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売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2020.02.23
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新型コロナウイルス感染の拡散が日本でも止まりません。横浜港の大型クルーズ船の調査に行った霞ヶ関の役人、監督官庁の検査官、患者を搬送する救急隊員までも感染するとは、ちょっと甘く見ていたのかなあと思います。各国メディアからかなり批判されているようですが、危機管理体制はどうなっているんでしょうね。台湾政府は日本の警戒レベルを2に一段階上げましたが、これで台湾からの訪日も激減します。

数日前に乗車したタクシードライバーに聞いたら、外国人の乗客が限りなくゼロになったため日々の売上は10%ほど減少したそうです。「中国人、いなくなりましたねえ」、どのドライバーもそう言います。銀座6丁目のG Sixの前と裏、これまで中国人チャーターバスが常時数台停車していましたが、いまは見かけません。このあたりは大きなトランクを引きながらショッピングする転売目的のブローカーがたくさんいる地点ですが、現在は個人客からショッピングを委託された中国人の代行バイヤーだけです。

1月末まではラグジュアリーブランドの多くは売上好調でしたが、2月に入って客足はバッタリ。インバウンドのみならず人混みを警戒する日本のお客様まで街から消え、非常に厳しい状況になっています。いつもなら買い物客らで賑わう週末の歩行者天国はガラガラ、人影が極端に減ったあの311直後の情景を思い出します。

いろんなショップで販売員さんから状況を聞くと、ほとんどのショップで「先月末までは結構良かったんですが、今月は(前年対比)半分にはなっていないけどかなり悪いです」。ここ数年、インバウンド客から圧倒的に支持されてきたブランドでは前年対比40%のところも。銀座の路面店の多くはガラス越しに店内丸見えですから、スタッフしかいない大型ショップは目立ちます。

インバウンドが激減しているので「それみたことか」とインバウンド頼みの営業を批判する書き込みがSNSで増えています。が、これにはちょっと違和感を覚えます。来日観光客が3000万人を超えインバウンド消費が増えたと言っても、日本の都心部ではせいぜい30%程度のシェア、欧米主要都市の都心部に比べたら構成比はまだ低い方ではないでしょうか。コロナウイルス騒動でしばらくの間インバウンド客は減りますが、だからと言ってインバウンドよりも国内のお客様というのはどんなんでしょう。

以前から言っていることなのですが、インバウンド客の顧客分析、顧客分類をしっかり行ってきたかどうか、これは問題です。近年、海外からいらっしゃるAランク(お買い上げ上位)のお客様の中には年に何度もご来店なさる常連のお客様は少なくありません。海外からの常連様に、日本国内の常連様と同じようなサービスをしてるのかどうか、ここが重要だと思います。

国内のお客様に発行するハウスカードやポイントカード、果たしてご提供しているでしょうか。国内のお客様に送付しているDMやカタログ、お手紙などはどうでしょう。恐らく国内の常連様のようにはケアしていない会社あるいはブランドが多いのではないでしょうか。

もしも国内のお客様と同じように商品情報や納品時期の情報などを郵送あるいはネット配信していれば、国内同様海外のお客様も顧客分類を徹底してその趣味嗜好を掌握していれば、日本への渡航禁止になってしまっても海外のお客様とやりとりができ、ご注文を承ることもできます。インバウンドの常連のお客様と日頃からどう向き合うのか、ここが問題だと思います。

インバウンド売上はすべて「フリーのお客様売上」として扱い、顧客情報は取得しない(海外客向けにお客様カードを用意していない会社が多いのでは)、顧客分析も顧客タイプ別分類もしない、連絡先をお聞きしていないので情報はいっさい送らないでは、こういう突発的騒動が起こると海外向け売上は限りなくゼロになります。普段から国内のお客様のように密なコミュニケーションを心掛けていれば、ネットや郵送で注文をいただけるケースもあるでしょう。

10年前、まだブランドビジネスに携わっていたとき、路面店のお客様にはハウスカードもしくはポイントカードをお出しすべきではないかと言いました。百貨店内のインショップで買ってくださるお客様には百貨店のカード割引やポイント提供があるのに、路面直営店ではこうしたサービスが何もないのは不公平と思ったからです。直営店でもカードを作れば、ご連絡先や誕生年などのお客様情報は頂戴でき、顧客分類に役立ちます。これを海外からのお客様にも発行すれば、商品情報を送るなり注文を承るなり密なコミュニケーションは可能です。

問題は百貨店内のインショップ。百貨店がインバウンドに対応したカードを出さないと年に何度もお越しになる海外常連客の情報は入手できません。顧客分類できないだけでなく、商品情報を送ることも、海外から注文を受けることもできません。百貨店がインバウンド常連客にカードを出さないなら、インショップはどう対応するのかを考えるべきでしょうね。

「インバウンド=フリーのお客様」と考えてはいけません。国内のお客様であろうが海外からのお客様であろうが、Aランクのお客様は同じAランクの常連様として扱うべきと常々アドバイスしてきました。今回のような不測の事態で来日ができなくなっても、日頃からちゃんとケアしていたら注文は海外からいただけます。

今後日本は人口減、市場は確実にシュリンクするのです。その穴埋めはインバウンド消費しかなく、インバウンド比率を戦略的に上げることは間違っていません。問題はインバウンドのお客様をこれからどう扱うのか、常連様は国内のお客様と同じ対応をできるかどうか。インバウンド依存が悪いのではなく、無策でインバウンドに対処していることが問題なのです。

海外からのお客様が激減しているから「それみたことか」ではなく、インバウンドに対して無策でいたことが「それみたことか」と言いたいですね。






Last updated  2020.02.23 23:59:26
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