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2017年03月15日
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カテゴリ:漫画・アニメ

★ 『 花に染む 』 くらもちふさこ (2010~16年)



電子書籍無料版およびレンタルにて、全8巻読了。


群像劇作品 『駅から5分』 (2005年~) の、一部の登場人物にフォーカスして描かれたサブストーリー。

神社の宮司の息子の過酷な生い立ちと再起の過程を、「親友」 であるヒロインとの関係を絡めて描いている。


神道の儀式から学校の部活まで 「弓道」 の描写を多く取り入れながら、肉親や男女間の愛憎を浮き彫りにしていくドラマ性は、ピアノのコンクール競争を軸に描かれた初期の代表作、 『いつもポケットにショパン』 (1980~81年) を彷彿とさせる。


くらもちふさこに関しては再三ここで書いたが、いつまでも感性や表現のセンスが衰えず素晴らしいと思う反面、昔に比べて絵柄が崩れてしまったこと、ストーリーよりもエピソードや心理描写重視になってしまったことに付いて行けず、余り読まなくなった時期があった。


キャラデザに関しては、相変わらず美醜の差が激しく、少女に関しては、可愛い設定でも瞳を強調し過ぎて 余り可愛く感じないが、美少年設定の主人公については、少し美麗さが戻ってきたような気がする。 昔のように、男らしいカッコよさは余り感じないが、一見、雑に見えて線は非常に綺麗だし、なんか 「一周まわって良く見えてきた」 …という感じ。


エピソードや心理描写が昔より丁寧になった分、若干もたつくところもあるが (昔のくらもちさんなら、数巻~長くても5巻以内にまとめていただろう)、やっぱり抜群に上手いとは思う。

恐らく、読み返せば新たな発見があるだろう。 「結末が分かりにくい」 というレビューも目立つが、読み返すと色々細かい伏線がわかって、感動が増すのだろうと思う。


以前、くらもちさんの描く 「親子関係がリアル」 だと書いたことがあったが、やはり、鋭い視点での人物描写は秀逸だ。


リアルと言っても、必ずしも 「現実にいる(ある)」 と言うわけではない。 『重版出来』 の感想でも述べたが、フィクション作品に対して 「(現実の出版業界に) こんな人はいない」 などと言うのは、殆ど 「言い掛かり」 だと思う。

「現実にいるかいないか」 と言われれば、昔から、くらもちふさこが描くような 「不言実行タイプのイケメン高校生」 など、ほぼ 「現実にはいない」 し、冷静に考えれば、常に恋愛中心の世界観も、不自然に感じるところはある。


ただ、凡庸な漫画作品に比べて現実感があるのは、人間関係に 「無理にけりをつけない」 ところだ。

少年少女向けの漫画では、何かとメインキャラクターの 「長所」 や 「成長」 を強調し、取り巻く人間関係を整理し、白黒の解決をつけたがる。 「性悪」 な者は改心させられるか排除されるか、いずれにせよ 主人公中心主義の世界で、何らかの矯正や報いを受ける。


しかし、現実には、殆どの人間関係は、特に誰かが反省することもないままに、いつの間にか改善されていたり、何の解決もなくウヤムヤになったりすることの方が圧倒的に多いだろう。


『おしゃべり階段』 の体育教師、 『いつもポケットにショパン』 の女友達、 『いろはにこんぺいと』 の想い人の母親、 『天然コケッコー』 の父娘関係…。

悪人まではいかないが、いわゆる 「ヤな感じ」 なサブキャラが、くらもち作品には沢山出てくるが、かと言ってメインキャラ自身も 性格に全く欠点がないというわけではなく、淡々と些細で日常的な葛藤が描かれ、多くはすっきり解決もせずに作品は完結する。


この作品については、ヒロインだけは珍しく、かなり客観的で自制的だが、他のキャラクターは (エゴイストとまでは言わないが) 我が道を往くタイプばかりで、漫画的な 「利他的ないい子」 は余り出てこない。

イラつくキャラには終始イラつかされるし、作中では真相や行く末が分からないままの問題や人間関係もある。 恋愛の結末 (告白シーン) だけは、割合ハッキリと、 「オトコの見せ場」 として描く傾向のくらもちさんにしては、それすら、ちょっと分かりにくかったりする。


『駅から5分』 は、無関係に見える人物やエピソードに何らかの繋がりがあった。 エピソードが無限に繋がっていくが如く、人間関係にも人生ストーリーにもハッキリとした 「終止符」 は無いということを、夢物語の恋愛漫画の中でも気付かせてくれるのが、くらもち作品の特徴だと思う。




<関連日記>
2012.1.26. くらもちふさこ が描く、リアルな親子関係

2012.7.11. くらもちふさこ 『 駅から5分 』…… 天性のセンスが冴える

2012.10.15. くらもちふさこ 『 海の天辺 』…… くらもちふさこ が描く 「禁断の愛」

2012.12.4. くらもちふさこ 『 おしゃべり階段 』…… 「嫌われる」 のも大切な経験

2017.2.16. 松田奈緒子 『 重版出来! 』 ・・・ いかに嘘や夢を織り交ぜるかが 職業漫画の肝


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最終更新日  2017年03月15日 22時39分32秒
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