2007/04/28(土)23:51
ある情熱 ~ロストロポーヴィチの訃報に接して~
「これを、旦那さんに・・・」
と友人から妻が受け取ってきたのは、
『ロストロポーヴィチ 人生の祭典』というドキュメンタリー映画のチラシだった。
僕はそれを受け取る前に彼の訃報に接していたので、
「祭典」という言葉に抵抗を感じた。
皮肉なタイミングだ。
彼の波乱の人生の軌跡をたどる映画が、訃報と時を同じくして封切りとなるなんて。
僕は、彼にショスタコーヴィチを教えてもらった。
それがこのジャケット写真の交響曲第5番。
当時高校生だった僕は、荒武者のように両手を振り上げた老指揮者が「気迫」でオーケストラを統率している様子に、純粋に「カッコイイ!」としびれたものだ。
ワシントン・ナショナル響の鳴りっぷりは無骨で荒いけど、
それがストレートに聴き手の心を鷲づかみにする。
この重々しさ、一つ一つのフレーズの意味深さ、
ショスタコーヴィチと同時代に生きた彼ならではのものだろう。
ソヴィエトという悲しくも残酷な国家が、かつてこの地上に存在していたのだ。
今日改めて聴きなおしてみても、1982年の録音から四半世紀たった今でも
そのパワーは決して衰えていない。
近年、彼ほど「情熱」という言葉の似合う音楽家がいたであろうか?
わたしたちはまた、大切な人を失ってしまった。