雪の精・・・ちょっぴり切ない大人の童話【雪の精】 Yukie著野原が、お日様に話しかけました。 『近頃あんまり元気ないなぁ。』 『あら、私だって、年がら年中、笑っているわけじゃないのよ。』 サバサバと、お日様が答えました。 『そりゃあ、わかっているけど・・・。』 野原は寂しがり屋です。 お日様が元気ないと、自分まで元気のなくなるくらい・・・。 冬がやってきて、雪が野山を真っ白に染めました。 野原に降り積もった雪の上で、子供達が嬉しそうに雪だるまを作ります。 野原も、久し振りの笑顔です。 雪の精が、野原に言いました。 『良かった。笑ってくれて・・・』 『え?』 『ちょっぴり心配だったの。』 野原は、冷たいと思っていた雪の精は、 本当は、すごく優しいんだって思いました。 そこへ山が、ぶっきらぼうに言いました。 『寒くて仕方ないよ。』 降り積もった雪が、お日様の光を浴びて、 山はキラキラ眩しく輝いていました。 『だけど、カッコイイや。』 今度は、野原が、山に言いました。 やがて、山は、スキー客で賑わうようになりました。 喜ぶ人々の姿を見て、山は、まんざらでも、ありませんでした。 『寒くてゴメン。でも、輝くあなたは、誰が見てもステキ。』 雪の精の言葉に、山も、照れ笑いしました。 こうして、野原と山と雪の精は、とても仲良くなりました。 時々、お日様も、3人の仲間に入ります。 でも、雪の精は、わかっていました。 いつまでも、こうしては、いられないと・・・。 雪の精は、野原も山も好きでした。 でも、でもね・・・ 雪の精は、野原や山やお日様のように、 ずっとは、ここに、いられないのです。 雪の精は、言いました。 『お別れの時が来たの。今まで仲良くしてくれて有難う。』 野原も山も、雪の精の、突然の言葉に驚きました。 『なんでだよ?』 お日様は、雪の精に、また来る方法を教えてくれました。 雪の精は、その方法を、雪の上に忘れないように文字で書いたのに、 除雪車が、知らずに、その文字を消してしまいました。 ある日、雪の精は、ひっそりと、その姿を消しました。 跡形もなく・・・。 いつしか、春が、やってきました。 野原にも山にも、暖かな風が吹き始めました。 そして、野原と山にも、新しい友達ができました。 以前と変わらない毎日が繰り返されます。 時々、雪の精のことを思い出すことを除いては・・・ |