さすらいの天才不良文学中年

2023/10/26(木)00:21

娘義太夫「竹本綾之助」って知ってるかい(前篇)

娘義太夫「竹本綾之助」って知ってるかい(前篇)  笑角亭朝生師匠からいただいた「落語のおあと」は斬新な企画であり、愉しませていただいた(既にこのブログで複数回に渡って紹介した)。  その師匠とのやり取りは、落語「寝床」のサゲについてまで議論が及んだのである(これについては、面白いので稿を改める)。  その落語「寝床」のサゲの中で、師匠の記述に「浄瑠璃のハヤシ言葉『どうするどうする』」というのがあったのだが、おいらにはどうもピンとこなかったのである。国営放送の「どうする家康」ではないが、「どうするどうする」 ?である。  そこで少し調べてみると「浄瑠璃(じょうるり)」から「娘義太夫」の「竹本綾之助」にたどり着いたのである。すこぶる興味深い話しと分かったので、これについて書く。  そもそも、「義太夫(ぎだゆう)」が死語である。  おいらでさえ、義太夫のイメージだけはあるが、義太夫を真面目に聴いた記憶はない。その義太夫とは、三味線の伴奏に合わせて太夫が物語を語る芸(音曲演芸)である。  江戸時代にブームとなった「女浄瑠璃」がそのルーツである。 「女浄瑠璃」はあまりにも人気となり、風紀紊乱としてお上から禁止とされた。その「女浄瑠璃」が明治になって、「娘義太夫」として復活するのである(写真上)。  実は、当時の娘義太夫の観衆は、芸の鑑賞よりも、自分たちの「推し」である若い女性(10代後半から20代前半)の義太夫語りに熱中したのである。  これだけでは、なんのことか分からない。  娘義太夫は見た目は美少年だが、中身は美少女なのである。  その娘太夫が見台に手を当てて美声を張りあげれば、日本髪がほつれ、華美なかんざしがゆらめくのである。諸兄よ、その娘太夫の濃艶な容姿、すなわち美少女が誘惑する姿を想像されたい。畢竟、観客は熱狂する。  そして、佳境になると、客席から拍手とともに「どうする、どうする」との声がかかったのである。特に激しい者は手拍子を打ち、茶碗の底を擦り合わせて騒ぐほど熱狂したという。  ファンの多くは青年たち(書生など)で、「どうする、どうする」と奇声をあげることから、「堂摺連(どうするれん)」と呼ばれていたのである。 「堂摺連」は、「綾之助党」とも呼ばれ(三田の慶応義塾と芝の攻玉舎の生徒が牛耳っていた)、ま、今で云う熱狂ファンであり、追っかけでもある。  なぜ、「どうするどうする」と云ったのかは分からないが、このフレーズが一世を風靡したのである。  知らなんだ。朝生師匠、恐れ入りました。落語を知るには、浄瑠璃、義太夫まで知らないといけないのである。まことに落語とは、奥が深い(この項続く)。

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