快楽亭ブラック 大須演芸場大須演芸場で快楽亭ブラック師匠を聞く(その1)広島の帰路である。 折角の帰路でもあるし、「さすらい」大好き人間としては、行き当たりばったりで下車しても良いのだが、ま、昔から行きたいと思っていてなかなか行けなかった文学館に吉行淳之介文学館(写真)がある。 記憶では静岡県の掛川市にあったはずなので、ネットで検索するとねむの木学園の隣にある。 思い立ったが吉日と云う。掛川はおいらの世代では、あの伝説のよしだたくろう「つま恋」コンサートで有名である。 それに今川義元のテリトリーであった掛川城もある。 しかも、今をときめく浜岡原発のすぐそばでもある。行かない手はない。 だから、最初から掛川で下車するつもりでいたのだが、おいらの新幹線の切符の取り方がまずく、名古屋までののぞみ指定席と掛川までのこだま自由席を別々に買ったものだから、割高になったことに気付いたのだ。 ふと閃いたのが、名古屋の大須演芸場である。古今亭志ん朝が毎年独演会を開催していた名演芸場である。 新幹線の車中、ネットで大須演芸場を検索すると、快楽亭ブラック師匠の名前があるのだが、当日は出ないとある。しかし、こういうことでもないと、大須演芸場に入るのはいつになるか分からない。 えぇい、名古屋で下車だと、午後2時半過ぎに名古屋に到着。その足で、地下鉄に乗車し、大須観音駅に到着した。 まずは、大須観音にお参りである。 日本三大観音の一つらしい。おみくじを引く。中吉。願い事、迷うのは厳禁とある。なるほど、そのとおりだと唸る。 さて、いよいよ大須演芸場入りである(この項続く) 大須演芸場で快楽亭ブラック師匠を聞く(その2) 大須演芸場の場所の見当を付けながら、「大須観音通り」(商店街)を歩く。 真っすぐ歩くと、「コメ兵」本店がある。でかい。流石に本場である。入ろうかと迷ってしまうほど、魅力のある建物である。 しかし、おいらは快楽亭ブラック師匠が出ている大須演芸場に来たのである。そのまま通り過ぎる。 大きな通りに出た。これは違う。場所を間違えたと思い、角の金券ショップのお兄ちゃんに聞くと、通り過ぎているので、元に戻って二つ目の路地を右折しなさいと云う。 はい、分かりました。 元に戻ると通り過ぎた訳である。イメージが違っていた。名古屋だから、遊郭のような演芸場を想像していたのだが、写真のとおりである。 で、入り口をうろうろしていたら、「入りなさいよ」と後ろのおばさんに声を掛けられた。 「何時に終わります?」 「5時」 おいらは時計を見る。3時5分。本日3回目が始まったばかりのようだ。 もちろん、入る。後で、知ったのだが、そのおばはん、どうやら経営者のようであった。恐れ入りました。 木戸賃、1,500円。 入場すると、流石に歴史のある小屋だ。ただし、古いが清潔である。 舞台では「ひと:みちゃん」(男性。芸名がこうだから仕方がない)が落語漫談をしている。小屋の中を見渡すと、その日の観客は総勢で約20名。ガラガラである。おいらは、恐る恐る観客席の中程へ進もうとした。 そうしたら、「ひと:みちゃん」がおいらに向かって「もっと前に座りなさいよ」と声を掛けてくれた(この項続く)。 大須演芸場で快楽亭ブラック師匠を聞く(その3) 「ひと:みちゃん」は優しいのである。前から5列目においらは座った。前の席には誰もいない。 さて、この「ひと:みちゃん」がアタリだった。「ひと:みちゃん」は、得体の知れないエンターテナーであった。 「ひと:みちゃん」とは、自作のシャンソンを歌う「艶歌シャンソニエ」の家元である。ま、早い話しが漫談家なのだが、シャンソンが上手いのである。妖艶な魅力とでも云おうか。 不思議な芸人である。CDがあったら、今度買っておこう。 なお、「ひと:みちゃん」の「み」の前に:(仏語のウムラウト=トレマ)が付いているが、これは意味不明である。 ところで、当日の舞台での出演者は6人である。一人20分が持ち時間。落語は三四楼、神楽、三味線漫談が龍鶴、ジャグリングもあり、多彩である。 そうして、いよいよトリとして、快楽亭ブラック師匠がお出ましになったのである。 こりゃ、嬉しかったね。だって、師匠は出演しないと思っていたのだから、喜びもひとしおである。 師匠の枕は漫談である。師匠の歌舞伎好きにまつわる話しが軽妙洒脱に語られ、抱腹絶倒の巻である。それにしても師匠の枕は際どい。ブログに書けない内容の話しがポンポンと飛び出すので、客席は大受けである。 最後まで落語をしないで終わるのかと思うほど枕で乗りまくりであったが、芝居好きの二代目が大店の目を盗んで芝居に通い、親が一階にいるのに二階で手代?と芝居を演じるという古典落語を披露してくれたのである。 これが上手い。 流石に師匠は歌舞伎好きである。若旦那が演じる芝居が見事である。何回も云うが、師匠の落語は破天荒だよねぇ。もちろん、褒め言葉である。 ブラック師匠の熱演は続き、夕方5時までの予定が10分延長してのお開きという大熱演。いやぁ、ブラック師匠の落語を堪能することができて良かった、良かった。 大須演芸場のロビーで写真を撮っても良いかと尋ねたらOKを貰えたので、パチリ。 大須演芸場、機会があればまた訪れたいものである(この項終わり)。 大須演芸場 大須演芸場(名古屋市中区)が今月の2月3日、建物明け渡しのための強制執行によって閉館したと聞いて驚いた。 だって、名古屋の寄席と云えば何てったって大須演芸場。 昭和40年から半世紀に渡って営業を続けていたんだよ。それがあっさりと閉館、名古屋の民度も知れるというものじゃろうのぅ。 かつては、トニー谷などの大物も公演し、古今亭志ん朝は生前この大須演芸場で定期公演までしていた。ツービートもこの舞台に立っているほどだ。 このブログでも書きこんでいるが、おいらも数年前にこの演芸場に足を運び、鬼才快楽亭ブラック師匠の落語を堪能している。 大須演芸場が閉める理由を聞いてみると、慢性的な入場者不足による赤字経営が原因だという。 この間の経緯を若干述べると、2007年頃から家賃の滞納が始まったようだ。その後、建物所有会社との調停によって未払い家賃の分割払いや家賃の減額などをしたそうだが、再び家賃滞納となり、今後の支払いのめどが立たなくなったのが理由のようである。 そして、建物所有会社が地裁に強制執行の申し立てを行い、昨年明け渡しが決まっていたのが今月までずれ込んでいたという。 新聞報道によると、皮肉なもので、閉館が決まってからは連日の大入り満員。特に2月1日からの3日間は席亭の足立秀夫さん(80歳)の意向により無料となり、連日満員。 最終日は最後の公演を見ようと多くの演芸ファンが殺到、開場前には行列となり、1、2階とも立ち見が出る大入り満員(午前10時半から16組の芸人が出演)。入場できなかった人たちのためにめおと楽団「ジキジキ」が演芸場の外で芸まで披露したが、強制執行は予定通り同日午後に実施されたのである。 何だかなぁと思っていたところ、突然、今度は「高須クリニック」の高須克弥院長が支援に乗り出すという。 建物所有会社が建物を取り壊さずに新たな経営者を募っているのが理由らしく、ツイッターのフォロワーから「大須演芸場を買って下さい」との依頼がきたからだという。 「大須」と「高須」が一字違いというのも理由らしい。そうすると「大須高須演芸場」となるのか。 それでもよい。名古屋の街に演芸場の火を消すではない。 この話しの今後の推移、目が離せないのぅ。 ジャンル別一覧
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