金星音楽団のセロ弾きのゴーシュは、楽団の足を引っ張り、1番下手くそだった。
音楽会を目前にした練習中、楽長は下手なゴーシュばかり叱りつけ、
いじめるのだった。
ゴーシュは、水車小屋にひとりで住んでおり、
そこで夜中を過ぎるまで、必死にセロの練習を続けていた。
すると、第一夜には三毛猫が現れ、次の夜にはカッコウ、
次はたぬき、次は野ネズミの親子が現れる。
動物たちにセロを弾くよう頼まれ、最初は八つ当たりをしていたが、
知らず知らずのうちにゴーシュの演奏に熱が入っていく。
音楽会の当日、楽団の演奏が終わると拍手大喝采。
演奏会は大成功だった。
アンコールが要求され、皆はゴーシュが代表で舞台に上がり、弾けと言う。
ゴーシュは下手な自分がからかわれていると思い、やけになり、
三毛猫を震え上がらせた『インドのとらがり』をまるでおこった象のような勢いで弾く。
曲が終わると、ゴーシュは観客の顔も見ずに楽屋に引っ込む。
ゴーシュは楽団のみんなからバカにされると思いきや、
皆から大真面目な顔つきで見つめられる。
不審に思うゴーシュに向って、楽長が賞賛の言葉をかけるのだった。
その夜、ゴーシュは、小屋に戻り、
ガラス窓に何度も体をぶつけて飛び去って行ったかっこうを思い出し、
かっこうに対し、お詫びの言葉をつぶやくのであった・・・
宮澤賢治の素朴で、ユーモアたっぷりの言葉が心に響く。
私がお薦めの絵本は、畑中純の版画も楽しげで、物語のイメージにピッタリである。
それにしても、『インドのとらがり』ってどんな曲なのだろうか・・・気になるなぁ。