薬か毒か?
咳が止まないので町医者に行った。医者からもらった薬を飲んで養生したがそれでも咳が治まらぬ。医者は次々と薬を出した。患者はそれを押し頂いて云われた通り山ほどの薬の山を平らげた。しばらくしてゲリが止まらなくなった。医者はまたくすりを出した。患者は云われた通りゲップが出るほどの薬を平らげた。患者は数日して七転八倒!町医者はとても「手に負えぬ!」と救急車を呼び、隣町の総合病院へ転送。が、そこでも処置できずに隣の市民病院へまたもや転送、たらい回しになったのでした。市民病院の訝しい医者は、その患者の症状を見て乾坤一擲!キラリと光るメスを振り下ろしたのです。が。開腹して目が点になった。「ど、どこにも病巣がない・・・」焦った医者は仕方なく脂汗を拭いながら患者の腸にカメラを入れて、これまた油汗を流して痛がる患者を抑えてこねくり回した。院内に響く患者の悲鳴「ぎゃ~~~!!!」が、どこにも病巣が見つからない。開いた腹の口が塞がらない。どうにもこうにも閉まらない結果と合いなりました。そんなんで、ふ~ふ~の体で退院となった患者ですが、体調は依然と思わしくないのです。ワタシが電話でその患者からの嘆きを聴いたのはおよそ一年前。委細を鑑みてどうせ医者にさじを投げられたんなら、そんな医者からもらった薬なんか「やめてみたら・・・」そっと云った。そうです。患者はワタシの年老いた母です。どうにも山ほどの薬が怪しく思えたのでした。母はワタシの言い草に不信を抱いたのですがどうにも症状が芳しく無いので、泣く泣くしばし薬を遮断したのでした。その後肺がんの術後の半年の検診に普段は行く事がない病院へ行き、それまでの体調不良を担当医に訴えたそうな。どうやら担当医は名医だったようです。おもむろに「これは栄養失調かもね。う~~ん。消化の良い美味しい物を食べて養生しなさい・・・」とだけ云った。あれから一年、この間会った母は見違えるように元気になり、まだまだ長生きしそうです。「合わない薬は毒になる・・・」「医者選ぶのも寿命のうちだね・・・」実感です。