ツブコの茶店

2005/04/28(木)11:06

電車の中のお地蔵さん

フォトエッセイ(71)

 電車の前の座席に、おばあさんが 六人並んで座っていた。 そろって背中をまるめ、ひざの手提げの上に顔をのっけている。 みんな、花を抱えている。 楽しそうにさざめいている。 なんだろう。何かあるのかな。 あ、そーか、今日はお彼岸か。 お墓参りに行くのだな。 そういえばみんな、よそ行きの服だ。 ブラウス、シャツ、もんぺ、ズボン、スカート。 花模様、しましま、ふわふわ、ぶかぶか。 長すぎ、短すぎ。 組み合わせがめちゃめちゃなのが、かわいらしい。 揃って新品なのが、いじらしい。 どこで、買ったのかな。 洋品店かな。 それは、どんな町だろう。 プレゼントかな。 それは誰からのだろう。 お墓に誰を、たずねて行くのだろう。 自分の親も、いるかもしれない。 おばあさんにだって、それぞれの父、母がいた。 そして、みんな、子供時代があったのだ。  おばあさんの顔を見ながら、ココロで筆を加えていく。 しわを消し、目を見張らせ、三つ編みやおかっぱの髪にして、 おばあさんをコドモにおきかえてみる。  ひとりのおばあさんが、手提げから、おはぎを出した。 もうひとりが、おせんべいを出した。 みんなでたべる。 目や鼻が、木漏れ日のように美味しげにゆらめく。 「アハハハハハ」 と、 あんこの口で笑っている。 持っている花が、たんびにゆれる。 私のココロは、こんどは、六人のお地蔵さんに おばあさんたちを、描きかえはじめる。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る