこと。大手百貨店は地方店閉鎖をどんどん進めますから、この先消滅ブランドショップ数は間違いなくもっと増えます。

百貨店もアパレル企業も経営陣は売上減を覚悟していますから、当然経費削減はもっとシビアになります。ウインドーなどの宣伝装飾費、イベントやプロモーションの販売促進費はまずカットされます。国内外の出張旅費も大幅にカットです。そして、人材育成なんぞやってる余裕ないわ、と社内研修も消滅でしょう。

しかしながら、いくら売上が期待できないからと言って人材育成をやめる、あるいは大幅縮小するというのはどうなんでしょう。人材を育てる経費と時間をカットすれば人は育ちません。人が育たないと企業に未来はありません。果たしてそれでいいのでしょうか。

松屋だってこれまで業績は山あり谷ありでした。が、どんなときでも経営トップは人材育成の重要性をしっかり受け止め、ニューヨーク研修(ときにはパリもあればシアトルもありました)を続けて社員にチャンスを与え、手間のかかるMDゼミもずっと続けています。「松屋さんは偉いですね」とある大手百貨店のトップに言われたことありますが、どんなときでも人材育成の手を緩めなかった松屋の歴代経営者は立派だと思います。

おそらくちょうどいまどの企業でも経営陣は来年度の予算案を議論しているタイミング。消費税率アップもあって来年度も簡単に売上の上昇は見込めません、議論のマトは当然経費削減だと思います。本来ならば売上を確実にとるための経費はカットしてはいけないんですが、そこもカットしなくては収益維持は見込めない状況のはず。しかし、人材育成の手を緩めてはいけない、と私は思います。

人材育成の手を緩めるとそのツケは将来必ずやって来ます。苦しいからと新卒採用を中止すると20年後に人材難は起こります。人を育てるには時間がかかります、だからこそ人材は永続的に強化しなければならない最重要課題。宣伝装飾や販売促進に関する経費はカットしても、人員削減や早期退職を実施しても、人材育成に関する経費(大した額じゃないんですから)と手間暇だけはカットしてはいけない。

単発の社内講習して人材育成したつもりじゃ人は育たない。外部の自己啓発セミナーに参加させるだけでも十分ではない。しっかりカリキュラムを組んで指導員と受講者が何度も顔を合わすゼミ形式で育成するのが一番、それには手間暇がかかるんです。

来年度予算を議論している企業の上層部には考えて欲しい、ものごとの順番は「ヒト・モノ・カネ」、常にこの順番を守ることが大切、と。






Last updated  2019.11.29 00:11:25
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