さらば青春(4)前のページ | ホームに戻る | 次のページ さらば青春(4) さらば青春(4) 次の日の朝はやはり彼女が早かった。 いそいそと、朝食を作ってくれた彼女はてきぱきと出発の用意をしている。 昨夜は何事もなかったかのように振る舞う彼女の姿が印象的だった。 ほんとはずっと一緒にいたかったが、それもかなわず別行動となってしまった。 せっかく信州の奥まで来たのだから、予定通りスキーを楽しむことにしました。 一緒に家を出た二人は、職場とスキー場へと別れていった。 閑話休題 二人の深刻な話題で暗くなっていると思います。 今回はスキーの話でほっと一息入れてください。 今回のスキー場は新潟県境にあります。関西から来るスキーヤーはほとんどが南部か、中 信地方が多いです。距離的に近いからね。 だから、北信方面は行ってみたい所ではあるが、なかなか行くことの出来ない場所です。 その、あこがれのスキー場にすぐ近くにいるというのが不思議。それもたった一人で。 現在の赤倉中央スキー場です。その当時は違う名前だったような気がします。 いつもだったら、仲間とワイワイ言いながら、休憩をはさんでのんびりと滑るのですが、 今日はたった一人で滑るわけですから、自分のペースでできます。はぐれた仲間を捜す手間もない。 現地到着して早速リフトへ。今みたいに高速リフトはありません。一人乗りの椅子に腰掛けて、のんびりと上がっていきます。 (2007.11.07 00:21:46) ここで、僕の道具へのこだわりを紹介しましょう。 靴はラングのXLR。当時、アメリカのフィル・メーアとスティーブ・メーアの双子がオリンピックの回転競技で金、銀を取りました。その彼らが履いていたのがこれと同じです。 次に板です。フィッシャーのターボという、大回転用の堅くて重い板です。長さは195cm。 当時は、自分の身長プラス10cmが普通レベル。20cm以上は上級クラスと言われていました。 今はショートスキーが全盛で、コブをくるくる回れる性能ですが、昔の板は回しにくかった。 今ではこんな板を持って行ったら、笑われるでしょうね。今も持っていますよ。 準備運動をかねて、一本目は下のゲレンデで足慣らし。 二本目はいっきに最上部をアタックすることにしました。リフトを4本乗り継いでやっと到着。 時間は30分以上かかっています。さて、どうやって滑るかですが、普段できない滑りをすることにします。 つまり、一気に一番下までいくのです。何分かかるか時計を見ます。 一番上はさすがに傾斜がきつい。でもコブはまだ大きくなっていないので、結構滑りやすい。 リフト1本分を滑ってやや太ももが張っている。休憩したいところを我慢して、第3リフトのゲレンデを攻めます。 このところの運動不足で足にきている。我慢じゃ~。 というわけで、第2リフトも休みません。そしてあと一つ。斜度は緩くなっていますが、もう足が張って無理ができない。なんとか到着しました。時間は3分でした。 気持ち良かったけど、なにかしらもったいないような気がします。30分もかけて上ったのに、それをたった3分で降りてくるとは。 たった1回で、このゲレンデは征服したような気になった。 すぐ隣のゲレンデに移動しました。 (2007.11.07 00:27:57) 車で10分も走ればすぐ隣のゲレンデに行くことができます。 3つか4つのスキー場が隣接しているので、移動すればいろんなゲレンデを滑ることができます。 でも、でも、面白くないんです 滑っていても楽しくない。悩み事があるときに、レジャーはいけませんね。 さっぱり楽しくない。無性に帰りたくなった。 まあ、考えることと言えば、やはり二人のこれからについてのことばかり。 かといって今すぐに帰る訳にもいかず、時間つぶしをしなければいけません。 まあ、初めてのゲレンデですから、見学を兼ねてゆっくり、のんびりすることにしました。 まずはレストハウスで一服。缶コーヒーを飲みながら、考えます。 わざわざレジャー施設で深刻な悩みを考えなくてもいいじゃないとは思うけど、すっきりした気分でのスキーとはなりませんでした。 ここでは2,3本滑って終わったように思う。2番目のゲレンデの記憶がない。 その代わりに道路がくねくねで、すれ違いがしにくかったことや、レストハウスの印象は残っている。 天気も良かったし、以前の自分なら嬉々として滑ったでしょうが、心中はただひかるさんのことばかり。 早々に帰ることにしました。運転をしながらもいろんな事を考えます。 何をするために来たんだろう。 会いたい気持ちを押さえきれずに来たけれど、解決できない壁が大きく立ちはだかっている。 そのことについてはどう考えているのか? おまえの行動は軽率ではないのか? 自分の中に醒めた目で自分を見つめるもう一人の自分がいる。 ひかるさんの顔が見たい。1分でも長く見たい。もう、たまらずに帰った。 (2007.11.07 21:31:56) ひかるの家に戻ってみると彼女も帰っていた。彼女の顔を見るとほっとする。 楽しい時間が過ぎていく。離ればなれになっていた5年間の空白を埋めるように、互いの生活のあれこれを語り合った。 楽しく語り合っても将来の展望については不安がいっぱいです。 この人を体ごと奪っていいのだろうか。答えが出ないまま二人の時間は過ぎていく。 二人の距離を埋めるには困難な条件が多すぎる。そして、その一つ一つが難問です。 彼女は専業主婦になるには収まらない才能の持ち主。 何十倍という倍率の試験を合格したエリートです。 でも、今更再試験を受けるなんて難しい。 彼女のすばらしさは仕事をしていてこそ発揮できる。できれば仕事も続けてほしい。 頭脳明晰で話もうまい。一緒にいてほんとに楽しい。 この人とずっと暮らしていきたい。無理難題を言われても、彼女の言うことなら、 「はいはい、何でもあなたの気の済むままにどうぞ」となってしまう。 これが惚れた弱みなんでしょうか。 気の強い女性ではあるが、やはり女性です。どこかは男性に頼らなくてはいけないところもあります。 そんな時にふと見せる弱い面があると愛おしい気持ちになって、なんとか支えてあげたいと思う。 気丈に振る舞っているようでも、僕には心の葛藤が見える。両親のこともある。ゆっくりと話をしなければ結論は出ない。 こんな悩みをすることになったのは何故?全て俺のわがままが原因です。 遠く離れた異国の人を好きになって、自分の妻にしようと考えるから、難しくなる。 好きな人と一緒になれない悲しい男。 夕食後にくつろいでいるときに彼女は実家に電話をした。 「明日帰るからね。」 明日が別れの日となるわけです。 「それでね、たぬきさんを連れて行くからね」 え~~!!。ちょっと、ちょっと、ちょっと。 急にそんなこと言っても心の準備が・・・・ (2007.11.07 23:49:14) 前のページ | ホームに戻る | 次のページ |