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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2019.12.10
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10数年ぶりに訪れた地方の名門百貨店、びっくりするほどお客様の姿はありませんでした。以前訪問したときはそんなことなかった、特にデパ地下は品揃えも悪くなく買い物客でそれなりに賑わっていました。が、いまはガラガラ。関係者には申し訳ないけど、地方百貨店の多くはおそらくこの先5年はもたないでしょう。

地方百貨店あるいは大手百貨店の地方店では売っていないけれど、ネット通販では簡単に注文できる付加価値の高いブランド商品はいっぱいありますよね。地元の消費者にとって、大手量販店と商品グレードがほとんど変わらない百貨店なんて必要ない、それならネット通販の方がずっと満足なショッピングができるのではないでしょうか。

北海道のデパ地下鮮魚売場で最も目につくメインの棚が、北海道産天然の鮭ではなくチリ産養殖の鮭だったのでびっくりしたことがあります。こういう光景に出くわすと、地方で百貨店を営業する意味はもうないに等しいと思わずにいられません。

都心の百貨店の中にも、洋菓子売場のほとんどはいわゆるナショナルブランド、個性的で美味しいケーキや焼き菓子を提供するパティシエブランドはほとんどないというお店があります。こういうお店は自社の女性従業員にアンケートすればいいと思います。「あなたは自店でクリスマスケーキ(あるおはバレンタインチョコ)を買いますか?」、と。答えの大半はきっと「いいえ」でしょう。

自店よりもネットの方が魅力的であれば、女性従業員は間違いなくネットでケーキやチョコを注文します。リアル店舗なら、名前が全国に知られていないかわいい専門ショップで買い物するでしょう。ナショナルブランドが売れないわけではありません。が、ベンダー営業担当や幹部と関係が深い百貨店の男性社員には自社の女性社員の気持ちがわからない。こういう都心の百貨店も地方店同様、近未来消滅するのは時間の問題だと思います。

(全てEATALYのHPから抜粋)

日本橋高島屋の新館1階の「365日と日本橋」、いつも朝から凄い人です。新館のリーシングは玉川ショッピングセンターなどを手掛ける高島屋の小会社東神開発が担当しているそうですが、こういうベンダー(もしくはテナント)を百貨店の食品部はなかなか導入できません。どうしても知名度あるナショナルブランドを優先したがる傾向があるからです。「(知名度の低いブランド入れて)もし人気が出なかったらどうしよう」と考えると動けない。長年の関係でナショナルブランドを切れないから新規導入できない。他店で人気が出始めて結果が出てからなら動けるんでしょうけど....。

欧米の小売店を歩いていると、美と健康重視の生活がどんどん広がっていると実感します。「食」は極めて重要な商品カテゴリー、ファッションの世界と同じく飲食の世界でもラグジュアリー志向は進んでいますから、ナショナルブランド優先なんて言ってられない。だから意欲的に「食」に取り組むストアでのショッピングはワクワクします。

「EAT、SHOP、LEARN、HIGH QUALITY」(食べる、買える、学べる、高品質)を掲げるEATALYの賑わいは半端じゃありません。なぜこんなに高級イタリア食材店が混んでいるのか、どうしてこんなにもお客様にワクワク感を提供できるのか、日本の小売店はもっと研究すべきでしょう。また、扱う商品は全然違いますが、ファッション流通業界もこの食の新潮流を研究分析し、近未来に向けた改革案を真剣に練るべきだと思います。

消費社会全体は確実に二極化しています。国内産天然の時鮭(ちょっと高い)のニーズがある一方で、輸入物の養殖の鮭(安い)も市場になくてはなりません。美と健康を志向するアッパー層の消費者が増えれば、食の安全安心と美味しいものへのこだわりはさらに強くなり、食のラグジュアリー化は進みます。そんな市場変動の中で中途半端なプライスラインのナショナルブランドの存在感は薄れます。

ファッションの世界も同じ。二極化がもっと進めばナショナルブランドの市場における現ポジションはなくなるでしょう。二極化が進行する中、地方百貨店にはナショナルブランドに頼る以外にほとんど道は残されていません。交渉力と広いネットワークがあり、自らリスクを負う覚悟でマーチャンダイジングするのであれば、まだ一縷の望みはあるでしょう。しかし、食でもファッションでも、そんなことができそうなお店はほとんどない。

全国津々浦々までラグジュアリー商品を配送してくれるネット通販(プラットフォーム事業者であれ、個別ブランドのネットであれ)、これには地方百貨店のみならず都心店もかなわない。市場構造の二極化の中で、「上」に行く知見もネットワークもない、「下」に行くとロットが大き過ぎて無理、つまりどっちにも行けない中途半端な「中」に居続けるしかない。こんな状態はこの激動期に長く続かない。

「中」にいるお店はこの先思い切って業態変革するか閉店するしか選択肢はありません。また、彼らに商品供給し販売スタッフを派遣してきたベンダー側も同じ、お店の変革に付き合って条件をモールのように定借に切り替えるか、それとも取引を早く打ち切るしか選択肢はない。

ネット時代、どの国でも流通業は50年に一度の大転換点なんでしょう。さあ、どうする。






Last updated  2019.12.13 10:43:35
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