ブランドとコンテンツのコラボ
個人的に最近特に注目している海外ブランドの1つはロエベです。ジョナサン・アンダーソンがこのスペインの老舗ブランドのクリエイティブディレクターに就任してから7年余、ロエベはシーズン追うごとにどんどん進化しています。以前は高品質ながらデザイン自体は保守的、富裕層のマダムには受けても若い世代のファッション好きには歓迎されいるとは言えませんでした。しかし、アンダーソンが手掛けるようになってから、デザインは若くなってかなり垢抜けてきたのではないでしょうか。恐らくパリコレ視察するバイヤーやプレス関係者の間での評価もうなぎ登り、アンダーソン(1984年生まれ)は成長著しい若手デザイナーと言っても過言ではありません。新型コロナウイルス感染で非常に低迷していた2020年春夏市場、ロエベが打ち出した低価格路線のバスケットはそのデザインゆえに相当数売れ、さらに秋冬市場でもバッグやスモールレザーは高評価、コロナ不況にあってもロエベのビジネスは絶好調ではないでしょうか。(松屋銀座一階Space of Ginza)そのロエベがスタジオ・ジブリ「となりのトトロ」とコラボしました。緊急事態宣言発出で都内全体に客足が鈍い中、ロエベのショップやこのコラボイベントのスペースだけは賑わいがあってどの館でもひときわ目立ちます。しかも、従来からのロエベの客層に加えて若い世代のお客様の姿も目立ちますから、ブランドにとっても売り場展開する小売店にとってもありがたいことです。ロエベのホームページを開くと、以下のメッセージ。LOEWE x となりのトトロスタジオ・ジブリとのコラボレーションで生まれたウェア、バッグ、アクセサリーのカプセルコレクションは、1988年の名作映画『となりのトトロ』のキャラクターや美しい自然風景をモチーフにしています。ロエベストアにて展開中。長年のロエベの顧客の方々にはちょっと違和感があるかもしれません。しかも数年前アンリアレイジの森永邦彦さんが「となりのトトロ」とコラボをし、パリでも展覧会を開きました。あのときの強烈な印象もあって、アンダーソンがいくら日本文化に強い関心があっても「トトロ」コラボはそれなりにリスキーだったかもしれません。が、反響は大きく、コロナで低迷するファッション市場に一石を投じたと言えるでしょう。(GUCCIとドラえもんのコラボ商品)そして、今度はグッチと「ドラえもん」のコラボです。海外でも認知度が高い日本を代表するキャラクターがグッチのウェア、バッグ、アクセサリーなどに登場するそうです。世界のラグジュアリーブランドがどうして日本のコンテンツ、アニメキャラと次々コラボするのか、私にはその背景がよくわかりません。コロナウイルスの拡散で世の中が殺伐としているからほんわか笑みを提供しようという狙いでしょうか、それとも単純にクリエイターの個人的な好みなのでしょうか。「ドラゴンボール」、「ワンピース」、「ポケモン」、そして昨年後半に大ブレークした「鬼滅の刃」もひょとしたら今後世界的ブランドとコラボしてラグジュアリーブランド市場に登場するかもしれません。こういう日本コンテンツとのコラボによってブランド価値が上がるとは思えませんが、新しい顧客を開拓する、新しい需要を喚起することはできるでしょう。この動き、日本のコンテンツ業界の励みにもなりますし、何もネガティブなことを言うつもりはありません。数年前まで、私はジャパンコンテンツを世界にもっと売り込むクールジャパン事業に関わってきましたが、関連団体とのミーティングやセミナー、勉強会で度々申し上げたことがあります。「日本のコンテンツは世界で高い評価を得ているけれど、それを活用して儲けているのは一体誰でしょう。決して日本ではありません」と。海賊版アニメを制作して大儲けした中国組織と、日本のコンテンツを安くたたいて入手した米国映画産業は相当利益を上げたはず。にもかかわらず日本のコンテンツホルダーの多くは案外儲け損なっています。だからアニメ制作の現場はブラック、過酷なのです。日本のキャラクターが有名ブランドとコラボすること自体は大歓迎大賛成なのですが、ブランド側だけでなく日本のコンテンツホルダーも相応の利益を得る契約であって欲しいですね。交渉相手の外国人に煽てられて権利を安く手渡す人のいい日本では、いつまで経ってもクールジャパン事業はまっとうなビジネスにはなりません。日本のコンテンツと世界のブランドとのWIN-WIN関係構築、期待したいです。ロエベのトトロ、グッチのドラえもん、海外でもブレークするといいな。