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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2020.01.17
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一定規模以上の百貨店には商品に関わる組織ラインと販売に関わる組織ラインがあります。現場の職種で言えば、前者はバイヤー、後者は売場マネージャー。これまで多くの百貨店では商販一致(一人の部長の下にバイヤーとマネージャーを配属)と商販分離(MD統括部長の下にバイヤーを、営業部長の下にマネージャーを配属)の組織変更を入れ替えたり元に戻したりを繰り返してきました。首脳陣が交代するたび、あるいは業績が低下するたび組織をいじる、これを何度もやってきましたね。

一方、百貨店の大きな収益源であったアパレルも、担当区域の営業部隊が会社の全ブランドを百貨店に売り込む組織体制もあれば、ブランド個々の営業担当が全国の百貨店とやりとりする組織もありました。取引の多くが委託取引であった時代、アパレル企業の営業は四六時中百貨店の売場や営業本部に顔を出し、百貨店からの追加納品要請や返品をスムーズにさばいてました。だから自分の会社のデスクにいる時間よりも、担当する百貨店にいる時間の方が長く、百貨店ではアパレル企業営業マンの顔を頻繁に見かけたものです。

世の中が消化仕入れ(お客様に売れるまでベンダー側に所有権)体制になると、納品や返品のさじ加減はベンダー主導になり、営業マンは百貨店の本部や売場に顔を出さなくてもよくなりました。近年、百貨店の事務館や売場でアパレルの営業マンの姿をほとんど見かけなくなったのは、取引形態が委託から消化に変わったからでしょう。

委託取引では納品されると商品の所有者は百貨店になりますから、店頭でどのように売れているのか、現時点で在庫がどれだけあるのか、ベンダー側のパソコンでは把握できません。また、追加納品のスタンバイがあるので、東京以外の営業所や支店がある程度在庫を保有し、機動的に納品したものです。地方百貨店のファッションフロアがほとんど大手アパレルメーカー依存なのは、大手企業なら地方の営業所や支店を通じて商品移動を速やかにやってくれるから。小さなメーカーに機動力はないので無理、大手の支店網があったから地方百貨店はなんとか売場を作れました。

しかしながら、その大手アパレル企業も取引形態のほとんど全てが消化形態あるいは定借(定額家賃制)になったので在庫は本社一元管理体制、自社パソコンで在庫の実態を全て把握できるようになり、地方営業所や支店が在庫キープして営業する必要がなくなりました。言い換えれば「問屋の御用聞き」業務はなくなった、あるいは地方の営業所や支店に営業担当が駐在する理由がなくなったのです。



さて、現在日本の百貨店では一部の自主編集、自主販売売場以外ほとんどが消化仕入れ、あるいは定借になりました。在庫調整も品揃えもベンダー側のさじ加減、従来型の「問屋の御用聞き」は不要です。でも不思議なことに依然営業職は従来通りたくさん配属されています。営業職っていまも従来通り必要なんでしょうか。そもそも営業職は何をする職種なのでしょう。取引が消化仕入れや定借になったいま、これまでのような業務は必要ありません。

委託取引がほとんどだった時代、アパレル業界では営業職が花形だったでしょう。営業職の能力とフットワークが売上を大きく左右しました。しかし、消化や定借が大半の世の中では、売上を左右するのは販売現場のスタッフではないでしょうか。その能力、スキル、お客様との信頼関係次第で売上は大きく違います。お客様の動向や趣味嗜好を知る販売職になるべく発注権を与え、マーチャンダイジングや発注スキルを訓練し、処遇改善に取り組む時代ではないかと思います。

一方、百貨店にバイヤーはいまも必要な職種なんでしょうか。自主編集、自主販売、あるいは買取の単品アイテム売場には仕入れを担当するバイヤーはこれまで通り必要ですが、消化や定借の売場にバイヤーは必要かどうか....。商品を発注しない者がバイヤーを名乗ること自体おかしなことです。ブランドとの出退店交渉はバイヤーでなく店の管理職がやれば済むこと、バイヤー本来の仕事ではありません。

かつて小売業の花形職種はバイヤーでした。でも、それは仕入れを采配するからであって、商品構成はベンダーが担う時代に仕入れないバイヤーなんて必要とは思えません。昔からバイヤー職があるから依然バイヤーなる役職を置いているだけ、本当は(一部を除き)もういらないポストではないでしょうか。今後どんどん定借型ビジネスに移行すれば、小売店の担当者は不動産業の営業職同然、バイヤーではありません。

高度成長期は委託取引で売場をどんどん囲い込む有力企業が重宝されました。でも、取引形態もビジネスモデルも大きく変わり、ブランド力のあるベンダーが重宝され、定借の直営店化は今後もっと進みます。従来の営業職やバイヤー職の人員を大幅にカットし、実際に売上を大きく左右する部署(オンラインもその一つ)あるいはブランド力を上げるクリエーション部門、もしくは企業の社会貢献を担う部署をもっと強化すべき時代ではないでしょうか。

個人的には、クリエーション醸成のためのものづくり人材と発注スキルのある販売人材の育成、全国の店頭にスムーズに商品を届ける物流システムの強化、ベンダー側は経営資源を集中させるべきではと思います。百貨店であれば、自主開発商品の比率を増やしてバイヤーにしっかり発注業務をさせるか、それとも逆に売場人員を減らし不動産業に徹するのかのどちらか、中途半端が一番良くないでしょうね。






Last updated  2020.01.18 00:04:49
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