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さすらいの天才不良文学中年

さすらいの天才不良文学中年

共済問題は今 公益法人改革

共済問題は今(前編)

 本日と明日は、「情報の缶詰07年10月号」(関ネットワークス刊)に掲載されたおいらの「自由人 事始26」を転載します。


花


共済問題は今(前編その1)

1.無認可共済が瀕死の危機に

 平成18年4月の保険業法改正によって、「無認可共済潰し」が行われようとしている。

「情報の缶詰」の読者には、無認可共済が今絶滅の危機に瀕していることについてご存知ない方が多いと思われる。そこで、今月号はこの問題にスポットを当てることにしたい。

2.無認可共済とは

 まず、共済についてのおさらいから始めてみよう。

 そもそも共済とは、特定の職場や地域の人間が集まってお金を出し合い、集まった資金から葬式費用などを出す、互助会や頼母子講のような組織のことをいう。経済的には、保険と異なるところはない。

 では、共済と保険との差は何か。

 それは、特定の会員以外のメンバーが加入できないという「員外利用不可の原則」が共済にあることである。つまり、共済では不特定多数による保険加入が認められていない。

 加入するためには、例えば、会費を払って会員にならなければならないのである。しかし、会費とは名ばかりで、入会金を100円さえ支払えば自動的に会員資格を有するなど、即、共済加入も可能という共済がゴロゴロある。共済は本来特定会員のみを対象とするものだが、このように互助会の趣旨を逸脱しているケースが多いのも事実である。

 次に、共済の種類である。共済には、根拠法のある「制度共済」と根拠法を持たない「無認可共済」とがある。

 根拠法のある共済とは、例えば、「農業協同組合法」に基づいて設立されている「JA共済」などのことをいう。

 これに対して、ほとんどの共済は、根拠法を有しない「無認可共済」である。しかし、「無認可共済」といっても馬鹿にはできない。収入保険料が100億円に近い大手の共済も存在する。

 さて、「無認可共済」は法律上の規制がないことから、事業免許や商品審査についての審査や制約がない。保険会社に必要な最低資本金10億円も不要である。規制がないことから、共済金支払のための責任準備金を積む必要もない。

 実は、この規制がないということが共済の大きな問題点なのである。規制がないから、誰でも共済を運営できたのである。

3.あなたも共済運営の代表者になれていた

 目先の利く男が一儲けをたくらむとする。

 手っ取り早い方法は、共済の広告を地域の新聞に出すことである。例えば、「神奈川県民ペット共済」と銘打って、共済保険料年間2万円、支払共済金は最大100万円とペット共済のPRを行うのである。

 保険の募集は全て通販とし、申込みは私書箱で受け付け、保険料を振り込ませる。そうして、保険料が2千万円程度たまったら、そのままドロンしても良し、当面は営業して、保険料を使い込んでも良し、何せ規制がないのであるからやりたい放題である(明日に続く)。


共済問題は今(前編その2)

(昨日から続く)ドロンすれば詐欺罪だが、営業すれば、あなたは立派な共済の経営者である。共済金の支払などの資金繰りに窮したら、倒産させて、名前を変えて次の共済を設立すれば良いのである。交通違反反則金切符共済や、ペット共済などは、この手口が多く、詐欺まがいの共済が横行していたのである。


花


 また、太い資金を得たければ、満期返戻金付共済にすればよいのである。高度障害に限定した傷害共済として、満期返戻金は予定利率を5~10%などと高額にするのである。老人が老後のためにと貯めた資金をこれで吸い上げるのである。

 記憶に新しいところではオレンジ共済事件はこれと同類である。オレンジ共済は、共済組合内の社内預金という名目で貯蓄型の「オレンジスーパー定期(年利6~7%)」を販売、約90億円集めた後、破綻している。

4.無認可共済の末路

 しかし、世の中はお天道様がお見通しである。

 平成18年4月、この無認可共済に規制をかけようと金融庁が保険業法を改正したのである。大義名分は契約者保護。全国で1,000とも2,000とも言われる共済に規制の網をかけ、規制のない無認可共済にも保険業法を適用することにしたのである(ただし、根拠法のあるJA共済などは、お目こぼしである)。実施は、昨年の4月からであった。

 では、共済はどうされることになったのか。一言でいうと、来年の3月末までに、
1.保険会社になるか(保険料50億円以上)、
2.ミニ保険会社(少額短期保険会社)になるか、
3.廃業するか、の3つの選択肢しかないこととされたのである。

 そして、既存の無認可共済は、その3つの選択肢を取る前に、財務局に届出をし、「特定保険業者」にならなければならないことになったである。

 これを整理すると、従来の無認可共済は、まず、最寄りの財務局に出向き、「現在無認可共済をやっていますよ」と「特定保険業者」としての届出を行い(届出がなければ即廃業)、その後、来年の3月までに先ほどの保険会社、ミニ保険会社、廃業の選択を迫られているのである。

 では、何社が届出を行ったか。全国の財務局に届出を行った共済業者(特定保険業者)は389社であった。金融庁の聞取り調査では、そのうち、半分の200社程度が保険会社やミニ保険会社への移行を既に断念したという。

 それは、何故か。

 保険会社へ移行するには最低資本金が10億円、ミニ保険会社になるとしても、経理・業務・営業・査定・システム部門を持たなければ、当局が保険会社としての届出を受理してくれないからである。

 実際、今年の9月末現在で当局に認められたミニ保険会社はわずか4社のみであり、来年3月末までに届出が受理されるのは、せいぜい20社程度ではないかと云う噂もある。これが共済潰しでなくて、何であろうか。そうなったら、既存の共済の契約者はどうなるのだ。実は、これが今云われている「共済難民問題」である。来年の4月以降、共済が廃業されれば、その受け皿を今後どうするかという問題が発生するのである。

 読者諸兄よ、今、共済に加入しておられるのなら、その共済が由緒正しい共済(根拠法のある共済)なのか、無認可共済なのかをよく調べられた方が良い。共済は今、こうして潰されようとしているのである(来月号に続く)。


共済問題は今(後編)

 本日と明日は、「情報の缶詰07年11月号」(関ネットワークス刊)に掲載されたおいらの「自由人 事始27」(共済問題は今(後編))を転載します。


夕顔1


共済問題は今(後編その1)

1.共済潰しの背景と黒幕
(1)共済潰しの背景

 共済の本質とは何だろう。共済は慈善事業でも何でもない。共済の事務局と名乗っていても、事務局員には給料を払われなければならない。見た目の利益を出していないとする共済も、実態は利潤を経営者が山分けしているのかも知れない。

 しかも、規制がない。だから、考え方によっては、悪質である。もちろん中には善良なところもあるだろうが、大半はどんぶり勘定である。財務諸表を作っていない共済も多数ある。共済の理事長(トップ)が公私混同をしているという話しもある。マルチまがいの営業を行って、社会問題化した事例もある。

 これでは、共済はその運営主体(=共済)のために存在するのであり、契約者のためにあるとはいえない。契約者保護となっていない共済は、潰される運命となっても仕方がない。

(2)黒幕

 この動きを影で進めたのが、生損保ではないかという話しがある。ミステリーの常道で考えれば、「共済を潰して得をするのは誰か」である。生損保が共済の受け皿となるのであれば、生損保が得をすることになるからである。だが、果たして本当にそうか。そんな理由で役所が保険業法改正に動くのか。

 それでは、消費者団体が影で動いたのか。どうやらそうでもないらしい。おいらは、どうもこの背景には共済を巡る利権があるように思えるのだが、それはまた別の機会にゆずることしたい。

2.役所はどう考えているのか
(1)ミニ保険会社

 ミニ保険会社はこれまで5社認められた(正式には届出が受理された)と前回述べた。その事業内容(保険の種類)をみると、第1号「地震費用保険」、第2号「ペット保険」、第3号「糖尿病患者向けの生命保険」、第4、5号「火災保険」である。ここで注意して欲しいのは、第4、5号を除いて、いずれも既存の生損保が販売していない商品ばかりである。

 つまり、従来から大手の生損保が不得意とする分野に最初認可を与えたのだ。このニッチな商品を認めるという考え方は頷ける。何も共済に新たに生損保と同じ商品の認可を与える必要はないからだ。しかも、既存の生損保と同じ商品を認可するのであれば、共済の保険料が既存の保険よりも安いことから「一物二価」となる恐れもある。

 しかし、第4号と第5号は火災保険の認可となった。第4号の火災保険は大阪の共済であり、第5号の共済も先月末火災保険での認可となった。

 冷静に考えてみれば、既存共済の6割は火災共済である。火災共済を放置しておくわけにはいかないということだろう。ということは、今後、全国の火災共済も順次認められていく可能性が出てきたということになる。

(2)保険会社になるには重装備が必要

 共済の利点は何か。それは、限られた人数で運営することが可能ということである。保険引受と保険金支払に重点をおいて、少人数で経営することが可能である。

 しかし、役所はミニ保険会社の設立にあたり、通常の保険会社向けのガイドライン(保険会社向けの総合的な監督指針)を適用するものとした。これによって、ミニ保険会社の監督指針も既存の生損保とほぼ同じ内容となったのである。

 ということは、共済組織であっても「中堅生損保並みの組織」を持たなければならない。しかも、「生損保出身者」を事実上採用しなければならない。これでは、到底採算が合わない。共済の経営者が相次いで廃業するというのは、こういう背景があるからだ(続く)。


共済問題は今(後編その2)

(3)契約者の保護

 むしろ、役所が考えているのは、共済廃業後、契約者をどう保護していくかが中心のようである。


夕顔2


 具体的には、共済団体にこれまで蓄積した資産があった場合、共済の廃業に伴って、その財産を誰にどう分配するかということである。理論的には、営業年度毎に生じた(含み)資産を当該年度の契約者で分配することになるのであろうが、そういうことを今後どう定めるか検討しているようだ。

3.無認可共済は今後どうなっていくのか

 零細無認可共済は今後廃業が相次ぐだろうが、その場合も当局の承認が必要となる。契約者保護のため、簡単には廃業させてくれないのだ。

 では、大手の無認可共済はどうするのであろうか。

 例えば、賃貸住宅を借りるときに不動産屋で強制的に加入させられる共済がある。この共済を運営しているN共済会は、収保が約25億円。この共済は東京海上日動と提携し、ミニ保険会社になることを条件にミレアの傘下となることを決定した(ミレアは出資する予定)。

 また、大手無認可共済は三井住友海上の代理店となって、同社の販売する商品を共済の代わりに販売するという。

 富士火災も九州の某共済を取り込んで、総代理店化した。

 従来から、損保が共済に手を焼く理由は、単に商売敵ということだけではなく、提携して共存しようにも、共済には募取法の適用がなく、「帳簿はないわ、即収の原則がないわ」のやりたい放題で、不祥事の温床になりかねなかったからである。

 しかし、無認可共済の市場は推定2千億円。その内、不動産関連のマーケットは800億円。そこに目を付けた三井住友海上は、共済事業者でも損保代理業ができる簡便なシステムを開発(保険料領収時の手間を大幅に省力)して代理店化に成功している(このように東京海上日動や三井住友海上等は活発な動きをしている)。

 いずれにせよ、来年の3月まではもう時間があまりない。来年度末までに当局に認められるためには、少なくとも今年中に当局との折衝が実質的に終了している必要がある。しかし、財務局の窓口には限りがある。全く、来年の3月までこの問題は目が離せない次第である。

4.契約者(消費者)はどうすべきか

 共済の廃業で浮き彫りになるのは、その共済のずさんな資金管理である。それが、廃業によって、ますます保険金を支払ってもらえないケースが顕在化する可能性がある。

 読者諸兄で、共済加入者がいらっしゃったら、前回も書いたが、まずその共済が由緒正しい共済(根拠法のある共済)なのか、無認可共済なのかを調べて欲しい。次に、無認可共済と分かったら、更改時にミニ保険会社か生損保に切り替えることである。繰り返すが、それしか手はないのが現状である。


公益法人の制度改革と背後で動く闇(前編)

 本日から三日間、「関ネットワークス『情報の缶詰』2010年7月号」掲載の「公益法人の制度改革と背後で動く闇」をお送りします。


花と蝶1


公益法人の制度改革と背後で動く闇

1.公益法人は利権の温床か

 意外に知られていないが、今、公益法人を巡って、その制度改革が商売のネタになっている。

 公益法人の制度改革は、2008年12月にスタートした。具体的な内容は、今まで公益法人が実施していた事業を民間法人にも参入できるようにし、公益法人の「公益性」判断の基準を明確にしようとするものである。

 これを受けて、2013年11月末までに、社団の場合は「一般社団」か「公益社団」へ、財団の場合は「一般財団」か「公益財団」へ移行しなければならなくなったのである。

 公益法人のイメージがわかない?

 典型的な例として、社団法人日本医師会とか、財団法人日本宝くじ協会などがある。それぞれが主務官庁を持ち、人の集まりであれば社団法人、財産を拠り所にしていれば財団法人とされ、税制の優遇が行われている。

 商売のネタとは、この新制度への移行手続きが面倒なので、会計事務所などがその業務の代行をしようと血眼になっているのである。

 公益法人にしてみれば、新制度に移行しなければ今までの公益法人は解散になってしまうので切実な問題となる。それに、公益法人の数は多い。

 何せ、全国で約25,000もある(このうち、国の所管が約7,000。残りは都道府県の所管)。おかげで会計事務所は商売繁盛というシナリオである。


2.公益法人改革の背景

 では、何故、今、公益法人改革が行われているのだろうか。

 理由は簡単である。NPO法人などの新しい非営利活動法人制度が実施されているにもかかわらず、非営利=公益にかかる民法の規定が100年以上も改正されないまま放置されていたからである。

 さらに、公益法人を隠れ蓑にして不祥事を起こすような不心得者も出てきた(KSD事件)。また、公益の名の下に税金を免除されているにもかかわらず、もっぱら収益事業に力を入れたり、民間企業の進出を阻害して、事業を独占しているなどの弊害も生じていた。

 果ては、許認可権を口実に役人の天下りポスト(受け皿)となって、補助金や助成金を垂れ流しにしているという公益法人まで指摘されるようになったのである。

 テレビ放送されていた公益法人を巡る事業仕分けで怒りを覚えた人もいると思うのだが、実は公益法人の実態は眼に余るといるケースもあったのである(この項続く)。


公益法人の制度改革と背後で動く闇(中編)

3.公益法人の行う共済


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 次に、これもあまり知られていないことなのだが、公益法人は共済を行っているケースが多い。

 共済を実施している法人の数は全国で3,760法人もある。このうち自前で運営している法人の数は約1,000にも上る。

 実は、この共済は現在、存続の岐路に立たされているのである。どういうことかと云うと、

<1>公益法人自らが保険会社(または少額短期保険)になるか

<2>現在の契約を民間の保険会社に付保し直すか

<3>事業縮小(加入者数1.000人以下)か、廃業

のいずれかの道を選ばなければならなくなったのである。

 しかし、そうするとなると、例えば、日本医師会が運営する「医師年金」は加入している医師が死亡した場合に給付金が支払われるので、保険業法上は「生命保険事業」に該当し、医師会が生命保険業の免許を取得しなければならなくなる。

 日医の「医師年金」の総資産は5,600億円で、毎年の保険料収入だけで215億円あると云われている(加入者総数24,000人)。常識で考えて、日医が保険会社になるのは不可能だし、非合理的である。

 しかし、今回の法改正によって、公益法人の行う共済事業には保険業法が一律に適用され、所轄官庁がどこであろうと金融庁(出先の場合は財務局)の監督下とされたのである。


4.奇麗事ばかりではない

 では、これらの背景には何があったと見るべきであろうか。「2.公益法人改革の背景」で述べた理由はもっともらしいが、そんな奇麗事ばかりではない。実は、税収を増やそうとする狙いと抵抗勢力の既得権益の打破である。

 公益法人は、今まで税制の優遇に安住し過ぎたのである。しかも、それが役人の天下りの原資に使われたり、不明朗な金が利権とされて来たのである。

 それに、共済には規制がないことから、保険料の管理運営が不透明という指摘もなされていたのである。今回の改正の狙いは、それをあぶり出して、新たな税収の確保とアンシャンレジームの破壊である。

 おいらの独断と偏見によれば、無論、その立役者はあの小泉純一郎である。「自民党(の抵抗勢力)をぶっ壊す」は事実だったのである(この項続く)。


公益法人の制度改革と背後で動く闇(後編)


5.ゆり戻し

 しかし、大きく振れた振り子は元に戻る。


花と蝶3


 抵抗勢力はあらゆる手段を使って、既得権益を守ろうとする。

 例えば、公益法人の行う共済については、今年の4月21日、金融庁が「共済事業の規制のあり方についての方針(案)」を発表したのである。

 具体的には、公益法人の行う共済のあるべき姿はどうかという本筋の議論を抜きにし、理事会を設置するなどを条件として、公益法人の行う共済を保険業法の特例として、見直すとしたのである。

 ただし、無認可共済がほぼ絶滅した状態になった今、この道はいつか来た道の教訓として、公益法人の行う共済を絶滅させずに済むという点では評価しても良い。

 何故なら、公益法人でなければできない、痒いところに手の届く共済であったとしたならば、そのような共済まで一律に保険業法を適用して潰してしまうことには賛成できないからである。

 しかし、現実には大規模の共済を潰せないという理由から(つまり、利権を残すべしという理論から)、この制度改革を骨抜きにするというのであれば、やはり、この国はどこかが間違っているというべきなのだろう。

 はてさて、日和見を許したのは誰なのであろうか。この犯人探しは興味深い話しではある(この項終り)。




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