映画「グーグーだって猫である」
「グーグーが長生きしますように、事故にあいませんように、病気しませんように そして天寿をまっとうしたら、この私がグーグ-を見送る事ができますように」 京都シネマで映画「グーグーだって猫である」(犬童一心監督)観てきました。 原作は大島弓子さんの同名漫画。1~4巻まで刊行中です。漫画家大島さんが、エッセイ漫画によく人間の姿で登場していた愛猫サバを亡くして悲しみの中出会った、アメリカンショートヘアーのオス猫グーグー。大らかで人懐こいグーグーとの生活を楽しむ大島さんが、やがて大病にかかり、療養生活をしながら、家も買って、段々数がふえていく猫たちと暮らす毎日を淡々と可愛らしく描いた作品。手塚治虫文化賞短編賞も受賞しています。 大島弓子さんの漫画は、全16巻の選集、文庫、選集に載ってない作品が読みたくて探した古い単行本…いろいろ持ってます。一番すきな名作「バナナブレッドのプディング」にいたっては、なぜか選集・文庫・単行本3パターンで持っていたり…。映画の中では、アシスタントのナオミが、高校生の頃「四月怪談」を読んで超感動し、大泣きしてました。私が「バナナブレッド」を初めて読んだとき、既に20歳で、漫画はそれより、丁度20年前ほどに発表されたもので、でも「なんでこんなもの描けるんだろ」とかなり驚いて「これ16,7歳のとき知ってたら役立ったのに」って思いました。全部何でも気に入った訳ではないけれど、新鮮な作品が多くて。もう少し刊行の新しい「ダイエット」は、ラストで大泣き。どちらも映画で出てきてました。映画化にあたって、映画で出てくる作品集が刊行されており、思わず買いかけて「いや、全部読んでるんだから」と思いとどまりました。 とはいえ、最近はそんなに読んでなくて、「グーグー読んだし、猫すきだし、小泉今日子もよさそうだし、観てみよう~」くらいの気持ちでしあまり期待もせず(笑)。原作ものはなかなか思い通りにいかないし、可愛い猫がたくさん観られたらいいな、みたいな気持ちで観に行きました。 出演者と前半がよかったです。天才漫画家「小島麻子」を演じる小泉今日子は、控えめで静かな演技がいい感じ。自然体なのにキレイだし。上野樹里も、可愛上手い。森三中や加瀬亮はいい味あって、グーグーは愛らしく、明るくコミカル、そして監督さんがいかに大島弓子さんのファンかが、伝わってくる映画でした。話も面白くて、原作と切り離して見られました。 ただ、病気が発覚する後半は、暗く寂しい印象になっていて。癌という大病ながら、漫画では淡々と、ユーモアさえ交えて描いてあり、ほかの記事で大島さん癌告知を受けたとき、「人生の大晦日」と周囲に感謝し、悟ったような様子が大島さんらしくて、よかったんですよね。実際は大変だったにしろ、映画でもあまり暗くしないでほしかったかな。大島さんの作品自体、シリアスな内容でも、可愛い絵であっさり明るく描かれているし。そして、猫とのふれあいが少ないのも、ちょっと残念。「猫がいっぱい出てくる可愛い猫映画」を期待して観たら肩透かしを食うかもしれないですね。動物を使うのは大変なのでしょうか。「グーグーだって」といいつつ、亡くなったサバとの交流の方が重視されている感じでした。大島さんの漫画が朗読されるシーンでは、あちこちからすすり泣きが聞こえてきて、他のお客さんも大島ファンが多いんだろうな、と思わされました。音がついたら、一層胸にきますもんね。一緒に観に行った人は、大島さんの漫画をあまり知らなかったので、よく分からなかったそうです(笑)私は、冒頭サバが亡くなるあたりで、既にきてましたが。大島ファンって周りにいないし会った事なかったけれど、お客さん達は、オシャレで「すきなものはオープンカフェと猫」とかいいそうな、可愛らしい人が多かったです。 余談で。先に、国際マンガミュージアムで、映画「グーグー」の特設を見ており、ポスター等とともに「八月に生まれる子ども」「ダイエット」の生原稿らしきものがありました。「これが、あの原稿の下書き?大島さんの肉筆?」と感動してしまったのですが。絵もそっくりだし、疑いもせず。 が、映画をみたときに同じ原稿やメモが出てきて、タイトルロールの「作画・漫画監修」は大島さんではなく、別の女性のお名前。アシスタントさんでしょうか。映画に出てくる上野樹里演じるアシさんと同じお名前。そしてマンガ「グーグーだって猫である」で大島さんが病気したあと、付き人のような仕事をしていた女性Nさんとも同じイニシャル。Nさんは、漫画で大島さんが、自身が病気と分かったとき「私が死んだらマンションを譲るから猫を引き取ってほしい」と頼んだ人で、よっぽど信頼関係あるんだろうな、と思ったのですが。とにかく私は、別の人が描いた、映画の小道具をみて感激してたのか…。「原稿はできあがってるハズが、なんで下書きあるんだろ?別描き?」って疑問ではあったけど。「これは大島さんが実際に描いたのではありません」と、注意書きをしてほしかった(涙)パンフレットにも、大島さんの書き下ろし絵とかコメント、インタビュー等は一切なくて、残念。大島さんが人見知りというだけじゃなく、体調も悪くてあまり働けないのかなぁ、と心配だったり。映画をみたあと「グーグー」の4巻も購入しました。どんどん猫がふえていく、大島さんち。大島さん自身が、猫と化していくかのような。3巻あとがきで9匹だった猫が、現在は13匹いるとか。増えたうち、唯一でてきた「ミケマル」のエピソードは大変可愛らしく、ちょっと羨ましい。ほとんどはぐれ猫・捨て猫みたいだし、スペースに余裕があるなら、引き取りたくなる気持ちは、分かります。大島さん、リフォームしたり、猫を探し回ったりできるほどには、元気そうで、よかった。