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さすらいの天才不良文学中年

さすらいの天才不良文学中年

老人を食い物にする有料老人ホーム

老人を食い物にする有料老人ホーム(第1回)

 本日から4回に渡って、ミニコミ誌「情報の缶詰」2月号と3月号に掲載されたおいらのエセー「老人を食い物にする有料老人ホーム」を転載します。


美酒


<高齢者とは>

 高齢者とは、何歳からを云うのだろうか。

 一つの基準は、年金受給の始まる65歳からである。その65歳以上の高齢者が8年後の2015年には4人に1人、30年には3人に1人となる。

 さらに、75歳以上を「超高齢者」と呼ぶ(文芸春秋2月号)ことにしよう。この場合、現時点では、「65歳から74歳までの通常高齢者」が「75歳以上の超高齢者」を上回っているのだが、11年後の2018年には逆転する。いよいよ日本は超高齢者ばかりの国になってしまうのだ。

 毎年、新しい年を迎えるたびに皆さんは均等に一つずつ年を取っていくのである。それで、考えられるのが、団塊世代の高齢化である。母親を介護していると、近い将来「あること」が必ず起こることが分かってくる。

 それは団塊の世代があっという間に大量のヨイヨイ軍団になって、介護を必要とする時代が来ることである。全く団塊の世代というのは始末に悪い。要介護になるのも、五月雨式ではなく、一時に、大量になるのだ。

 厚生労働省が先月中旬発表した2025年度(18年後)の要介護認定者数は、現在の1.7倍の約780万人になり、介護給付費も2.6倍の17兆円まで達するそうだ。この理由は極めて簡単で、団塊の世代が75歳以上の超高齢者になるからである。

 つまり、厚生労働省は、75歳以上の超高齢者は要介護になると考えているのである。要するに「長生きは(明らかに)リスク」で、皆、滝つぼに流れ落ちるように超高齢者の道へまっしぐらなのだ。あな恐ろしや。今でも65歳以上の通常高齢者は多いのだが、そのうち回りを見渡すと本当に超高齢者ばかりになる。しかも、要介護の老人ばかりにだ。

<3ヶ月から半年で病院は追い出される>

 では、そのとき、どうなるのか。広島の母が脳梗塞になって救急病院に運ばれた実例を述べてみよう。母は77歳まで大病をせず、元気であったが、一昨年11月突然脳梗塞で倒れた。幸い一命を取り留めたが、昨年4月の医療保険制度と老人保険制度の改悪で、病院での治療期間は最大6ヶ月となり、半年を経過するとほぼ自動的に病院を追い出されることになった(脳や心臓病の場合、6ヶ月。その他の病気は3ヶ月が上限)。

 困るのは、リハビリが続けられないことであった。しかし、病院の対応は問答無用である。母も入院後、7ヶ月を経過した6月中旬、遂に追い出された(1ヶ月間入院が延びたのは、当方の粘り勝ちである)。幸い、母の場合は、病院の隣地に老人保健施設が併設されていたので、退院後はそこに入所することが出来た。これは、ラッキーであるとしか云いようがない。

 老人保健施設は、病院と老人ホームの中間として位置付けられる施設である。したがって、不十分ながらもリハビリは可能である(ただし、病院のリハビリと比較すると格段にレベルが落ちる)。しかし、入所後、そこも最大半年で追い出されることが判明する。入所早々から、半年後の退所予定を迫られたのである。追い出された後は、自宅に引き取るか、次に述べる老人ホームに入るしかない。

 ところで、自宅に引き取るということは、在宅介護になると云うことである。しかし、厚生労働省の調査によれば、超高齢者の在宅介護を担う「65歳以上の高齢介護者」、いわゆる老老介護の約3割が「死んでしまいたい」と感じることがあるという。こうなると、介護される方も介護する方も共に生き地獄としか云いようがない。

 そうだとすると、残された道は老人ホームに入るしかない。高齢者になる前に自ら進んで有料老人ホームを探すと云う理由の一つに、子供たちに迷惑はかけたくないというのがあるが、日本の福祉は貧弱でまったく情けないとしか云いようがない。


老人を食い物にする有料老人ホーム(第2回)

<圧倒的に少ない老人ホーム>

 ところが、その老人ホームの数が圧倒的に少ない。

 公立の特別養護老人ホーム(特養)は、全国に約5,300施設、入所定員は約37万床であるが、都会にはほとんどない。しかも、入所待ちの期間は最低でも数年と、絶望的な年数である。一方、有料老人ホームは、わずかに約1,600施設、居室数は約9万3,000室しかない。


滝田ゆう


 ここからは、有料老人ホームの悪口を書く。有料老人ホームは2000年の介護保険導入時には約500施設だったが、それでもその後1,600施設と3倍に急増した。

 何故、急増したのだろうか。老人が増えるのを見越して、国が福祉に力を入れたからだろうか。いや、実情は全く違うのである。企業が老人を食い物に出来ると分かったからである。有料老人ホームに特養並みの職員を配置すれば、介護保険の「特定施設入居者生活保護」の指定を受け、老人ホームの運営業者に介護報酬が入るからである。

 この介護報酬がおいしいのである。要介護指定を受ければ、入居者一人当たり毎月20万円程度の報酬が都道府県から貰える。勿論、この報酬の原資はわれわれが払った介護保険料である。

 さらに、入居者の食費や管理費などの名目で入居者本人から毎月15万円以上を徴収することが出来、食事やその他の費用でも儲けるのである。つまり、業者は、合計すると毎月合計35万円の入居者数分を確実に収入出来るのである。

 止(とど)めとして、入居一時金を取れば、数百万から数千万円の現金収入が見込まれる。早い話しが、今や老人は「確実に計算出来るビジネス」の餌食となったのである。

 しかし、ビジネスである以上、金儲けを狙って新規参入する者が跡を絶たなくても文句は云えない。ここ数年、新規参入企業が巨大資金を投入し、有料老人ホームの開設競争に突っ走ったり、介護事業に進出した企業が跡を絶たないという理由は皆カネが理由である。これが、介護ミニ・バブルである。

 ところが、膨張し続ける介護保険費は、給付財源の不足を生み出すことになった。危機感を募らせた厚生労働省と都道府県は、慌てて今年度から有料老人ホームの新設にブレーキをかけることにしたのである。再び(役所の好きな)総量規制である。

 しかし、この動きを察知した新規参入業者が駆け込みで有料老人ホームの開設競争に突っ走ったのは云うまでもない(続く)。


老人を食い物にする有料老人ホーム(第3回)

 前回で有料老人ホームの悪口を書いた。有料老人ホームへの参入の動機が、皆老人を食い物にするビジネスとして考えているだからだ。


ビーナス


 冷静に考えれば分かることだが、有料老人ホームが増えれば、入居者が増える。入居者が増えれば、介護報酬が増える。介護報酬が増えれば、介護保険の収支は悪化する。

 つまり、医療界の伝説であった「入院ベッドが増える==>患者が増える==>医療費が増大する==>医療制度は破綻する」と同じ構図の繰り返しなのである。健康保険の自己負担は、何時の間にか1割負担から3割負担になり、健康保険料もバカ高くなった。介護保険が今後同じ道を歩むようになったとしても、何の不思議もない。

<入居一時金の欺瞞>

 入居に伴い、入居一時金なるものが必要になる。しかし、介護保険から入居者一人につき毎月20万円程度が支給され、本人からも賃貸料や管理費、食費を毎月15万円以上取るわけで、本来ならその金額で十分やっていけるはずである。

 したがって、なぜ、数百万円から数千万円の一時金が必要になるか分からない。これでは、あたかも賃貸契約の礼金である。それならそれで、賃貸料の1か月分で十分ではないか。

 今、手元にある都内某「介護付有料老人ホーム」のパンフレットを見ると、この施設の場合、「入居契約完了日の午後12時を持って、入居一時金の20%が償却される」と書いてある。

 え、入った途端に、もう2割が返ってこないのかよ~。続いて「残りの80%を5年(60ヶ月)かけて翌月から均等に償却していく」とある。

 つまり、1,000万円の入居一時金を支払ったら、入居した途端にそれが800万円に目減りし、翌月から、13万3千円強が毎月なくなっていく計算である。実質的に毎月支払う金額がそれだけ上乗せされているという勘定になる。

 返還問題もある。介護のサービスがパンフレットの内容と異なっているので、退去したところ、入居一時金が返還されなかったり、入居後短期間で入居者が死亡したため、返還を求めたが一円も戻ってこなかったという苦情が後を絶たない。

 そこで、昨年7月、厚生労働省がやっと重い腰を上げ、「入居金に関する設置指導指針」を作成した。それによれば、「入居一時金は入居後、90日以内なら全額返還すること」となっているが、あくまでも指針なので守られていないケースが多い。上記パンフレットの施設も同様で、恐らくこの施設は一時が万事であろう。入居しない方が得策である(続く)。


老人を食い物にする有料老人ホーム(第4回)

<入居後のトラブル>

 介護サービスの内容が当初の説明と違うとして、入居後のトラブルも同様に多い。

 週3回の入浴が突然1回になったり(足立区の某施設では2週間に1回になったという)、看護士やヘルパーの数が少ないため、介護サービスが悪く、床ずれになったりするという苦情もある。


コスモス


 これは、専らヘルパーなどのスタッフが低賃金で長時間労働を余儀なくされているためである。彼らはより良い条件のところがあれば転職するので、残されたスタッフにしわ寄せが行くという悪循環が原因である。

 介護保険法では入居者の3人に職員1人の配置を義務付けているが、これを満たしていなければ、介護報酬の過大請求となる(請求額の3割返還をしなければならない)。逆に云えば、この過大請求が日常化しており、訪問介護大手のKでさえその疑いがあるとして、昨年末に東京都から一世調査を受けたのは記憶に新しい。

 また、入居者をヒモで縛るなどの身体拘束や、利用料が当初の金額の倍以上に値上げされたというトラブル、食事が冷凍食品や缶詰ばかりという情けない話しもある。

 さらに、認知症になったので契約時よりはるかに狭い認知症専用の介護棟や雑居房に移されたなどの「入居者いじめ」もある。

<野放しの業者と老人ホーム=そもそも運営主体の金儲け>

 本来は福祉のはずだが、金儲けになるから参入している業者である。だから。売り方もマンションの販売方法と同じである。「残りはもう1室だけ。今が最後のチャンス」と売り込みをするのである。勿論、空き室がまだ残っているのに、最初からこの話法である。

 これらの強引な経営手法は、いずれ破綻した場合にどうなるのだろう。放漫経営==>倒産==>入居者が路頭に迷うというパターンが予想されるのだが、誰がその責任を最終的に取るのだろうか。国は総量規制を始めたが、悪質な老人ホームをチェックする体制が十分とはいえないのが現状である。

 そもそも、国(厚生労働省の担当官)も社団法人全国有料老人ホーム協会も老人ホームの正確な数さえ把握出来ていない。05年7月の国民生活センター相談調査部の調べで1546施設と分かっているのは、老人福祉法に基づき自治体に届出がなされたからに過ぎない。

 したがって、届出されていない施設(無登録施設)は、野放し状態であり、実態調査さえ行われていない。しかも、「マル適マーク」のような制度も存在しない。一部の調べによると、無登録施設数は、全国で登録施設の倍の約3000あると云われている。都道府県は登録業者には立ち入り検査や指導・改善が出来るが、無登録業者には何の力も及ばない。

 これでは、我々がその老人ホームが登録されているのか、いないのか、さらに登録されている場合でも安心出来るのか、出来ないのかということが全く分からない。つまり、老人ホームはやりたい放題になっているのが現状なのである。

<それでも施設に入るなら>

 さて、それでも施設にお世話にならなければならないときが来るとしたら、そのときはどうするか。

 答えは一つ。入るには経営のしっかりしたところを選ぶしかない。大手の経営かどうか。全国有料老人ホーム協会に加盟しているかどうか。施設は登録されているかどうか。入居条件は厚生労働省の定める有料老人ホーム設置運営指導指針(HPで閲覧可能)に沿っているかどうか。残念ながら、現在はそれしか選ぶ方法がない。

 しかし、それでも都会で全うな有料老人ホームに入居するには、夫婦二人で1億円かかると覚悟した方が良い(文芸春秋2月号)。

 そうなると、我々庶民には全財産を処分しても安心出来る施設には入れないということである。だが、それでも有料老人ホームと名の付くところに入れる人はまだ勝ち組だ。今後はそこにも入れない人たちが大半の負け組ばかりになるのだろう。

 とにかく「自分のことは自分で守るしかない」時代になったのである。


あな恐ろしや、有料高齢者住宅(前編)

 本日と明日は、(株)関ネットワークスのミニコミ紙「情報の缶詰」(2007年9月号)掲載の「あな恐ろしや、有料高齢者住宅」をお届けします。


風景


あな恐ろしや、有料高齢者住宅(前編)

1.母の場合

 入院中の母が、7月2日、病院から追い出された。退院しても自宅に戻れるわけではない。介添えと車椅子がなければ、一人では生きてはいけないからである。幸い、病院は隣接地に
「老人保健施設」を有している。母は、その老健施設に入所することができた。

 これまでにも何回かこのコラムで母のことは書いているが、少し「おさらい」をしておく。

 広島に一人で住んでいた母は、一昨年脳梗塞で倒れ、救急車で病院に搬送された。搬送先は、広島では1,2を争う脳外科専門の救急病院であり、一命を取りとめることができた。当初は快癒したとしても寝たきりになることが心配されたが、リハビリの結果、母は車椅子での生活まで回復した。要介護3の認定である。

 さて、ここから現在の医療制度の問題点が露呈する。

 現在の病院は何時までも入院できるわけではない。リハビリすれば良くなると分かっていても、入院の期間制限が設けられているのだ。相次ぐ医療費の高騰から、厚生労働省は3ヶ月を上限と定めたのである(脳や心臓疾患は半年まで)。

 そうなると、高齢者であったとしても、3ヵ月を経過すれば、路頭に追い出されるのである。病院は慈善事業ではない。期間を超えて入院患者を入所させておくと、診療報酬が得られず、倒産する恐れがあるのである。畢竟、入院患者は次の入所施設を考えておかなければ、夜も眠れないことになる。

 そこで、老人ホーム(最近は老人ホームの名称を嫌って、「高齢者住宅」と呼ぶところもある)の出番となるわけだが、現在は、老人ホームと病院の中間の施設として、「老人保健施設」がある。病院はリハビリ施設が充実している。それに対し、老人ホームでのリハビリはほとんど期待できない。この老健施設はいわばその中間形態であり、リハビリ施設を有している。

 では、この老健施設は、終(つい)の住処とできるのか。残念ながら、それはできない。病院と老人ホームのつなぎであるため、ここも概ね半年で退所させられるのである。

 したがって、入所と同時に、半年後の生活設計を尋ねられ、退所後は自宅に引き取るか、老人ホームに入居するのかを迫られるのである。

 これが現在の日本の医療制度のあらましであり、これが老齢者への仕打ちなのである。
 母の場合は、上のケースでいうと、病院を退院後、老人保健施設に入所後、脳梗塞が再発したため、「脳梗塞発症→入院→退院後、老人保健施設に入所→そこで脳梗塞の再発→再び入院→今回再び老人保健施設に入所」というパターンとなった。


2.老人ホーム探し

 したがって、母もこの老人保健施設の退所後は、老人ホームのお世話になるしかないと考えている。

 では、老人ホームの現状はどうなっているのだろうか。

 老人ホームは、大きく分けて、公営の老人ホーム(特別養護老人ホーム=特養)と有料高齢者住宅に分けられる。
 また、もし入所するとなると、入所時に、本人が健康の場合と、要介護の場合とに分けられる。

 老人ホームへの入り方は、結局この二つのマトリックス(組合せ)となるわけだが、健康のときは有料高齢者住宅、要介護で入所する場合は特別養護老人ホームか介護付き有料高齢者住宅、というケースになるのである。

 ここで、事実を述べれば、老人ホームの数は、介護付き有料高齢者住宅、特別養護老人ホームともに全国的に圧倒的に少ない。
 しかも、数が少ない上に、特別養護老人ホームに加入するためには、数年待ちというのがザラである。何せ、特養に欠員で入所できるためは、入所している人がお亡くなりになるしかないというのが現状だからだ。

 そこで、健康であろうとなかろうと、非常事態になれば、介護付き高齢者住宅を探そうということにならざるを得ない。(続く)


あな恐ろしや、有料高齢者住宅(後編)


3.嘘つき有料高齢者住宅


薔薇


 さて、ここからは、健康な人も入所を考える有料高齢者住宅の話しである。

 老齢になって身寄りがない。現在は健康だが、いずれ要介護になるかも知れない。そう思えば、全財産をはたいて、または、なけなしのお金を使って、介護付き有料高齢者住宅に入所しようと思うのが人間の情ではないか。

 有料高齢者住宅のパンフレットには、甘い言葉が沢山載せてある。

「完全個別ケア」、「上質で手厚い介護」、「ホテル並みの豪華な施設」、「完璧なセキュリティ」

 しかし、数千万円出して入居した高齢者住宅が嘘の塊だとしたらどうなる。

 産経新聞は7月23日から連載5回にかけて「夢を見させないで」と高齢者住宅入居者の悲惨な実態の特集を組んだ。通常はニュートラルな取り上げ方をする新聞であるが、珍しく入居者の嘆きを取り上げていた。おいらは義憤にかられて、この怒りを再掲する。

 以下は全て実話である。

「家が1軒建つほどの入居金を支払ったのは、手厚い介護を受けられると思ったからだ。しかし、スタッフの数はいても、介護技術はまるでなかった」

「ケアの手厚いホームなら認知症の母も穏やかに暮らせると期待したのだが、ほとんどのスタッフは認知症ケアの知識も経験もなく、母を放置したままだった。その母の歯は、入居前は朝晩欠かさず歯磨きをして維持していたが、入居半年で総入れ歯になった」

「病院と提携とは名ばかりだった」

「居室で介護が受けられると入居時に確かめたのに、居室での介護はなかった。受けられたサービスは週2回の簡単な掃除だけ。リハビリは半年待ってもやってもらえなかった」

「夜間の排泄時の起き上がり介助は『必要時』に行われるはずが、定時のみしか受けられなかった」

 以上のような状態から、その多くは施設に入っていながら、私費でヘルパーを雇わざるをえなくなり、その費用だけで毎月40万円かかるという。

 結局、うたい文句で合っているのは、セキュリティと高級施設というハード面のみだけである。

「まるで高級収容所。絶対に全財産を処分して入ってきてはいけない」

 読者諸兄には、これから「介護付き高齢者住宅」を利用しようと考えている人がいるかも知れない。くれぐれも高級収容所にはお気をつけて欲しいものである。

 ではどうすれば良いか。2年越しで母の介護を行っているおいらは、こう助言する。

「実際の高齢者住宅を見学し、住人の様子と介護の実際を見ること」に尽きる。


都心の高齢化社会

 高齢化社会と聞いて今更驚くこともないが、「限界集落」と聞くと今度は何かと思ってしまう。


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 65歳以上の高齢化率が5割を超えた場合、限界集落と呼ぶらしい。限界集落は山間部ではあり得ることで、高齢化率のトップは群馬県の南牧村だという。

 しかし、新宿区社会福祉協議会が調査した結果、東京都新宿区に65歳以上の住民が過半を超える都営団地が出現したことが分かったという。限界集落と判明したのは総戸数約2300戸の「戸山団地」。限界集落が都心に出現したのだ。

 山間部では限界集落になると存続が困難となり、廃村になる。都心の場合はインフラが整備されていることから、廃村の恐れはないが、高齢者の多くは一人暮らしであり、孤独死の増加が懸念されるという。

 特に、首都圏には団塊の世代が多く、団塊の世代の高齢化が進むと、都市部の至る所に限界集落が現れる可能性が指摘されている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2035年における65歳以上の老年人口の増加率(対2005年)は、首都圏で60%を超えるという。

 ある程度の高齢化を経た秋田、山形、島根、高知の各県の増加率が1けた台であるのに対し、首都圏の高齢化はこれから急速に進展すると予測されている。団塊世代が多く住んでいることが原因の一つであり、高齢化問題は深刻だ。

 また、公営住宅によっては、独り暮らしの1DKばかりが並ぶ棟もある。単身者用に偏った棟造りが独り暮らしの高齢者を増加させたのである。建物の合理性を追求した結果がこのような限界集落の出現である。今後は、家族向けの部屋と混在させるなど多様な街造りを工夫すべきであろう。

 都心に姥捨山。新たな都市問題である。




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