2016/10/12(水)00:26
幸村誠 『 プラネテス 』…… 若者特有の怒りとは
★ 『 プラネテス 』(1999~2004) 幸村誠
(モーニングKC 全4巻)
以前、アニメ版の方について日記に書いたが、ようやく、原作漫画版の『プラネテス』を読んだところだ。
雑誌掲載時は、1話読み切りの不定期掲載だったということなので、壮大な長編を読んだ後のような感動にはやや欠けるが、1話1話がジワジワと胸に来る物語だった。
実はアニメを観てから少々時間が経過してるので、細かいところは忘れているし、それほど、アニメキャラのイメージを引きずらずに読めたのは良かったかも。
アニメは結構強烈なオリジナルキャラがいたり、原作とは微妙に設定や人物像も異なるので、多くのファンが言うように、それぞれ別物として楽しめる、という点には納得した。
そういう意味では、人にもよると思うが、初見の人は、アニメを先に観た方が、抵抗が少なくて済むかもしれない。
絵は、パッと見、ものすごく魅力的というのでもないが、非常に丁寧で無駄なコマが無い。特に、人物それぞれの苦悩、葛藤する表情が印象に残る。
少し残念なのは、自分がもっと若い頃に読んでたら、もっと共感出来たかもしれない、ということ。
登場人物の悩みや葛藤は、若さや未来を「持ってる者」、そして、誰かに「守られている者」特有のものだから。
彼ら(彼女ら)は皆、理解のある家族に恵まれ、仕事や同僚に恵まれ、才能にも恵まれている。
「何も悩むことなんかないのに」。傍から見れば、そう思える。
人は誰でも、若くて幸せな時ほど、それになかなか気づけず、怒りに満たされるものなのかもしれない。
こうした葛藤を経て若者が得るもの…、「気づくこと」そのものより、その「過程」のかけがえのなさを丁寧に描いている。
総合的に言えば、人生観を左右するほどではないが、じんわり良かったという感じだ。
例えば、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を観てる間に、登場人物の涙に「貰い泣き」すればするほど、後に余り残らないのと比べて、それほど泣けはしないけど、色々な場面が読後も暫く頭から離れない。
この「ほどほど感」が、アニメ化が成功するポイントかなと思う。
読者や視聴者を泣かせるのは意外と簡単だと思うが、この作者の上手いところは、むしろ、ユーモアあふれる日常的なやりとりなのではないかと思う。その辺の手腕を生かした作品をもっと読ませて欲しい。
<関連日記>
2011.9.29. 宇宙ゴミ(スペースデブリ)と言えば、やっぱり、『 プラネテス 』
【送料無料】プラネテス(1)
価格:680円(税込、送料別)
【送料無料】プラネテス(2)
価格:680円(税込、送料別)
【送料無料】プラネテス(3)
価格:680円(税込、送料別)
【送料無料】プラネテス(4)
価格:700円(税込、送料別)