真空管アンプの選び方(4)
さて、真空管には3極管と多極管がある。歴史的には3極管が最も古く、そこから4極管、5極管、ビーム管(この3つを総称して多極管とも言う)と進歩していったのだ。出力管としては、後で開発されたものほど効率がよい。ではビーム管が最高かというとそうでもないところがオーディオの面白いところである。効率がよいということならば、その後に開発されたトランジスターの方が上であるから、効率の良さばかり求めては真空管の良さを自己否定してしまうことになるのである。 代表的な3極管は、300B, 2A3などの古典球に加え、多極管を3極管接続する場合も多い。当然効率は下がるわけだが、それを上回るメリットがあると考えられている。具体的には、内部抵抗が低い、負荷抵抗の変化に強い、歪みが低次高調波中心である、などのメリットがあり、シングルアンプにしたときの音色は格別である。 4極管は使われないが、5極管としては、6CA7, 6BQ5 などが有名である。効率よりも音質重視と言うことで、メーカーのアンプにはよく使われている。例えばマランツでは全てのパワーアンプに6CA7を使っていた。 ビーム管としては、6L6GC, 6550, KT88 など大出力管が多い。効率を重視した設計であるが、回路次第で良いアンプが作れる。例えば、マッキントッシュの真空管アンプはKT88, 6L6GCといったビーム管を特殊な出力トランスと組み合わせて大出力かつ高性能を得ている。 それぞれのタイプの真空管の個性を生かしたアンプを選びたいものだ。このようないわゆる銘球ばかりでなく、あまり知られていない駄球(?)を愛する人もいる。球の型番を聞いただけでピンと来るようだと、真空管屋の店先に並んでいる球の中から掘り出し物を見つけることも可能であろう。