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やなぎにかぜ

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February 13, 2009
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光市母子殺害事件の被害者遺族である本村洋さんの事実と秘話で綴られた記録の著書。

裁判所へ向かう姿や、記者会見に臨む本村さんの姿には常に凛と張り詰めたものを感じ、強い信念で犯人に対する怒りを向けていたと思っていた。

ところが、この本を通して何度も絶望の淵に立たされ、何度も自殺を考えたことを知る。

彼をあのように奮い立たせたのは、なんだったのか。
ページをすすめるごとに涙がこぼれる。

本村さんは、何度も自分を責めてきたこと。
数々の挫折を味わってこの年月を闘ってきた事。
絶望するたびに、その感情を敏感に察知し対応する周囲の人々の行動や言動。


特に職場の上司の方の言葉。
刑事さん言葉や行動力。
どれもが感動的である。

裁判は9年の月日を要した。

この長い年月の裁判の中で、加害者は反省のいろをみせなかった。



本村さんの言葉で印象に残るのが、
「君がどんな家庭環境で育ち、どのような経験を経て犯罪に至ったかが罪ではない。
君が殺した人の夢や希望、人生そのものを奪った事が罪なのだから。」









エピローグに著者が死刑判決を受けた加害者に判決の次の日に面会に行った時に交わされた言葉が記されている。驚くべきものだった。



数年前から教誨師によって、ようやく命の尊さを感じたと彼が語っている。


「自分自身が大切にされることで、そのことの重要さを教えられました」
「僕は(これまで下されていた)無期懲役を軽いと思っていました。」

教誨師との出会いで、憑物がおちたような言葉が出てくるのなら、なぜこの判決が出るまでに、こういうことを教える人に出逢えなかったのだろうということ。

この本を通して、裁判のずさんな状況を知る。
「相場主義の形骸化」という言葉で表されている。



「天網恢恢、疎にして漏らさず」

本村さんが、加害者に送った言葉。
事件後の取調べの中で、担当刑事が少年法に絶望していた本村さんに送られた言葉。
この言葉に、本村さんは支えられたと。

天を張る網は、広くて一見粗いようだが、悪人を網の目から漏らすことはない。
悪事を行えば、必ず天罰を受けるという意味の老子の言葉。




人は、目の前に突きつけられた「自分の罪によってもたらされた死」と向き合わなければ、本当の罪を見つめる事が出来ないとしたら、これほどに哀しく悔しい事はない。

子供の頃から「命の大切さ」を教えられて、本当に大事に育てられていたら、彼はこんな罪を起す事はなかっただろうと、エピローグを読んで感じた悔しさ。

※大事に育てると言う事と、何でも言う事を聞いて甘やかすのとは全く違う事。

親として、子供と向き合うにあたって逃げてはいけない事を、考えさせられる。


興味本位で綴られた本ではなく、じっくりそれぞれの視点で考えさせられる一冊だった。







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最終更新日  February 14, 2009 12:19:54 AM
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