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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2020.02.15
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本年度アカデミー賞は史上初めて英語以外の言語の映画が作品賞に、しかもそれが韓国の「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)でした。素晴らしいと思う反面、韓国に先を越されてしまった悔しさもあります。映画、音楽などの分野で韓国は海外展開であれば政府の支援もあり、勢いが違います。日本にだって世界に通用する映画監督もミュージシャンもいますが、アカデミー賞やグラミー賞クラスのグランプリとなるとどうでしょう。

ファッションの世界には何年も続く伝統ある世界的な賞はありません。過去オートクチュール協会がトライしたアカデミー賞授賞式のようなイベントはありましたが、結局長くは続きませんでした。アメリカにはかつてコティ賞、現在はCFDA賞がありますが、基本はアメリカを本拠に活躍するデザイナーが対象(生涯表彰みたいな名誉賞では海外デザイナーが表彰されることはあります)、世界各国のデザイナーを対象にしたグランプリはありません。

個人的な見解ですが、もしもファッションの世界でアカデミー賞のような表彰制度がずっと以前から開催されていたならば、恐らく高田賢三さん、三宅一生さん、川久保玲さん、山本耀司さんらはYear of DesignerあるいはSeason of Designerに選ばれていたはず。皆さんそれぞれ世界の若いデザイナーたちに及ぼした影響は半端じゃありませんから。

アカデミー賞だって、投票権のあるアカデミー会員(ハリウッドに関わる多数の映画人)の資格が現在のように国籍や性別を超えて構成されていたら、黒澤明監督や小津安二郎監督の映画が作品賞や監督賞に選ばれていたかもしれません。映画の専門家によると、アカデミー会員がアメリカ人の男性映画人が大多数だった資格制度が最近改訂されたことが今回の韓国映画が作品賞などに選ばれた要因なのだそうです。近い将来日本映画がアカデミー賞の主要部門を受賞する日が来るといいですね。

いよいよ今月後半にはパリコレが開催されます。コロナウイルス騒動で社員のパリコレ出張禁止の企業もあるようですが、中国のメディアやバイヤーは出張できるのでしょうか。近年は日本人メディアやバイヤーよりも中国業界人の方がいい席をたくさんもらっています。有力メゾンによっては日本人の最前列席は5つ程度、中国人はその倍以上というところもあり、中国市場重視は明らかでした。果たして今シーズンのコレクションはどうなるんでしょう。パリコレに限らずファッションショーの会場は換気が悪く、衛生的ではありません。出張者が現地で感染しなければいいんですが。

さて、セリーヌをパリコレ人気上位ブランドに引き上げた立役者Phoebe Philo(フィービー・ファイロ)さんがようやくファッションの世界にカムバックというニュースが流れています。このところ明るいニュースがなかったファッションの世界では久しぶりの朗報。先人たちが築いた老舗ブランドの継承も悪くはありませんが、できれば資金源はどんな企業グループでもいいので彼女自身のオリジナルブランドでの再登場を期待したいですね。



フィービー時代のセリーヌ、その構築的なラインを形成するのに日本の繊維加工技術は不可欠でした。サンジェルマンのショールームで日本製素材は何%ですかと訊ねたとき、日本素材は70%と伺いました。パリの人気ブランドが日本製素材を70%も使用、これはすごい数字です。

良質な素材という点でイタリアには素晴らしい素材メーカーがいくつもあります。しかし、イタリアの職人気質は日本のそれとはちょっと違います。せっかく柔らかく織った良質の素材を強力なスポンジングでバリバリに仕上げて欲しいとデザイナー側が要請すれば、多くのイタリア職人は喜びません。強力なスポンジングを拒否、「よその会社に行ってくれ」と言われることもあるでしょう。が、日本の生地メーカーは内心イヤでも「やってみましょう」とトライしてくれます。その違いが日本製素材を起用する有力メゾンが増えている要因だと思います。

もしもフィービーがファッション界に復帰し、セリーヌ時代のような構築的ラインと重量感ある素材をチョイスするのであれば、日本の生地メーカーにまた日が当たります。世界に日本製素材の素晴らしさをもっと広めるためにも、フィービーにはセリーヌ時代のようなクリエーション、ものづくりを期待したいです。

今月後半のある研究会では「ブランドDNAの継承」についてお話しすることになっており、説明補完の画像をすでに主催者に届けてあります。歴史あるブランドを継承する場合、ブランドのDNAを守る一方、起用されたデザイナーは自分自身の個性も表現したがります。その狭間でブランド関係者はみんな苦労します。きちんとブランドDNAを守って成功した例は案外少なく、個性を発揮したものの既存のお客様に見捨てられ、新規顧客の獲得もままならずにブランドは衰退、消滅というケースがかなり多い。

どんなにクリエイティブであってもブランドDNA継承と個性の発信のバランスは本当に難しい。待望のフィービーにはDNA継承の必要がない新規ブランドで思い切りクリエーションして欲しいなあ。






Last updated  2020.02.15 00:41:51
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