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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 彼方から 』 ひかわきょうこ (1991~2003年作品) レンタルコミックにて読了 (文庫版 全7巻)。 ひかわきょうこさんの漫画は若い頃、わりと好きで、『荒野の天使ども』 や 『時間をとめて待っていて』 など、コミックスまで買って愛読していた。 とにかく、絵柄が可愛い。 少女は華奢で女性らしく、相手役の男性は長身でカッコいい。 性格も、ヒロインは、ちょっと気が強いけど、裏表のない素直ないい子で、相手男性は、奥手だが、強くてヒロインを守ってくれる不言実行タイプ。 恋愛ものが好きな少女が読むには、欠点の少ない作風だったように思う。 久しぶりに読んだひかわさんの作品 『彼方から』 は、ひかわ作品としては異色のファンタジーもの。 設定としては、よくある 「普通の少女が異世界にスリップし、その世界にただならぬ影響を与える」 …的な話だ。 で、感想としては、 「まあまあ」 くらいですかね~。 ひかわさんの絵柄は、余りに可愛らしいので、 「典型的少女漫画の絵」 で片付ける人もいるだろうが、実は、ものすごくデッサン力のある人だ。 この作品も、かなりバトルアクションが多く、複数の人物が飛び回りながら、複雑に格闘するシーンが多々あるのだが、正面からだけでなく上方から下方から、あらゆる角度から描かれたものでも、違和感がなく、 「さま」 になっている。 『ヨルムンガンド』 の感想で、アクションシーンになると、効果線やトーンなどによる 「ごまかし」 が目立つと書いたが、そういう 「ごまかし」 が一切無いのだ。 どんなポーズも、くっきりした線ではっきりと描かれ、独立したイラストとしても通用しそうだ。 もちろん、漫画的なデフォルメはされていて、よくよく検証すれば、脚が長すぎるとか、現実には有り得ないポーズとかはあるだろう。 だから、余計に 「上手い」 のだと思う。 実際の写真などを写しとったわけではなく、作者の頭の中で消化してポーズを描いているのが分かるからだ。 ただ、この 「絵の上手さ」 が、こうしたアクションものには必ずしも、良いばかりではないのだな、とも、今回思った。 作者本人が裏話として紹介していたが、作画については、仕上げの 「トーン貼り」 のみ、人に手伝ってもらう位で、下書き、ペン入れは、全て自分一人でやっているのだそうだ。 性格的に人に頼めないのだろうが、ひかわさんがアシスタントを上手く使える漫画家だったら、もう少し、背景や効果線に工夫が出来て、もっと 「厚み」 のある作風になったのではないだろうか。 とにかく、人物にしても背景にしても、均一な線で無駄がなさすぎるので、 「上手いけど、何か物足りない」 のだ。 正直なところ、ひかわさんの場合、余り無理せず、身近な題材のラブコメ描いてる方が、作風に合っているかな …というのが、率直な感想だ。 ストーリー進行も、いささか説明的で、感情を揺さぶられるようなものが少ない。 少女漫画のセオリーどおりの 「魅力的なヒロインと理想的な相手役」 はまあ描けていると思うが、余りに正統派すぎて、「色気」 に欠けるし、それ以外の悪役や脇役の登場人物も、感情移入できるほど、深くは描ききれていない。 『7SEEDS』 (田村由美) の後に読んだだけに、その辺の 「粗」が、やたら、気になってしまった。 まあ、小中学生が読むには良いかもしれないが、一言で言うと、やはり、色んな意味で、ちょっと 「物足りない」 というのが、ピッタリくる。 <関連日記> 2012.9.11. 原作読むと、アニメも もっと楽しめるかも ・・・ 高橋慶太郎 『 ヨルムンガンド 』 2012.9.19. 登場人物すべてが愛おしい ・・・ 田村由美 『 7 SEEDS 』
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全然、共感できません。
7SEEDSに比べると…って言うけれど、テイストもテーマもまったく違う作品を比べて何か意味がありますか? ひかわきょうこさんの作風は確かにライトですが、登場人物の心情を丁寧に追っていて、そこが私にとっては深味に感じられます。 …作品は作者にだけ技量を問われるものではなく、読み手の能力によっても、受け取れるものが変わるようですね。 (2019年06月17日 19時35分46秒) |