2006/08/18(金)03:06
夢に終わったターティル(休暇)たち・その3
(※夢に終わったターティル(休暇)たち・その2から続けてお読みください)
チャーラルジャ村もまた、ゲイックバユル同様ヤズルック(夏用の家、別荘)用の小さなヴィッラが点在していた。
中には石壁と鋳鉄製の門扉も美しい瀟洒なつくりのヴィッラもある。
沿道に止まっている車は、もちろんトラックや耕運機ではなく、アンタルヤ・ナンバーをつけた普通の乗用車である。
小さな村をあっというまに通り抜けると、ギョズレメジ(ギョズレメというトルコ風クレープを焼いて売る店)のおじさんが言ったとおり、アスファルが終わって石ころ道になり、その道は森の中へ続いていった。
ここまでのあいだに「トレベンナ」を示す看板はひとつもなかった。次々現れる2差路のいったいどっちへ進むべきか。右か左か。登りか下りか。
「どっちなの!?」夫が焦った声で訊く。
「私だって、分かんないよ!」
あてずっぽうに進路を取っていくものの、不安は募るばかり。
「こんなことなら、村で誰かに案内役を頼めばよかった。。。」
悔やんでも、後の祭りである。
やがて道は急勾配になり、私の胸には暗い不安が押し寄せてきた。
道を間違えている可能性の方が高いのに、この後切り返しもできない隘路になったら、いったいどうすればいいんだろう?
「ねえ。もういいよ。今のうちに引き返そう」
カーブのところで道がちょうど膨らみ、Uターンするのにちょうどいいポイントだった。
夫は、ここまで無駄に車を走らせてしまった私を責めるでもなく、「じゃあ、戻るよ」といって来た道を元に戻り始めた。
来るときは道を探すのに一生懸命で、眺めを楽しむどころではなかったが、ふと目をやると、右手遠くにはトレベンナのアクロポリスと思しきテーブル状の丘が見えていた。
夫にお願いして車を止めてもらい、写真を撮った。トレベンナの右手にはスィヴリダー(尖山)が、しかし反対側から見るのと違って柔らかい輪郭を見せて聳えていた。
トレベンナ遠望
スィヴリダー遠望
車を再出発させ、さきほどの湧き水のところまで戻ってきた。
私たちの車を認めると、ギョズレメジのおじさんは、「おや」というような顔をして手を挙げた。
私は車を降りると、まっすぐにおじさんのところに寄った。
「途中で諦めたわ。道が分からなくって」
そういうと、おじさんは驚くようなことを言うのだった。
「ああ。それがな。あそこは実は立ち入り禁止区域なんだよ。
ジャンダルマ(憲兵隊)の管轄でな。今までにも入ろうとして捕まった者が何人かおる」
私はビックリしておじさんに文句を言った。
「言ってくれればよかったのに!知ってたら最初から行かなかったわ」
「すまん。すっかり忘れてたんだよ。あんたたちが行った後で思い出したんだ」
いまだ本格的な発掘の始まっていないこの手の遺跡は、管理の目が届かないため盗掘されやすい。なので、ジャンダルマの管理下に置かれているということなのだろう。
いずれにせよ、早いとこ引き返しておいて正解だった、ってことだ。
私たちは、もう一度湧き水で足を冷やし、それから一路、もと来た坂道を下っていった。
お肉をたらふく食べるつもりで、ギョズレメに手をつけなかった私は、お腹が急に空いてきた。
目指すは、マンガル・レストラン(バーベキュー・レストラン)!
目星は、来る途中でつけておいた。庭に子供用の遊具があって、遊具に目の届く場所で食事できるところ。クッキーのカフェスを横に置いても誰にも迷惑のかからない、チャルダック(あずまや)式のところ。
レストランに到着した。時間はすでに3時を廻り、後で1組の家族が来たことを除けば、私たち以外に誰も客はいなかった。
メニューはというと・・・超シンプルだった。クズ(ラム肉)しかないという。それにトマト、ピーマン、たまねぎを一緒に炭火で焼き、脇に添えてくれる。あとできるのはサラダくらい。
私は、失敗したなあ~と思う。以前、行ったことのある他のマンガル・レストランでは、メゼ(前菜)は何種類もあったし、お肉もキョフテや鶏手羽など何種類も選べたのである。レストランの格が違うのだろうけれど・・・。
自分で焼くか、どうするかと訊かれて、迷うことなく「焼いてもらう方」を選んだ。
大抵のトルコ男性と違い、夫は「マンガルのできない男」。誘われてマンガルに出掛けたとしても、どっかり座ってオシャベリしながらビールばかり飲んでいるようなタイプなのである。
私は、せっかくの外食なのに「焼きかた」になんか廻りたくはなかった。
様子が分からないので1キロ頼んでみたが、骨付きなので食べられるところは少なく、家族4人ではさすがに少なかった。私と夫はビールとパンでお腹をようやく一杯に。
久しぶりに思いっきり焼肉!と思ったのに、遠慮しながらのマンガルは妙にもの侘しかった。どこに行くにも、何をするにしても、最近の私たち一家は貧乏性がなかなか抜けないのであった。
そんな中でクッキーだけは、自宅からタッパーに入れて持ってきた、鶏の胸肉と野菜をマカルナ(ショートパスタ)と一緒に煮た特別食を食べた後、木々の間を渡ってくる涼しい風に吹かれながら、カフェスの中ですやすやとよく眠っていた。
それからまっすぐ自宅に戻ると、夫はビールが効いて即、昼寝。
娘たちはスィテの庭に残って、暗くなるまで友だちと遊び疲れ、私も、普通のなんでもない日曜の午後に戻っていった。
こうして、なんとなく不完全燃焼に終わってしまったけれど、わずか半日のささやかな休暇は、ちょっぴりのマジェラ(冒険)気分と、気分転換をもたらしてくれた。
本格的な休暇と、本物のマジェラを体験できるのは、私たちにはまだまだ先のことになりそうである。
いつも応援ありがとうございます。
そのうち、オンボロワゴンを買い換えたら、ヤイラに再挑戦だもんね!
焼肉だって、自宅でリベンジだーっ!(涙)
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