リスト超絶技巧練習曲雪あらし?論2006年1月Tyees記すリスト超絶技巧練習曲第12番のタイトルは、「雪かき」なのか、それとも「雪あらし」なのか。 どうも、近年は、「雪あらし」が正解のようである。 ・・・以下詳細・・・ のだめカンタービレ14巻に、「雪あらし」が登場した。 この曲、超絶技巧練習曲の第12曲の表題は、Chasse-neige Chasseは、 chas・se(英) [F.] 【ダンス】シャッセ ((急速なステップ)).すべり足 ━━ vi. シャッセを踊る. Chasse(仏) ---drive out・・・・・ 等 また、neigeは、 neige(仏)--- snows neige(独)---slope/(would) tended/bends/ chasse-neigeでまとめて色々調べてみると、 Chasse neige(仏)=Drive out snow(英)(雪を排出せよ)/Hunt snows(雪を探せ)/Dispels snow(雪を晴らせ)/Goes hunting snow(雪を捜しに行こう) Chasse-neige(仏)=Snow-plough(/雪掻き器・除雪車)(英)/snowplow(雪掻き) なんて感じ。 結果として、その当時(少々昔の訳は)、「雪かき」Snow-plough/snowplowになったのであろう。 超絶技巧練習曲は、もともと、春秋社版のリストの楽譜(3巻かな?)と、 CDでいえば、今は亡きラザール・ベルマンが早期の出会い。 両者ともに、「雪かき」が日本語のタイトルであったので、この名をあまり疑ったことはなかった。 ベルマンCD(LP)の解説は、三浦淳史氏の解説で、第12曲については、以下のように書かれている。 -- 第12曲:雪かき Chasse-neige 変ロ短調 アンダンテ・コン・モート、6/8拍子。トレモロ練習曲。中間色の世界に、吹きすさぶ雪あらしを想わせる音型がたえず現れる。 冬の日のしみるように深い抒情。 --引用終わり この解説中には、すでに「雪あらしを想わせる」との表現がはいっている。 「雪あらし」であるべきとの説には、たとえば、以下が参考になろうか。 青柳いづみこオフィシャルサイト 連載「ピアニストは指先で考える」「ムジカノーヴァ」2005年6月号号には、以下のような内容が掲載されている。 -- 連載「ピアニストは指先で考える」/「ムジカノーヴァ」 2005年6月号号 三月二十九~三十日に開催された日本ピアノ教育連盟の第二十一回研究大会は、リストをテーマとして、とても実り多いものとなった。とくに面白かったのが、二十九日に行われた野本由紀夫さんの講演と、それにつづくシンポジウム。 「リストの伝道師」を自称なさる野本さんは、大学院在学中からリストを研究してこられた。日本の音楽学は、うんと古典かうんと近・現代かをテーマに選ぶことが多く、ロマン派を専門にする人は珍しい。当時リストは、派手なだけで中身のない作曲家と思われていたので、野本さんもずいぶん苦労なさったとか。欧米の学者たちの間では、リストこそロマン派から近代への架け橋として最重要の存在とみなされ、研究も進んでいるという。 野本さんの講演では、そんな最新研究のお話が続々と出てきて、「目からウロコ」の発見が多かった。たとえば邦訳タイトルの問題。おどろおどろしいものを嫌う日本では、なるべく表現を和らげようとするから変なことになる。『超絶技巧練習曲』の「狩」は、魔王が死霊をひきつれて狩をする場面だから、文学的に訳せば「死霊の狩」となる。「雪かき」も、邦題だけ見るとのどかそうだが、「雪あらし」と訳さなければならないという。 --以下略-- 引用終わり さて、各種辞書を使って、リストの超絶技巧練習曲各曲タイトル: //Preludio/Paysage/Mazeppa/Feux follets(Irrlichter)/Vision/Eroica/Wilde Jagd/Ricordanza/Harmonies du soir/Chasse-neige// を無理矢理訳してみると、 (Italian2English) //Prelude(プレリュード)/Paysage/Mazeppa/Feux follets(Irrlichter)/Vision(視野)/Heroic(英雄的)/Wilde Jagd/Ricordanza/Harmonies du soir/Chasse-neige// (French2English) //Preludio/Landscape(景色)/Mazeppa/Will-o'-the-wisps(Flighty fires/Cranky fires)(Irrlichter)/Vision(視野)/Eroica/Wilde Jagd/Ricordanza/Harmony of the evening(夕方のハーモニー)/Snow-plough(/雪掻き器・除雪車)、snowplow(雪掻き)Hunt snows、Dispels snow、Goes hunting snow// (German2English) //Preludio./Paysage./Mazeppa./Feux follets(Felled smirked it). (Erring lights(誤ったライト).Crazy lights)/Visiond(視野)/Eroica./Wild hunt(野生の追跡)/Ricordanza/Harmonies you soir/Chasse slope(Chasse斜面)(Chasse tended/Chasse bends)// 等となる。 -- Busoni校訂のFranz Liszt Complete Etudes for Solo Piano Series 1:Including the Transcendental etudes(DOVER判)では、最終的な超絶技巧練習曲各曲の表題の英訳名は以下のようになっていますね。 -- Paysage--Land Scape Feux Follets---Will-o'-the-Wisp Wild Jagd---Wild Hunt Ricordanza--Rememblance Harmonies du soir--Evening Harmonies Chasse-neige--Snow-Drifting Wind -- なお、この楽譜(DOVER版)には、 Etude en 12 Exercices Op.1 (1826) 12 Grandes Etude (1837) (dedicated to Carl Czerny) ・Mazeppa (1840) (dedicaed to Victor Hugo) Etudes d'Execution Transcendante(1851) ( dedicated to Carl Czerny) の三種類(結果としてマゼッパ(っぽい)のは4種類)の楽譜が全て収められていて、楽しめる。 現在の超絶技巧練習曲は、最後の Etudes d'Execution Transcendante の12曲であり、各曲の名前議論については、この最新版を対象としての話である。 -- 以上の結果ならびに最近までの表題例をまとめると超絶技巧練習曲の曲のタイトルについては、以下となりましょう。 1.Preludio(伊)--Prelude--プレリュード(前奏曲) 2.a-moll-- a minor--イ短調 3.Paysage(仏)--Land Scape--風景 4.Mazeppa--Mazeppa--マゼッパ(マゼッパとは、ポーランドの宮廷で育てられた後民族の血に目覚めるコザックの勇士らしい。) 5.Feux follets(仏) (Irrlichter(独))--Will-o'-the-Wisp--鬼火(狐火) 6.Vision--Vision--幻影 7.Eroica--Eroica(Heroic)--エロイカ、英雄(的) 8.Wilde Jagd--Wild Hunt--狩り、死霊の狩、(荒野の狩り、幽鬼の猟団、幽鬼の群れ、・・・) 9.Ricordanza--Rememblance--回想、(黄色くなった恋文の束(ブゾーニの表現?)) 10.f-moll--f minor--ヘ短調--あやさんは、「アパショナータ」と呼んでいるようだ。ソースは不明。 11.Harmonies du soir--Evening Harmonies. Harmonies of the evening--夕べの調べ 12.Chasse-neige--Snow-Whirls/Snow-Drifting Wind/Snow Storm/Snow Squall/Snow drifts/Snow Flurries--昔は「雪かき」(Snow-plough/snowplow)、今は「雪あらし」 -- 元に話を戻して、雪かきか雪あらしかであるが、 元のChasse-neigeをフランス語として直訳すると、「雪かき」(Snow-plough/snowplow)。 または、Drive out snow(雪を排出せよ)/Hunt snows(雪を探せ)/Dispels snow(雪を晴らせ/追い払え)/Go(es) hunting snow(雪を捜しに行こう) しかし、曲想や各種研究からすると、「雪あらし」と意訳することがよいということになりつつあるのでありましょう。 なお、近年の英語でのタイトルは、 Snow-Whirls/Snow-Drifting Wind/Snow Storm/(Snow Squall/Snow drifts/)なんてのが多いようだが、決定版があるわけでもないようである。 英訳も既に意訳になっているのであろう。 原点や真の解釈を求めつつ(わからないことが多い)、自分の中のイメージを増して表現してみることを重ねていくことが、アマチュアとしては、表情ある曲表現につながっていくのかもしれません。 しかし、世の中の歴史や伝聞から、真実を拾い出していくには、かなりの時間と労力を要するでしょうから、アマチュアでは、やはり困難性が伴いましょう。 ということで、曲のタイトルについても、原点と多様性を双方楽しみつつ、さらに、多くの伝聞から真実らしいものを拾い上げつつ、イメージを膨らませて対応していくことが、アマチュアとしては、限界はあるが、素直なベターな方法論と考えます。。。 ジャンル別一覧
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