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Nice to meet you!

4.報復のディベート

自分がもし…
貧乏のどん底にいて、
自分の意見も素直に言えず、行動の自由も制限され、
食物や飲み物も満足に手に入れられない―そんな生活を送っていたらどんなんだろう?

絶対に耐えられない。

とくに食物や飲み物が手に入らないっていうのは最もツライ。
もちろんこの世にはそういう生活を送っている人もたくさんいる。
だけど、俺みたいなワガママなヤツが
今の生活から急にそんな生活に変わったら…想像するに恐ろしい。

高校時代の全校ディベート大会で
『大食い大会の是非』をテーマに
意見を戦わせたことがあった。

俺は『大食い大会』肯定側に割り振られた。
ただし、俺個人の意見は『大食い大会』は必要ないと思っていた。
しかしやるからには勝つ!
サッカーで培った勝負心に火がついた。

これなら所詮ゲームで通る。
相手との和が乱れることはないだろう。
相手は『大食い大会』について、

1.食料の無駄遣い
2.見ていてキモチが悪い
3.食料不足の国に援助した方がずっと為になる

以上の三点を中心に攻めてきた。
2の主張なんてまるでコドモのケンカである。
じゃー見なけりゃいいでしょ。
そう言っただけで相手は1と3に論点を移した。

俺も食物の無駄遣いとか
そんなことに使うんだったら
その食料を不足している人たちに
援助すべきだって言う意見を持っていた。
しかし勝つ(大食い大会はあってもいいとする)ためには
その意見を切り崩さなくてはならない。

当然この意見については想定済みだった。
まず俺は食料を無駄に浪費しているという意見に反論した。
どこが無駄なのか?って。
きちんと市場原理に基づいて取引している。
主催者側が市場に出回っている商品を買って何に使おうが、
誰にも干渉する権利はない!
否定側の主張は単なる感情論・精神論に依拠しているにすぎない。

そう言い切った。相手は弱い。
難しい言葉をいくつか並べただけで
それ以上に追及してくることはないのだから。
相手は大会に使うくらいなら食料援助しろ、という主張に論点を絞ってきた。
実は俺も内心はそう思っていた。
しかし、勝たなくてはならぬ。

相手が援助を話題にしてきたから
これで俺はチェックメイトを相手に宣告出来る。
肯定側に言わせれば、
「援助?んなもん、食料が豊かな国の自己満にすぎない」
と主張できるのだ。

俺は内心では、大食い大会は無駄だって思ってるから
まともに議論してもかなわない。
俺が勝つためにはうまく議論をすり替えるべきだ。
そう考えていた。

何度も繰り返すけど相手は弱い。
こっちが反論すると向こうは一気にトーンダウンしてしまう。
俺を分析するということはしなかったのだろうか?
いや、むしろ分析をする必要が相手にはなかったのかもしれない。

議論のすり替えもうまくいき、結果的には圧勝だった。
否定側の席に立つ、いつも俺が見ている顔には
溢れんばかりの笑みがこぼれていた。
俺は相手への謝罪のキモチで一杯だった。

このディベートは実行委員会のタクマ、ユウキ、トシヤに仕組まれていたのは明らかだ。
彼らが不正な籤引きで対戦者を選んだのである。
俺が生徒会での権限を使って、
いたずらに彼らをディベート実行委員に指名したため、その報復を受けたのだ。

俺にしてみれば、いや誰にとっても最悪の報復だっただろう。

全校の皆さんも俺たちの対戦を楽しみにしていたようだ。

そりゃそうだろ。付き合ってる彼氏彼女同士が全校生徒の前で討論しあうんだから。

しかし俺は多くの人の期待を裏切ったようだ。
相手である当時の彼女Hをコテンパンにしてしまったのだから。
その日も一緒に帰ったけれど、やはり俺はHの前ではギクシャクしていた。
でも一方のHはいたって普通だった。
ディベートをするまでは「タダのゲームさ!」と割り切っていたけれど、
あとになってものすごくクヨクヨしたのだった。

でもこれが原因で破局しなくってよかった!
ディベート大会の前に対戦表を見たとき、
俺はかなり複雑な心境だったけど、まぁ逃げられないもんね。
ユウキ、タクマ、トシヤにはちゃんと文句は言ったけど、
ちゃんと参加はするつもりだったよ。

Hはまっすぐだったからね。
素直にくじ運が悪かったとでも思ったみたい。
(そこがカワイかったんだけどね・笑)
だから、ディベート実行委員会に異議申し立てはしなかったよ。

Hとは対戦することが決まってからもフツーに過ごしてたよ。
でも今思えばなかなかいい経験だったかも。

それからというもの、俺とHは学校中でいろいろ言われたんだけどね、
なんか人気者みたいなカンジになれて当時の俺は単純にうれしがってた気がするよ。




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