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カテゴリ:ロスチャイルド
▼海水温は下がっていた
IPCCは、膨大な量の報告書を発表しており、そこでは気候変動に関するいろいろな仮説や主張が列挙され、それらを踏まえたうえで、最終結論である人為二酸化炭素説が出されたという形を取っている。太陽活動説など、他の説が主張されても「その件はすでに検討され、大して重要ではないという結論が出てまいす」「その要件は、すでにわれわれのコンピューターモデルの中に組み込まれており、それを包含した上で、今の結論になりました」と言い返して終われるメカニズムが作られている。 しかし反論の中には「説」ではなく「データ」もある。たとえば、米NASAなどが参加して、世界で3千個の海中探査装置を2000メートルの海中に沈ませ、10日に一回浮上させて海中の水温や塩分濃度、潮流などを調べる国際的な海洋温度探査事業アルゴ・モニターが2003年から始まっている。最近、過去5年間のデータが発表され、この5年間、世界の海水温度の平均値は、少し下がる傾向にあったことが明らかになった。 IPCCが人為温暖化説の根拠として採用したコンピューターモデルのほとんどは、海洋温度の上昇が大気圏の気温上昇につながるという原理だが、海水温が下がっているのに大気温が上がっているとなると、このモデルの妥当性が失われる。5年間は、気候変動を計るには短すぎる期間だが、大気温の方は、ここ数年の上昇を理由に「このままだと温暖化が進んで大変なことになる」とマスコミなどが大騒ぎしているので「5年は短すぎる」と言えない。本来、IPCCは従来のモデルの放棄を検討せねばならないところだが、実際には、IPCCやマスコミは、アルゴ・モニターのデータを無視して事なきを得ている。 そもそも、雲が及ぼす影響など、まだわかっていない部分が大きい気候変動のメカニズムを、わかったことにして数式モデル化し、コンピューターのシミュレーションにして、それを回して未来の気候状況を的確に予測できると考えるIPCCの結論の出し方は、全くの頓珍漢だ。そこに根本的な問題がある。 ▼世界は昨年から寒冷化している? 昨年から今年にかけての冬は、地上の気温の方も世界的に低下している。アメリカの気候データセンターによると、今年1月から2月にかけて、全米の多くの地域で、史上最も寒い温度が記録された。イラクの砂漠では100年ぶりの雪が降り、サウジアラビアでも20年ぶりの大雪となった。中国では大寒波で交通が何日も麻痺し、中央アジア諸国では凍死者が大勢出た。昨年の気温の下降は、過去100年間の気温上昇傾向を逆行させるものだという指摘もある。 同時に、昨年から太陽活動が縮小期に入っており、寒冷化はそのために起きていると主張する学者がロシアやカナダで出てきた。先に、1925年から45年まで急速に温暖化、45年から77年まで寒冷化、77年から現在までは再び温暖化しているとする指摘を紹介したが、それを加味すると、77年から2006年まで温暖化し、07年から再び寒冷化が始まったのではないかと考えることもできる。再び小氷河期が来るという「地球寒冷化」を予測する学者も現れた。(70年代にも、地球寒冷化の恐怖が喧伝されていた) IPCC擁護派の側は、昨年からの寒さは、太平洋上の状態が、これまでのエルニーニョ(南米沖の海面温度が高めになる状態)から、ラニーニャ(その逆)に代わったからだと説明している。 今後も寒冷化が続くのか、それとも温暖化に戻るのか、寒冷化の主因は太陽活動なのかラニーニャなのか、まだ確定した説明がつかないのは当然だが、少なくとも明確に言えるのは、地球が一気に温暖化していると断言できなくなったということだ。 気候に関してメカニズムがよくわかっていないものはたくさんある。たとえば最近、アメリカの著名なハリケーン(カリブ海からアメリカに上陸する大嵐)の研究者が新しいハリケーン分析モデルを作り、コンピューターを回してみたところ、海水に急速な温暖化が起きたとしても、ハリケーンの増加にはほとんど影響がないことがわかったと発表した。新モデルに基づくと、ハリケーンは今後、減少傾向になるという。 従来は、温暖化が進むとハリケーンも大型化・増加し、アメリカに上陸して大変な被害をもたらすことになる、と説明されてきた。米マスコミは「温暖化を放置するとハリケーンで家を壊されますよ」と米国民を脅してきた。だが、今後はそれができなくなる。(これも無視されて、従前通りの脅しが繰り返されるのかもしれないが) ▼IPCC支持派だけでなく反対派も市民運動化 最近、アル・ゴア前副大統領が作った映画「不都合な真実」など、地球温暖化について誇張しすぎる案件が目立つようになった。その結果、IPCCのやり方など、地球温暖化問題をめぐるあり方に疑問を持つ人々が、世界的に多くなっている。温暖化対策に反対したり、ゴアを敵視するキャンペーンも行われている。 アメリカでは、たとえば、シアトルで珍しく4月に雪が降り、これについて地元のメディアが「この寒さは短期的な例外であり、地球温暖化の傾向は変わらない」と説明するIPCC的な記事を出したところ、その記事の下の掲示板に「地球温暖化はウソだ。地球は温暖化してない」「いや、地球は温暖化している。君は間違っている」という感じの議論が延々と展開されている。 こうした激論は、以前には見られなかったことだ。私が1997年に最初に温暖化懐疑論を書いたころには「田中さんは、石油業界から金をもらっている一部の研究者の歪曲分析を真に受けてしまっていますよ」と、左翼の人からやんわり注意される程度だった。2005-07年に書いたときには、IPCC支持派が血気盛んに「市民運動化」しており、中傷的・攻撃的に批判を受けた。 しかし今、シアトルの新聞記事の掲示板に象徴される状況は、IPCC支持派だけでなく、反対派も市民運動化し、互いに敵対し、攻撃し合っている。この1-2年で、IPCCを批判的に見る人が増加したことになる。 田中宇の国際ニュース解説 http://www.tanakanews.com/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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