2007/03/19(月)23:55
滑稽な悲劇・・・「レヴェルゲ(死んだ鼓手)」~『子供の不思議な角笛』から~
マーラーの歌曲集『子供の不思議な角笛』といえば、
いわゆる「角笛交響曲群」を生んだマーラーの世界の原点であり、彼が造った「王国」でもあります。
代表的なところでは、
「魚に説教するパドヴァのアントニオ」「原光」は
彼の交響曲第2番「復活」において、ほぼ原曲のまま登場します。
若書きの第1番を除き、第3番、第4番まではこの歌曲集の「王国」の支配下にあると言っていいでしょう。
ところで、
標題のレヴェルゲ(死んだ鼓手)。
「僕は死ぬまで行進せねばならぬ!」
という歌詞に象徴されるように、
課せられた使命の到達点が「死」や「敗北」だとわかっていても、
どうしてもそれに逆らうことができず、
「行進」を止めることができない、そんな「滑稽な悲劇」を歌う哀しい唄。
これが後の大曲 交響曲第6番「悲劇的」 の原点であり、
この小品にその双葉の芽吹きをはっきりと感じることができます。
「厭々ながらの行進」と「滑稽な悲劇」は、彼の半生をかけたテーマだったようです。
僕はこの曲を聴くと、個人的な情景として「二百三高地」を思い浮かべてしまいます。
しかしこのレヴェルゲに漂う独特の哀愁は、
古代の防人のようでもあり、
現代の官僚やサラリーマンのようでもあり、
不思議な共有性・共時性で僕たちの共感を誘います。
♪
「ああ、兄弟よ、僕は撃たれた。
弾が僕に当たったのだ。
僕を兵舎に運んでくれ」
トライラリ・トライラライ・トライラレ(行進の歩調)
「ああ、兄弟よ、僕はお前を運べない。
敵軍が僕らを打ち負かしたのだ。
神様だけがお前を助ける」
トライラリ・トライラライ・トライラレ
「ああ、兄弟よ、君たちは通り過ぎるのか、
まるで僕がもうおしまいであるかのように」
トライラリ・トライラライ・トライラレ
「僕は太鼓を打ち鳴らさねばならぬ。
でないと僕はひとりになってしまう」
トライラリ・トライラライ・トライラレ
「兄弟たちは刈られた草のように
いっぱいに大地に横たわっている」
でもその鼓手は、最初からもうすでに死んでいるのだ。
それは出だしの歌詞を聞けばわかる。
「朝の3時から4時までの間、
あの小道を行ったり来たり。
僕たち兵士は行進せねばならぬ・・・」
トライラリ・トライラライ・トライラレ・・・
僕の恋人が見下ろしている。
トライラリ・トライラライ・トライラレ・・・