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さすらいの天才不良文学中年

さすらいの天才不良文学中年

ブルゴーニュは運べない 年代物ワイン

ブルゴーニュは運べない

 本日はボジョレー・ヌーボーの解禁日なので、ワインにまつわる話しを一つ。

 開高健はその著「最後の晩餐」で、ブルゴーニュ最高級のワイン「ロマネ・コンティ」を飲みながら、料理研究科の辻静雄氏と対談している。その中で「ブルーゴーニュは運べない」という面白いくだりがある(フランスワイン、いや世界のワインの最高峰は、ボルドー(フランス西部の地名)か、ブルゴーニュ(フランス東部の地名)とも言われ、あのボジョレーもブルゴーニュ南部の地名のことである。写真は、ブルゴーニュの白の代表格でもあるシャブリ)。


シャブリ


 この中で二人は、ブルゴーニュは動揺に弱く、揺さぶられると味が落ちるということを話し合っている。特に、船便で輸送するとインド洋の波で目をさまし、25度以上の温度でも変質してしまうと、開高健はたびたび書いている。実は30年以上前は、この言葉は常套句であったらしい(過去のゴルゴ13の中で、ゴルゴが最高級ワインを揺さぶるだけのために狙撃し味を変えるというシーンがあるが、これも同じ理屈)。したがって、辻氏はブルゴーニュを日本で飲む場合、わざわざフランスから飛行機で持って帰るという。

(辻)「ことにブルゴーニュを買うと、フランスから日本まので道中と日本へ上陸して以後お酒屋さんでどんな扱いをうけたか、それがわからないし、ひどいもんだから、ある年号のあるブルゴーニュが東京で飲むのとパリで飲むのとひどく味が違うことがあるんです。」
(開高)「氏も育ちもいい箱入り娘がヒッピー旅行したためにまるでワヤになってしまうことがときどきあるやろ。あれや」(「最後の晩餐」より)

 このため、ボジョレー・ヌーボーまで運べないということに一時期までなっていたらしい。

併し、この問題は、乳酸(マロラクティック)発酵のメカニズムが解明されて以来、もはや解決されることになった。すなわち、昔のワインは出荷した後も、揺さぶりや高温によって再び乳酸発酵する(泡立つ)ことがあったのだが、今ではこれを抑えることに成功し、既に輸送は大きな問題とはされていない。

 以上から、飛行機便のみならず、船便で運ばれるボジョレー・ヌーボーも今日の日本でおいしく飲めるようになったのである。開高健が生きていれば、また一くさり云いそうな話題である。ジャンジャン!



絶品の白ワイン

 来客があったので珍しいものをと思い、秘蔵の白ワインを出した。


花見で一杯


「シャブリ グラン クリュ ムートンヌ(1988年)」白ワインである。

 今から23年前のワインである。

 高かったかと問われれば、今から10年以上前に一万円で購入したワインである。このような高価なワインを普通は買わない。

 おいらが会社からの帰路、自宅でホームパーティを開くために安価のワインを購入したのである。自宅近くの酒屋である。花とかも買っていたので、手に持つものが多かったからだかろうか、その店で勘定をするときに財布を落としたのに気が付かなかったのである。

 自宅に戻って背広を脱ぎ、中のものを出すと財布がない。慌てて酒屋に電話したら、預かっていますという。

 そのお礼にと、その店で一番高いワインを買ったという次第である。

 さて、そのワイン、拙宅にはワインセラーがないので冷所で横向きにして保存しておいたのだが、最近、手に取ってみると琥珀色に変色していることに気付いた。

 おいらの敬愛する人に、時間が経った年季物で、琥珀色になったワインが滅法美味かったと云う話しを聞いたことを思い出した。

 ネットで変色しているワインのことを検索すると、腐っているという説と、美味しいという説とがあり、結局は飲んでみなければ分からないというものであった。


 結論。

 客人と二人で飲んだ。

 これが旨かった。味がまろやかになっており、舌を突き刺さない。口当たりが良く、とろけるような味である。だからと云って甘くはない。そこのところの説明が難しいのだが、透明感のある味とでも云おうか。喉越しも申し分ない。

 二人であっという間に一本が空いてしまった。

 良き酒、良き友、良い話題。

 年代物のワインが旨いという理由が分かったような気がする。そういう一本であった。




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