2007/07/25(水)23:23
好きとか嫌いとか、そういうことじゃなくて。 ~C.クライバーのブラームス第4交響曲~
たまに、自分の無能さ加減が嫌になる。
いや、不幸にして、自分の無能さにたまにしか気付かない、というべきか。
そういう僕にとって、完璧さというのは、憧憬である。
完璧な仕事、完璧な文章、完璧な芸術、完璧な音楽、完璧な演奏。
C.クライバーのレパートリーがきわめて狭かったのは、
彼自身の「完璧さ」へのこだわりがそうさせたのだと、僕は想像する。
彼は、マーラーの第9交響曲だって、ブルックナーの第8交響曲だって、バッハのマタイ受難曲だって振れたはずである。それも、余人が及ばないほど、圧倒的にだ。
でも僕は、彼がそれをしなかった(できなかった)ことに、C.クライバーという人間の奥ゆかしさと臆病さを感じるのだ。
彼のブラームスを聴くたびに、このような「完璧さ」がこの世に存在するものだろうか、と空恐ろしくなるのは僕だけだろうか。
これは好き嫌いを越えたところで、万人がなんらかの形で認めざるを得ない存在だと思う。
少なくとも、この演奏をどうとらえるか、僕たちは、判断を迫られる。
「どうでもいい」では済まされない。ひとつの頂点であることは明白なのだから。
ゾッとするほどストイックな表現は、同時にゾッとするほど空虚な深遠を覗かせる。
これが僕がこの演奏に対する評価である。
理由もなく突然悲しくなった夜に、聴くにはちょうどいいかもしれない。
少なくともこの録音は、日常的に聞くようなシロモノではないですね。
もっとも、ブラームスの第4交響曲が日常的な音楽と仮定しての話だけれども…(笑)。
彼がブラームスの第4交響曲しかCDを遺さなかったことに、彼の人間らしさを感じます。
個人的には、彼の指揮するテンションの高い第3交響曲を聴いてみたかったのだけどね。