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竹林館 空飛ぶ びぶりおてっく

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2011年03月25日
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本日は竹林館文庫の2冊目のご紹介です。『さて、月の澄みて候』(中野武志著)、時代小説で、二段組、872頁の大作。カバーにはモノクロの月と芒の写真を2枚組み合わせて使いました。ぞくっとするような迫力! この小説の舞台を映しているかのようです。開くと和紙の風合いの臙脂色のみかえし。何ともいえず存在感のある素晴らしい一冊となりました。田舎の小藩で起こったお家騒動を亡霊同士が語る・・・しかもそれらはたった一夜のできごとでありました。単行本で以前に他社で出版されていたものを著者にぜひにとお願いし、この度文庫本化させていただきました。まるでドストエフスキーを読むような重厚さ。あなたもずっしりと重いこの一冊の中へ・・・じっくりとこの本の中の世界に入り込んでみてください。人間の縮図が、愚かしさも哀しさも、喜びもあらゆるものが描かれています。関西の大型書店では平積みのところも!


人の舞い狂うてか
―――――――――

ある貧乏小藩の     
上は大名から下は百姓町人まで
それぞれの持ち場で
心を尽くして生きた人々へのオマージュ


     さまざまな死・・・

     人の世の儚さと
     それゆえの気高さ――

     ある小藩のお家騒動をめぐって
     亡霊たちが語り合う、一夜のものがたり。
     心に刻まれる長編時代小説が待望の文庫化。

二段組872頁、堂々の大作!


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

それが兵衛の心の中にゆっくりと醸成されてきたことだった。騒動の日 ―― 平井の陥った無残な、あの血みどろな努力が砕けた日、一挙に兵衛の心に襲いかかった思いとはそういうものだった。なぜ、自分が武士をやめたのか本当の理由がわかったの
だし、もうそういう争いは自分のことではない、あとに残るのは当事者としてではなく、姿のない、何者でもないものとして出来事を記してゆくこと、かつてはそれは、もの言わず死んだ石川伊織への、伊織的な者たちへの鎮魂の行為のはずであったが、いま彼にとってそれは伊織の ―― 伊織的なものの鎮魂を越えて、すべての者、生きて欲や時の運や弱さにひきずられて舞い狂うように舞い、滅んでいったすべての、敵も味方もない鎮魂とならねばならぬものと思えた。

(本文より)


叢書名: 竹林館文庫
ISBN: 978-4-86000-200-8 C0193
サイズ:文庫
頁:872ページ
製本:ソフトカバー
出版日:2011/2/20

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最終更新日  2011年03月25日 23時54分16秒
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