∬2月―銀色の休日(1)予定変更《2月―銀色の休日》 ~2003年2月の記録 ∬第1話 予定変更 二夜続けて暴風雨に見舞われたダルヤンでの宿泊を終えた朝。 当初の予定通りマルマリスに向かうか、それともマルマリスを切り捨ててカシュに滞在するか、私たちは未だいずれにも決めかねていた。 一向に止まぬ雨混じりの強風の中、いったんマルマリスを目指してダルヤンを出発することにした。 しかし、5kmも行くか行かぬかのうちに雨粒はますます大きくなり、風に煽られてフロントガラスに叩きつけ始めた。 「あ~あ。これじゃあ、マルマリスに行ったって、ホテルから一歩も出られないね・・・」 「もともと、マルマリスには何も見るところはないしね・・・」 「アンタルヤに戻ろうか・・・?」 前夜から私の言い出しかねていたひと言。まるで私の心を読み取ったかのような、夫のひと言だった。 「どうする?おうちに帰る?」 夫は上の娘の意向も確認した。修理して自分専用になった古いデスクトップパソコンの、ペイントソフトを使ってのお絵かきがここ数日来のお気に入りになっている娘は、早くパソコンの前に座りたくて一も二もなく大賛成。「わ~い!」と歓声まであげている。 いったんそうと決まると、私の気持ちは一気に楽になった。 トルコ全土の中でも最も温暖な地域にあたるエーゲ海・地中海地方だが、天候の不安定な冬ともなると、海に直面しているだけに、南の海上からやってくる暴風雨の被害から逃れるすべはない。 丈の高い木々も建物も暴風になぎ倒され、民家も商店も公共建築も水に浸かるという被害を頻繁に被る。 そんな冬季にこの地方を旅行しようというのだから、始めからこの旅行には無理があった。なにより、老体同然のオンボロワゴンが悪天候下でどうにかなれば、旅行どころか私たち家族の身の危険だってありえるのだから。 5日間の旅行の予定を3日目で切り上げ、私たちは来た時と同じ道を逆方向に辿り、一路アンタルヤを目指した。 (つづく) ∬第2話 ダルヤンへ出発 ジャンル別一覧
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