温故知新

2005/10/08(土)23:28

障害児と生きる日常(206)

娘の靴を大量にいただいた。 障害児ママ友から、である。 二人姉妹の、年長の姉が履けなくなった靴だそうで、 妹の方は肢体不自由で、まだ当分、歩けなそうだから、と、 「お古で悪いけど、遊び靴として履きつぶしてあげて」と言う。 この申し出は正直ありがたかった。 保育園には、保育園で遊ぶ用の靴を1足、置き靴してある。 が、この置き靴がクセ者。 とにかく、痛むのが早い。 そして、自分で履ける必要、があるのだ。 もちろん、担任の保育士はそんなことは言わない。 が、送迎時に出会ったときや、個人面談で、 自分で履けない、と、靴を投げ捨てて怒っています、 やら、 あんまり皆と遊びに行きたくって、裸足で追いかけてきたんですよ~、 などと言う話を耳にしてしまうと、 加配の保育士と二人、居残って靴を履いている姿やら、 遊ぶ時間が惜しくて、羨ましげに皆を眺めている姿やら、 勝手に想像がふくらんでしまって、 不憫だな…などと、涙腺がゆるんできてしまう。 保育士は、そんなつもりで話した訳ではなく、 自分で靴が履きたい、遊びたい、という負けん気や強い意思が出てきたんですよ~、 というつもりで言った、 そのことは重々分かっているのだが、 そんな卑屈な見方をしてしまうのに、こちらも理由がある。 娘はクラスの子供たちよりも運動面の発達が遅れていて、 走るときはもとより、歩くときでさえ、まだ不安定である。 そんな娘が少しでも困らないように、と、 ブランド物の、お高いスポーツシューズで、 ベルトが2本ついて足をがっちりと固めて履けるような、 そんな履きづらい靴を持たせたのは、 他でもない、この私だった。 そんな汚名返上。 1足目を替えるために、意気込んで靴屋に赴き、幾つか候補を履かせ、 自分で履きやすくて、でも良い靴を購入してきた。 が、慣らしで何度も履かせているのに、 固いのか、馴染まないのか、 喜んで履きはするのだが、ひょこひょこヘンな歩き方をする。 走るに至っては、足を引きずってしまって、すぐに歩いてしまう。 これは、困ったな… …と思っている、まさに、その時の有り難いお話だったのである。 すぐに飛びついて、ありがとう、のメールを送ったのだが、 ちょっと考えて、 でも、他にもお友達がいるのに…いいの? と、送った。 それでもいい、と思ったからこそ声をかけてくださったのだから、 野暮な質問ではあるのだが、 一声かけずにはいられなかった。 すると、彼女はこんなメールをくれた。 「私、絶対に姉妹が欲しいと思っていて、上の子が女の子で産まれたとき、 まだ見ぬ下の女の子のためにも、と、思いっきり良い靴を買ったの。 だから、○○(娘の名前)ちゃんに履いてほしいの」 なんとなく言いたいことが分かった気がして、 私は有り難くいただくことにして、 わずかばかりのクッキーをお礼に渡した。 靴は10足近く入っていて、 どれも、有名メーカー、有名スポーツシューズのものばかりで、 ちょうど良い、お古さ加減が娘には心地良かったようで、 あれも履いては部屋を回り、これを履いては飛びはねて、 とても嬉そうにしていた。 中でも、気にいって、自分でも履きやすそうだった、 NIKEのマラソンシューズのような軽くて丈夫なそれを、 保育園用に決めた。 靴の内側には、その年長のお姉ちゃんの名前が、 しっかり、きちんと書いてあった。 障害児ママ友の気持ちが、そこにこめられていような気がした。 私は、その名前と苗字にも横線を引き、 娘の名と姓も書き入れた。

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