ブラームスはお好き?

2010/01/27(水)01:02

ブラームスはお好き?

ヨハネス・ブラームスの音楽(73)

 「ブラームスはお好き?」  というサガンの小説のタイトルには、  「ブラームスみたいに堅苦しい音楽が本当に好きなの?」  というニュアンスが含まれている。  くだいて訳せば、  「そんなに背伸びしてどうするの?」  という微笑み混じりのからかいだ。  ブラームスは好きか?  と問われれば、  僕は当然、  「好んで聴いている」  と答える。  僕ももう30代半ば。  別に背伸びをしているつもりはない。  そして、人からブラームスについて問われれば、  まずはこのCDを聴いてほしい、  と差し出せるものを僕は持っている。  それが、ジュリーニがウィーン・フィルを指揮した第4交響曲。  むかし僕が学生で熊本にいたころ(ああ、あの夏の空気が懐かしい)、  街のはずれにあるレコード・ショップでこのCDを手に取ったとき、  カウンターの奥に座っていたオジサンが  「そのCDは、名盤ですよ。」  と低い声できっぱりと言い切ったのを思い出す。  そのオジサンの名科白を裏切らない名演奏であるが、  特に後半の第3、第4楽章の抑制的な遅いテンポが、なんともいえず、気品がある。  敬遠され誤解されがちなブラームスの厚ばったさがない。  今日、職場でふとした拍子に“ウィーン・フィル”という単語が出たときに、  「なんだそれは、食ったら美味いのか」  と茶化した上司がいたが、冗談でもさすがにそれは興ざめすぎる。  いつまでも、「ブラームスは好きだ」と言える大人でいたい。

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