アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第24回
アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第24回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所「マンガ家になる塾」 山田企画事務所山田企画manga動画 機械城では、16面体の意識がフェイドアウトしていたが、自己防御システムは可動している。自己防御システムは、急速に接近して来る球体を熱感度センサーで危険物と認知した。球体機械内部には、生物体の存在が確認できる。即時、この球体に対して、各部位ごとに、認知センサーがデータ分析を行い、総合判断する。 攻撃。 飛来する10個の球体は、迎撃するミサイルを感知し、迎撃する。搭乗者のアドレナリンが球体に感応し、白熱化する。この攻撃船が独立傭兵部隊・タイコンデロガ搭乗機の「ファイアーボール」である。「歓迎の花火を挙げてくれるぜ」 個々人の感覚は増幅されて、搭乗者に見える機械城は、まるでチョコレートケーキに見える。非常にくずれやすそうなケーキだった。音は光りになって感知できた。 とぎすまされたファイアーボールは、そのケーキを切り刻むナイフだ。ナイフの刃は搭乗者の頭脳と体力だった。「各自、攻撃」「我々の目的はあくまでも、禁断の実だぞ、それを忘れるな」「OK、ボス、各個撃破」「ハリホー」 ファイアーボールは、生体維持装置の限界までゲージが上がっている。能力限界オーバー。コンピュータの機械ボイスが叫ぶ。 視覚装置がフェイドアウトした。「ファイアーボール」機内モニターが砂の嵐となる。機械城が機械砂を一斉に吹き上げる。生命体である機械砂は、ファイアーボールの外装の、機械構造の隙間をとうりぬける。「ファイアーボール」 コックピット内に微粒子が侵入してくる。「いかん、全員ファイアーボールから脱出しろ」隊長のトポール大佐が叫んでいた。第1種装甲のまま、各兵士は、ファイアボールからプッシュアップした。2人、脱出できなかった。機械砂に包まれたファイアーボールは搭乗者ごと吹き飛ぶ。「背面降下、キャノンボール」 装甲服の背後から、キャノンボールと呼ばれるロケット噴射機が作動し、機械城の壁面に8人が着地する。「ミラー伍長、奴らはどこにいると考える」「恐らく最上階でしょう。が、トポール大佐、問題なのは、機械城のそれぞれの空間は、常に移動しているのです」「つまり、機械城という大きな海の中を航行している船が、各空間だというのだな」トポール大佐に率いられた傭兵たちは、地下羊宮チャクラの意識層から、トリニティが見聞きしている映像を、割り出していた。 彼らのいる機械城の壁表面から、今度は、液体が吹き出す。「いかん、機械油だ」 装甲服に粘りつく。 「こいつは」 装甲服に火の手があがる。機械城の表面が一瞬すべて燃えあがった。熱が装甲服の中でも急激に上がってくる。「チャクラの言っていた侵入口はどこだ」「どうやら、ここです」 ミラー伍長が3次元モニターで地図を示した。「よし、電磁砲を使え」が、機械城に侵入しても、通路には、防御ロボットが待っていた。「なかなか、退屈をさせてくれんな、ミラー伍長」「そのようですな、楽しませてくれますね、トポール大佐」ミラーもにやりと笑う。 機械城の最上階にたどり着き、独立装甲騎兵がなだれこんできた。が、動くものはない。「てこずったな。おやおや、戦いは終わっているのか」トポール大佐が言う。「ミラー、この中で、どれが、トリニティだ。トリニティなら、禁断の実の事がわかるだろう」 寂寥王は16面体との戦いで、相打ちとなり、トリニティの姿に戻っていた。トリニティはぼうぜんとしている。ミラーはこの有り様には目もむけず、トリニティを発見する。 「彼女だ」そばにはりんごが転がっている。今度は誰。モウ、あたし、ふらふらだわ。「お嬢さん、その禁断の実を渡してもらおうか」装甲服のミラーが言った。「いやだわ、なぜあなたに渡さねばならないの。これはあたしの命なのよ」「御不満かもしれないが、このモニターを見れば気もかわるだろううさ」 装甲服のミラーは3次元モニターをトリニティの前に見せた。「まさか、チャクラぢいさんを」ミラーは、ヘルメットの下でほくそんでいた。「そうだ。トリニティくん。我々の仲間が、君の親ともいえるチャクラを占領している。君が我々の提案にしたがわない場合は、チャクラを爆破する」あたしの一番大切で安全な場所を返して。「いやよ、なぜなぜそんなことをするの。それになぜ禁断の実を」「我々は《禁断の実》が過去宇宙のデータバンクであると聞いている。それを持って帰り、分析したいのだ」トポール大佐が言った「分析ですって、そんな事して何になるというの」「この世界の始まりを知り、過去がなぜ滅びたかを知りたいのだ」「これが、禁断の実か」トポール大佐は、地面に投げ出されたリンゴに目を止めた。トリニティの視線をおったのだ。「やめて、それにさわらないで。危険よ」そばで見ていたミラー伍長の頭で、何かが危険信号を出している。そうだ。昔聞いた巫女の言葉だ「危ない、大佐、それに触るのは危険だ」「ミラー伍長、君、私に宝を触らせないつもりか」が、突然、その禁断の実が、トポール大佐の手のうえで、液体化する。「これは、何だ」うわーつ その液体は、宇宙服を着たトポールの首筋の情報端子から、トポールの脳のなかにゆったりと滑り込む。「グワッ」トポール大佐は未来の姿を見た。世界の過去未来、世界のすべての情報がトポールの脳に一瞬に流れ込む。脳機能がオーバーヒートする。眼球が飛び出し、頭が破裂する。宇宙服ヘルメットの内部が血で真っ赤になる。つづいて、トポール大佐の宇宙服が内圧のすごさのあまり爆発する。彼の爆発した肉片から、コロコロと再び凝固したリンゴが転がりでた。「あーあ、だから言ったでしょう。危険だって」トリニティがつぶやいた。「禁断の実は生きている」装甲兵の一人が恐怖におののきながら、叫んだ。(続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー「マンガ家になる塾」 山田企画事務所山田企画manga動画