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さすらいの天才不良文学中年

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悪魔の投機術入門(第6回)

悪魔の投機術入門(第6回)


本稿も今回で6回目を迎えた。取りあえず、ここらで一区切りと考え、「大損するタイプの人」を紹介してひとまず最終回としたい。


1. 大損するタイプの人5か条                  

       
第1条 人の話しを鵜呑みにする人

ウオール街の有名なことわざに「噂で買って、事実で売れ」というのがある。株など全く知らない素人までが買い始めたら、手仕舞いにした方が良いということである。

ところが、SEC(米国証券取引委員会)には「予想や噂で買うな、事実だけで買え」と全く反対の忠告がある(SEC注意事項第7条)。

しかし、本当にこの忠告どおりにしていたら、損をするのは目に見えている。人の話しを鵜呑みにしてはいけない。


第2条 インクで指先が汚れていない人

かつて複式簿記はベネチアで始まったのだが、そのベネチアが繁栄した理由に、複式簿記を国家予算に適用したことと、中世の商人たちが「まともな人は、簿記のインクで指先が汚れていなければならない」という掟を忠実に守ったこととがある。

特にこの商人の戒めである「インクで指先を汚せ」は、現代の投機にあっても十分あてはまる格言である(今でも相場師はチャート(罫線)を自分で毎日ひいている)。パソコンでチャートは簡単にひける時代になったが、自分の手に覚えさせることが大切ということであろう。世の中に「楽をして儲ける」といううまい話しは、今も昔もそうあるものではない。


第3条 歴史に学べない人

今から15年前のバブル全盛のころ(なんせ89年末には、日経平均は38,915円まで上昇した)、巷では「それ行けドンドン派」が主流であり、「この道はいつか来た道派(バブル認識派)」は全く少数派であった。

当時、日本人のほとんどが頭脳に変調を来たしており(おいらもその一人であったが)、みんなユーフォリア(陶酔的熱病)に酔いしれていたのである。
しかし、当時、おいらの周りにもこの事態は異常だと見抜き、冷静に手仕舞いをした人がいたのも事実である。やはり自分の経験だけに学んではならない。歴史に学ぶのだ。


第4条 信念を持っている人

巷ではおいらの敬愛する藤巻健史氏(伝説のカリスマ・ディーラー。元モルガン東京支店長)が円安救国論を展開しているが、その意に反してここ数年緩やかな円高基調が続いている。

藤巻さんは、筋金入りの円安論者でありかつ強烈な信念を持っている人だから、円安投資(すなわち外貨建て投資)への姿勢を今後も恐らくは変えまい。

しかし、予言が外れ続ければ、藤巻教も地に落ち(?)、「信念を持っている人は、別の言葉では、融通の利かない人だ」と言われる日が来ても仕方がないであろう。


第5条 自信家の人

ポーカー・ゲームで自信家の手がフル・ハウスで、対決する相手がフォー・カードの場合、自信家は最後まで賭けきり、一文無しになるケースが多い。ゲームは市場で行なわれており、観念の世界で行なわれているのではないからだ。

前条の「信念を持っている人」は心の問題であるが、「自信家の自信」は体験に基づくため、自信家の方が信念を持つ人より性質が悪い。

さて、信念も自信も大損の素だ。しかし、同時に本稿(第4回)でもお話ししたように、投機はその人の集大成の表れであるのもまた事実である。したがって、逆に信念や自信がなくても困るところが、この投機の難しいところである。


2.投機の神様ジョージ・ソロスの教え                 

    
投機の神様ジョージ・ソロスは、1983年まではチャ-トを中心としたテクニカル分析を得意としていた。

これは市場観察法と呼ばれ、江戸時代の米相場から連綿と続く罫線分析法と同じ考え方である。欧米には「グランヴィルの法則」、本邦には「一目均衡の法則、本間宗久口伝、坂田五法、新値三段棒」等のチャート分析法があるが、それらの原理は、いずれも移動平均法と変らない。いずれも事実(市場)と理性(科学的分析)に対する信頼に基づいている。

ただし、ソロスの偉いところは、必ず最後に「私のやることに惑わされてはならない」「私のやるとおりにやっても成功するとは限らない」と結んでいるところである。おいらもソロスにならって、「悪魔の投機術入門を信用してはならない」で幕を下ろそう。


(終わりに)
連載にあたって、古今東西の運用や投資に関する文献に再び接することが出来、おいらとしては大変楽しい思いをさせて貰いました。最後に、拙文に多数の激励をいただき、また、半年という長期に渡りお付き合いいただいたことに深謝申し上げます。




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