150259 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

The locus of the moon

The locus of the moon

記憶を探して(平野菜月)

記憶を探して

アンティークショップ・レンの店主碧摩・蓮はある場所へと向かい歩いていた。
それは碧摩・蓮が頻繁に不思議な品物を手に入れる場所で少し変わった場所だった。
古い洋館の前にたどり着くと碧摩・蓮は呼び鈴を鳴らした。
と同時に扉が開き
「待ってたわよ、蓮。」
とその洋館「鏡の館」の主である由比真沙姫が現れた。
碧摩・蓮を居間に案内すると由比真沙姫はソファに座り用件を尋ねた
その問いに碧摩・蓮は珍しく言葉を濁しながら一つの品をテーブルの上に出した。
「電話で話したのはこのオルゴールさ。入荷したのはいいが返品が続いてね。」
ため息を深くつくと碧摩・蓮は真沙姫に向かい言い放った。
「あんたの所で手に入れた品だったと記憶しているけど、一体なんなんだい?買った人間皆が口を揃えて悪夢を見るって言うんだよ。売るにしても何とかしないとこっちの商売上がったりだよ。」
碧摩・蓮は真沙姫に向かい少し怒り気味の口調で言ってみせた。
真沙姫はオルゴールを手にすると少し微笑み
「悪夢ねぇ。そう思うならこのオルゴールの持ち主にはふさわしく無いって言う事ね。まあ、そのうち本当の主が現れるわよ」
どうも由比真沙姫は碧摩・蓮の言葉を聞き入れる気が無いようだ。
碧摩・蓮は由比真沙姫を説得し返品するという事をあきらめ鏡の館を後にした。
アンティークショップ・レンにたどり着き扉を開けようとすると碧摩・蓮の後ろから声が聞こえた。
「あ、あの」
碧摩・蓮はその人物と手に持っていたオルゴールを見つめた。
(この人物が真沙姫の言う本当の持ち主なのかねぇ)
由比真沙姫の言葉を思い出すと碧摩・蓮は
「まあ、お入りよ。話は中で聞こう。」
そう言うとその人物とともにアンティークショップ・レンの中へと入って行った。


ー 碧摩・蓮との再会 ー

「どこに行くんだ?たまの休日なんだからゆっくりさせてくれよ」
平野菜月は眠い目をこすりながら傍らの蒼イオナへとぼやいた。
といっても平野菜月が起きたのはお昼過ぎ。蒼イオナからすれば十分すぎる程平野菜月は休んでいる。
「お昼過ぎまで寝ていた罰よ。今日は私に付き合うの。たまには良いでしょ?」
蒼イオナは平野菜月へ微笑んでみせた。しかし平野菜月は
「たまには……っていつも蒼イオナに導かれて事件に首を突っ込んでいる気がするけど。」
平野菜月は小さな声でぽつりと呟いた。その言葉を聞くと蒼イオナはツンとした顔で
「菜月が不思議な事件が見たいって言うからわざわざ探してきてあげているのに、酷い言われようだわ。とにかく今日は付き合ってもらうんだから。早くこっちよ」
そう言うと蒼イオナは右方向へと進みはじめた。
そして数分後。平野菜月と蒼イオナはある店の前へとたどり着いた。
「アンティークショップ・レン……」
平野菜月は蒼イオナを見ると
「まさか、まさかとは思うけどまたお前の姉妹に会うとかいう話じゃないだろうな。」
そう言って蒼イオナを見つめると、蒼イオナは何も知らないと言った顔を見せながら
「あら?店の扉見て」
と平野菜月へ言った。その言葉に平野菜月がアンティークショップ・レンの扉を見るとそこには
「閉店」
とかかれたプレートがかかっていた。平野菜月は扉を開けようと試みたが鍵がかかっている。
「今日は休みなのかもしれないな。またにしよう」
平野菜月がそう言ってアンティークショップ・レンに背を向け歩きはじめた所、蒼イオナが
「菜月、菜月!!」
と声をかけてきた。その声に平野菜月はアンティークショップ・レンの方を振り向くとそこには扉の鍵を開けようとしている碧摩・蓮の姿。
平野菜月は急いでアンティークショップ・レンに向かい碧摩・蓮へと声をかけた。
「あ、あの」
碧摩・蓮は平野菜月と手に持っていたオルゴールを見つめた。
(この人物が真沙姫の言う本当の持ち主なのかねぇ)
由比真沙姫の言葉を思い出すと碧摩・蓮は
「まあ、お入りよ。話は中で聞こう。」
そう言うと平野菜月と蒼イオナとともにアンティークショップ・レンの中へと入って行った。


ー 呪いのオルゴール? ー

「久しぶりだねぇ。今日は何だい?またそこの聖霊に導かれてやってきたのかい」
碧摩・蓮は笑いながら平野菜月へ話しかけた。
碧摩・蓮は店の中に入ると奥のカウンターへと進み、オルゴールをカウンターの傍に置こうとした。その瞬間
「それ!それが欲しいの」
蒼イオナが碧摩・蓮に声をかけた。碧摩・蓮はその声に驚くと
「これかい?ああ、またあんたたちなんだね」
碧摩・蓮は首を横に振ると平野菜月と蒼イオナに向かい
「仕方が無いね。持ってお行き。それは返品が続いていて買った人間からは「呪いのオルゴール」と呼ばれていた代物だよ。まあ、あんたたちが欲しいというのならまた何かが閉じ込められているんかもしれないねぇ」
碧摩・蓮はカウンターから出ると入り口近くにいた平野菜月へオルゴールを渡した。
オルゴールを受け取った平野菜月はそおっと百合の模様で装飾されている美しいオルゴールを開いた。
オルゴールから美しい音色が奏でられた瞬間
「うわ!」
平野菜月が叫ぶとオルゴールを中心にして周りに赤い光ががあふれはじめた。その様子を見た碧摩・蓮は静かに
「また聖霊が出てくるんだね」
そう蒼イオナに話しかけた。その問いに蒼イオナは嬉しそうに碧摩・蓮に答えた。
「はい。協力よろしくお願いします」
蒼イオナのその言葉に碧摩・蓮は頭をかくと
「何だか面倒な事になりそうだねぇ」
そうぽつりと呟いた


ー 赤と白と蒼 ー

赤い光がとまるとそこには赤い衣をまとった聖霊が立っていた。
「姉さん」
そういうと赤い聖霊は蒼イオナへ抱きついた。
平野菜月はまたかという顔をした。そして蒼イオナに向かい
「私流なら赤イオナってところか、妹ってことは前のみどりおなの様なものか」
蒼イオナは首を傾げると
「なによ、jadeだっけ?緑の事?みどりおなって。緑イオナじゃないの?」
と平野菜月に問いかけた。平野菜月は笑いながら蒼イオナに
「まあ、あれだよ緑レンジャーがみどレンジャーみたいなものさ」
と答えた。碧摩・蓮はその様子を傍にあった椅子に座りながらのんびりと見つめていた。
その時平野菜月曰く「赤イオナ」が遠慮がちに声をかけてきた
「あ、あのもうお話しても大丈夫でしょうか?」
その声に平野菜月は赤いイオナに申し訳無さそうに謝ると
「ああ、もう大丈夫だよ」
赤いイオナにそう話すと赤いイオナはほっとしたような顔で
「よかった。姉さんに話したい事があって。ここに封じられているのは私だけじゃないんです。白ちゃんもこの中にいるの。私の記憶をオルゴールに封じた影響だと思うのだけれど……」
その言葉に平野菜月は言葉を無くした。そして蒼イオナを見つめた。
平野菜月の鋭い視線に蒼イオナは微かに笑い
「ゴメン、菜月」
と言うと平野菜月へ話しはじめた。
実はこのオルゴールの中に封じられているのは蒼イオナの妹赤いイオナの記憶。
火の力を持ちながらもその力を白いイオナに渡し、大剣を持って精霊界の魔獣達を倒した頃の彼女の記憶。今は剣を置き記憶を封じ精霊界で裁縫師として服を作る平凡な日々を送っている。
「で、何で裁縫師として平凡な日々を送っているはずの彼女が何でここにいるんだ」
その平野菜月の問いに蒼イオナは
「それは、まあ……私の影響とかそのオルゴールのせいというか……」
と言葉を濁した。それを聞いた平野菜月は蒼イオナに尋ねた。
「……何人いるんだ」
蒼イオナは不思議素な顔をしながら
「え?何が?」
平野菜月はその蒼イオナの言葉に
「だから本当は何人姉妹なんだ」
蒼イオナにそう問いかけた。青イオナは指で人数を数えながら
「えっと、上から蒼・赤・白・緑・黄・黒・茶・紫。だから8人姉妹かな。私は8人姉妹の長女で白は赤から受け継いだ火の力で精霊界の魔獣を倒し続けている姉妹中最強の炎使い。力は私とと互角かな。赤は心優しい妹思いの次女って感じ。」
と嬉しそうに答えた。そして平野菜月が言葉を発しようとしたのを遮ると
「じゃあ、白も呼び出せないかな。うーん、碧摩・蓮。このオルゴールに何か付属品着いてなかった?」
突如話を振られた碧摩・蓮は少し考えると、ハッと思い出したような顔になり
「あった。あったよ。確かそのオルゴール二重底になっていて底を開けるには鍵が必要なんだよ。オルゴールを良く見てご覧」
そう言われ平野菜月と蒼イオナはオルゴールの中を覗き込んだ。すると確かに鍵穴がオルゴールの中にはあった。
碧摩・蓮はカウンターに進むとカウンターの引き出しから古ぼけた鍵を取り出した。
「確かこれがその鍵だよ。試してご覧」
鍵を渡された平野菜月は碧摩・蓮の言われるがままにオルゴールの底に鍵をさしこみ回してみた。そして、底を開けようと鍵をつけた状態で上に引っ張るとそこから白い光があふれてきた。
「これが白いイオナか?」
平野菜月は蒼イオナに聞くと蒼イオナは嬉しそうに頷いた。
そしてしばらくして光がとまると、そこには白い衣をまとった聖霊が立っていた。
白いイオナは周りを見回すと
「白ねえ、蒼ねえ」
と言葉を発すると二人に駆け寄った。姉妹感動の再会である。


ー また会う日まで ー

平野菜月と碧摩・蓮を放置した状態で蒼イオナを含む3人の聖霊は積もる話もあり盛り上がっていた。
「蒼ねえってば緑にあったの?」
「私も久しぶりに緑に会いたかったわ」
「赤も白も元気そうでよかった」
そんな会話が繰り広げられている中、平野菜月はヒマそうに、碧摩・蓮は椅子に座りじっとその様子を見つめた。
ひとしきり話が終わると蒼イオナは平野菜月を呼んだ。
「これがさっき話した平野菜月。今はこの人と一緒にいるんだ」
蒼イオナは赤いイオナと白いイオナにそう話した。
二人は平野菜月に頭を下げると
「姉をよろしくお願いします」
と深々と頭を下げた。そんな赤と白に平野菜月は少し照れながら
「わかりました」
そう言うと平野菜月も頭を下げた。
蒼イオナは平野菜月嬉しそうに二人の腰に手を回し
「赤も白もとってもいい子なんだよ。菜月うらやましい?」
と笑いながら言った。その言葉に平野菜月は
「そうだな。少しうらやましいかな」
蒼イオナに少し寂しそうに微笑んだ。その様子を見ると蒼イオナは黙り込んで妹達の手をギュッと握った。
(平野菜月に辛い思いをさせたのではないか)
蒼イオナはそう思うと少し胸が痛かった。そんな蒼イオナの様子を見て赤いイオナは
「姉さん」
と心配そうに話しかけた。白いイオナも心配そうに蒼イオナを見つめた。そして赤いイオナは蒼イオナが掴んでいた手をそっと放すと、平野菜月へと近づいた。
そして蒼イオナが聞こえないよう小さな声で
「姉さん本当は妹思いで、とっても優しいんです。でもほんの少しひねくれているのでそうは見えないんですけどね。」
赤いイオナはそう話すと平野菜月へ微笑んだ。平野菜月も赤いイオナの微笑みを見ると
「わかっているよ。大丈夫、安心して良いよ」
と微笑みで返した。その様子を見た赤いイオナは
「よかった」
と呟くと蒼イオナのもとへ近づいた。そして
「姉さん、私そろそろ戻らないと。まだ終わってない仕事があるから。」
赤いイオナがそう言うと、白いイオナも
「そうだ!私も早く戻らないと大変な事になっちゃう。蒼ねえ、赤ねえ。会えて嬉しかったよ」
そう言うと白いイオナは二人の頬にキスをすると
「じゃあね」
と言ってその場から消えた。多分自分のいるべき場所に帰ったのだろう。
そして赤いイオナも蒼イオナの手を名残惜しそうに握りしめると、平野菜月に向かい
「姉さんをよろしくお願いします」
そう言って彼女も自分のいるべき場所へと帰っていった。

そしてアンティークショップ・レンには店主である碧摩・蓮と客である平野菜月、そして蒼イオナが残った。


ー 家に帰ろう ー

空っぽになったオルゴールを見つめ平野菜月は碧摩・蓮にその品を返そうとした。しかし碧摩・蓮は
「それは持ってお行き。また立ち去った聖霊に会えるかもしれないからね」
そう言うと平野菜月へオルゴールを持たせた。蒼イオナは碧摩・蓮を見つめると
「ありがとう」
微笑みながらそう礼を述べた。碧摩・蓮は手をひらひらと振ると
「礼なんかいらないよ。また面白い物を見せてもらえたからね。それで十分さ」
そう言うとアンティークショップ・レンの扉を開き
「お帰りはこちらだよ。また会えるのを楽しみにしているよ」
平野菜月と蒼イオナは碧摩・蓮にそう送り出され、アンティークショップ・レンを後にした。

そして

「帰ろうか」
平野菜月の言葉に蒼イオナも笑顔で
「うん」
と答えた。

そして二人も自分のいるべき場所へ帰っていったのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このページに掲載している作品は(株)テラネッツが運営するオーダーメイドCOMにて製作した物です。
OMCバナー

イラスト又は文章の使用権は各作品を発注したお客様に、著作権は『月宮 蒼』に、全ての権利はテラネッツが所有します


© Rakuten Group, Inc.