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2014年12月10日
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カテゴリ:漫画・アニメ

★ 『 CROSS and CRIME 』 葉月京 (2009~14年)



電子書籍無料版 及びレンタルコミックにて、全12巻 読了。


この作品の感想を書くのは、ちょっと迷った。 少なくとも、5、6巻位までは、「これはちょっとブログには書けないなー」 と思いながら読んでいた。

元々は、作者が成年漫画誌向けに描いた 『セックスクライム』という作品を、青年誌 (ヤングチャンピオン) でリメイクした作品 …というだけあって、迂闊に人に薦める気にはなれないほど性描写が過激なのだ。


はっきり言って、無料版で読み始めた段階では、「陵辱もののAVかよ、ヤレヤレ」 …という印象だったのだが、1巻読み終えたら、若干、悲恋的な要素が見えたのが気になって続きを借りたところ、終盤はかなりダレたものの全体的にはそこそこ読める内容だった。

トータルで言うと、「被虐待児の心的問題」 や 「愛と赦し」みたいな、萩尾望都的なテーマを狙っちゃった (?) 感じで、案外深淵なストーリーと言えなくはない。 少なくとも、作者はそのつもりだっただろう。


だが、12巻のあとがきで、「成年漫画に掲載した原作は、“レディースコミック向けだ” と、男性のウケは悪かった」と書かれている通り、青年誌向けにリライトしても尚、まさに、読者ターゲットをどこに置いているのかが、よく分からない作品になってしまっている。

恐らく、えげつないセックスシーンに食いついた男性読者にとっては、後半の昼ドラのような劇場的展開や 「純愛のなんたるか」 を説く内容は退屈だろうし、逆にメロドラマ好きの 一般的な女性読者には、いかにも男性読者向けの巨乳過ぎるヒロインとか、加害者目線のレイプシーンは不快の域だろう。


確かに、萩尾望都は 『残酷な神が支配する』 (1992~2001年)で、 『トーマの心臓』 (1974年) では描き切れなかった被虐待の実態をとことん描いて評価を得たし、少なからぬ文学作家達も性暴力をあからさまに書くのが大好きらしく、実際、花村萬月 (エロスやバイオレンスを好む芥川賞作家)あたりが似たようなストーリーを書けば、純文学として賞賛されるかもしれない。


そんな、作者の意欲は理解できるのだが、Amazon のレビューも辛口評価が多いことから分かる通り、そもそも、萌えアニメっぽい絵柄とエロで釣っておいて、しかも、元来 「女性作家による女性向けの恋愛漫画」 に辛辣な青年誌の読者に向けて、 「複雑怪奇な純愛の心理」 を説こうったって 空回りするのは目に見えている。

いくら、作者が結末に純文学的なものを見据えていても、表現力が未熟だったり、読み手に伝わりにくかったり、ハナから読み手がそれを求めていなかったり、どころか、下品な描写にゲンナリして最後まで読んでくれなければ、何にもならん …つうことだ。


ヒロインは多分、 『トーマの心臓』 におけるエーリク (赦しの象徴) のような役回りなのだろうが、そのバックボーンや成長の過程描写が弱い中での 「聖母化」には、ちょっと説得力が無さすぎた。

結果、 「鈍感で淫乱なヒロインが、まともな彼氏を捨ててイケメン 変態犯罪者に乗り換える話」 みたいなレビューまでされてしまっているのは、さすがに作者が気の毒だとは思うが。


ただ、必要性の薄いエロシーンの多さだけでなく、後半は無駄にB級メロドラマ展開の引き延ばしもあったりして、正直、 「ただのポルノ」 と評価する読者がいるのも無理からぬところだと思う。


どぎついエロシーンにこだわる作風にも拘わらず、成人漫画誌での原作すら 男性読者に不評だったという時点で、いっそ、レディコミ向けにリメイクすれば良かったのに。ただし、その前に、もう少し一般的女性読者にウケる性描写を勉強する必要があると思うが。





<関連日記>
2012.3.29. 天才は一日にしてならず・・・ 萩尾望都 『 マンガのあなた・SFのわたし 』













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最終更新日  2016年10月10日 23時24分04秒
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