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2008年05月31日
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カテゴリ:つれづれ

新耳袋(第8夜)の中に、こんな話もありました。


__________

太平洋戦争中の話である。

その人は当時、南方のとある島で戦っていた。

(中略)

手にする三八銃だけが頼りと抱き締めるようにして、ただただ朝を待った。

ふと人の気配がして、はっと身構えた。

その目の前を母親が歩いている。

漆黒の密林を、田んぼのあぜ道を歩くように横切って歩く母親。

背中が見えかけたところで、ふっと消えた。


『ああ、おふくろが、今、死んだ。』

と思った。

(中略)

戦後、奇跡的に内地に戻れた。


家に帰りつくとすぐに、家の者に母親の安否を問い質した。

『亡くなった日はもしや・・・?』

その日付までを正確に知っている事に皆がひどく驚いた。

理由を話すと、

『お前に会いに南方まで・・・』

とおやじが沈んだ。


母は会いに来てくれたのではない。

自分を一緒に村まで連れて帰りにきてくれたのだと思った。

戦地で会った母の姿が、子供の頃、夕方暗くなるまで

時間を忘れて遊びつづける自分を迎えに来てくれた姿と

同じだったことに、はじめて気がついた。

『早く家に帰ろう』

という母の姿と戦地での母の姿が重なって、声を出して泣いた。

いつまでも涙が止まらなかった。

おふくろは生まれてから1度も、村を出たことのない人でした、

と語り終えた。
__________



この方、今、何歳?というツッコミは止しておきましょう。



亡くなられる前に、戦地に、

『早く家に帰ろう』

と迎えに来られたのは、早く戦地から帰らせたいがための、

最後の母親のお迎えだったのでしょう。

そんな母心が哀しいです。


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最終更新日  2008年06月02日 12時21分58秒
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